第2話 ヤンデレの片鱗

「た、ただいま...」


「あら、おかえりー。どうだったって...え!?」と、白凪さんの姿を見て言葉を失う母...。


「...ど、どういうこと?」


「...えっと...その...彼女が...お見合いの相手だった」


「...はぁ!?」


 母さんに事情を説明し、自己紹介を終える。まるで理解できないといった感じの様子だった。


「...あんたがこの子を好きだったのは知ってるけど...。いきなり結婚は認められない。とりあえず、もっとお互いのことを知るべきでしょ」


 まぁ、ごもっともな意見だった。

しかし、俺からすればこんなチャンスは2度と来ない。ここで逃せば他の人に行ってしまうかもしれない...と。


「...そこを何とかお願いできないでしょうか?」と、白凪さんも食い下がってくれる。


「...そう。なら、まずはせめて同棲から初めて見なさい。恋人関係と同棲までは認めてあげる。それで1年間過ごしてやっていけると思うなら結婚を認める。それでどうかしら?」


「...ど、ど、同棲!?」


「当たり前でしょ?結婚するってことはそういうことなんだから。そんなんで動揺してるくせに結婚なんてよく言ったわね」


「...そうですね。お母様の言う通りです。つい、舞い上がって突っ走ってしまいました。同棲を認めていただきありがとうございます。私は今、一人暮らししてまして駅前のマンションに住んでいます。ここからさほど遠くはないですから、学校の登下校も問題ないですから、そこで一緒に住みましょう」


「...はい」と、いまだに理解できないままとりあえず頷くのであった。


 そうして、週明けには同棲申請書という、結婚の前段階として住宅のサポートや住所の変更を行うことにした。



 ◇


 そのあとは、俺の部屋に行くことになったのだが...。


 正直、見せたくない。

だって、オタク部屋全開って感じだし...部屋には大量の白凪グッズやポスターがあるから...。


「...本当に入るんですか?」


「うん。知りたいから...夏樹なつきくんのこと」


「...引いたり嫌いにならないでね」と、扉を開ける。


「...すごい」と、彼女はポツリと漏らした。


 部屋の中を物色し始める。

朝起きた時はこんなことになるなんて想像も全くしていなかったのに...。

てか、掃除しとけばよかった!!と今更ながらに後悔する。


 そして、ゴミ箱に目をうつすが...まずい!あそこには大量の...子孫繁栄予備軍が...!


 すると、なにやらクンクンと鼻を嗅ぎ始めて、ゴミ箱に近付いていたので咄嗟に隠す。


「...何でゴミ箱隠したの?見せられないものあるの?」


「い、いや!そんなわけじゃ...」


「じゃあ、見せられるよね?見せて?」


「いや!だ、ダメ...これは本当に...」


「...ケチ」


 そうして、卒アルを見たりと、ひと段落した頃には夕方になっていた。


 けど、いまだに実感がない。

あの白凪さんが俺のことを好きで奥さんになるなんて...と、その綺麗すぎる横顔を見ていると、「...何?」と首を傾げる。


 けど、俺のことを好きって本当なのかな...。


「い、いや!なんでも...そ、そういえば白凪さんは「もう白凪じゃない。ちゃんと名前で呼んで?」


take2

「...鳳...さん「さんはいらない」


take3

「...鳳は...どこに住んでいるんですか?」


「敬語いらない」


take4

「...鳳はどこに住んでるの?」


「さっき言ったじゃん。普通に駅の近くのマンションで一人暮らしだよ。まぁ、最近はイベントで忙しくて学校もあんまり行けてないけど。卒業自体はギリギリできそうだから大丈夫」


「そ、そっか。それなら良かった...」


夏樹なつきはどこの高校に行ってるの?」


桑乃咲くわのさき高校って知ってる?」


「...知ってる。頭いいところでしょ?」


「そ、そんなこともないけども...俺は下の方だし」


「そうなんだ。大学はもう決めてるの?」


「うん。一応何個かは考えてる...よ」


 すると、ギュッと服の袖を握られる。


「...専業主夫とかは...無理だよね?」


「え?そ、そうだね...大学は行きたいかな...」


「大学で何するの?まさかエッチなサークルに入ったりするつもりじゃないよね?」


「し、しないよ//」


 まずえっちなサークルって何!?

もしかして、ヤリサー的な?


「...夏樹はやりたいこととか、なりたい職業はあるの?」


「...ないかな...大学にはとりあえず選択肢を増やすために見たいな...?」


「...そっか。ね?このあと暇でしょ?...うち来てよ」


「...え!?」


 そうして、流されるままあの鳳様の家にお邪魔してしまうのである。



 ◇


「...どうぞ」


「お、お邪魔します...」


 そうして、一歩家に足を踏み入れた瞬間、腕にしがみついてくる。


「ちょっ!?//」


「...外ではこういうのできないから...//は、恥ずかしいし...バレたらあれだから...//」


「...そ、そうだよね」


 小さな胸をなんとか一生懸命俺の腕に押し当てている。


「あ、あの...//」


「男の子はこういうのが好きって...アニメでよく出てくるし...けど、私胸小さいから...」と、やや落ち込んでしまう。


「あ、鳳は...小さい方が似合ってるよ?」


「...何それ。私には貧乳がお似合いってこと?」と、肘をつねられる。


「いたっ」


 ここが鳳様の家...か。

すごく良い匂いがする。

アロマ的なやつなのかな?


 そこそこ広いリビングと他に2つくらい部屋があるようだ。

流石は売れっ子声優...いい家に住んでるな。


 そのまま二人でソファに座る。


「...お、俺は結構小さめの子が好きっていうか...」


「...小さいのが好きな男子なんていないってネットで見た」


「い、いるよ...少なくても俺は...」


「...でも、受付のお姉さんの胸見てたもん」と、口を尖らせる。


「み、見てないよ!ほ、本当に...」


「じゃあ、携帯見せて?」


「...へ?」


「写真フォルダ見る。どんな女の子の写真があるか」


「いや!そ、それは...//」


「...ほら、やっぱそうなんだ」と、距離を取る彼女。


「ち、違うよ!ほ、本当に...」


「見せてくれないと信じない。それとも本当は彼女がいたりとか...するんでしょ。もしそうだったら...切るから。縁も...局部も」と、テーブルに置いてあったハサミをチョキチョキしながらそんなことを呟く。


「ち、違くて...。鳳の写真...//そ、それも!//み、水着の写真とかをいっぱい保存してるから...//」


「...そ、そう//でも、私の写真なら見せれるよね?」と、言われて渋々携帯を渡す。


 絶対キモがられるよ!!

ライブとの時のとか、生放送してる時のスクショとか、水着とか...本当に何千枚って保存してるし...。

てか、ドアップでスクショしてるのとかあるから!!


 そのまま30分ほど精査の時間が入る。


 何を見てるのかなとちらっと覗いたら、RINEの中身までチェックされていた!!

か、勘弁してくれ!!絶対やばい発言してるの見られたじゃん!!


「...」と、無言で携帯を見つめている。

事務作業のようにそのまま続けてそれから15分後にようやく返される。


「...特に怪しいやり取りはなかった。...許す」と、言われる。


「そ、そっか...あ、ありがとう?」


 やばいのはみられずに済んだようだ。


「...私の水着写真で...1日3回も...抜いたの?//」と、言われてしまう。


「!!!!????//」


 どうやら、一番みられたくない友人とのRINEを見られてしまったようだ。

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