コーナー⑨ アフレコロシアム
『ドミソラジオ』
シンプルなジングルが流れた後、奏空は笑みを浮かべながらタイトルを読んだ。
「アフレコロシアム!」
「このコーナーではリスナーから送られてきた俺達に読んでほしいセリフを読んで、俺達の誰がよりよい読み方が出来ていたかをリスナーにジャッジしてもらいます。前回はソラがこのコーナーでなんか変になってたよな」
「あれはねえ……やっばいよ」
「コメント欄も死屍累々だったしな……」
狂我弥がしみじみと言うと、コメント欄が勢いよく流れ始めた。
『テレテレソラタソが聞けたのでよかったけども……(。-`ω-ก)ウーン』
『あれは……エグかったよな。イケボの恐ろしさを思い知ったようなもんだし』
『オソロシア』
『りっくん、今回は手加減してくれよ?』
「手加減も何もな……とりあえずおたよりを拾ってくか」
「はーい。それじゃあ最初は……」
奏空はおたよりを見始め、一つ見つけた様子で読み始めた。
「ソラジオネーム、ベイブがルーズさん」
「野球選手っぽいソラジオネームしてるけど、実際は豚が遅いだけだよな?」
「約束の時間になかなか来ないのかな? ソラさん、リクさん、狂歌さん、こんばんは。皆さんに読んでほしいのは、君がいないと僕はダメなんだ! です。一人称とかは変えてもいいので誰かを思い浮かべながら全力で読んでくださいね、だってさ」
「な、なんか告白みたいなセリフだよな」
「だねー。リク、せっかくだからリスナーに向けて言ってあげたら?」
その瞬間、コメント欄が加速した。
『ソラタソー!?ビクゥッΣ(゚ω゚ノ)ノ』
『あれ……今日って命日になるのかな?』
『今の内に衛生兵呼んどくか……』
『俺は田舎の母ちゃんにありがとうって言ってくるわ』
「ということで、リクのチャレンジだよ。どうぞー!」
奏空に促されて俺はお題のセリフを口にした。
「“お前がいないと、俺はダメなんだ!”」
「おおう……これは、やっぱり……」
「やっぱりリクってイケボだよな……前も言われてたけど、アニメとかの主人公っぽいし」
「そうか?」
個人的にはそう思っていないようだが、他人からすればそうらしい。そしてコメント欄を見てみると、コメント欄はまた賑わっていた。
『イケ……ボ……( ゚Д゚)・∵. グフッ!!』
『りっくーん! 俺だー! 突きあってくださーい!』
『つきあうの字がヤバイ件』
『ただ、男でも惚れるのはワカール』
『りっくんの声はやばすぎる。これで毎朝起こされたい』
「そ、そこまでか……」
リスナーのコメントに首を傾げていると、奏空はうんうんと頷いた。
「たしかにね。それでコーヒーとパンを用意してくれてて、ベーコンエッグとかも欲しいな。あ、サラダはいらないからね」
「サラダも食べろって。野菜ジュースは飲むくせにサラダは食べようとしないよな、お前って」
「お肉の方が好きだし、一回美味しい野菜を食べてるからか満足いく味の野菜に出会えないんだもん。なので、リクが家庭菜園で野菜育ててね。楽しみにしてるから」
「はいはい……それで食べるならとりあえずやってみるよ」
「お前もたいがいソラさんに甘いよな、リク」
「かもな。それじゃあ次は狂歌だな」
「お、俺か……よし!」
狂我弥は息を吸った後、お題のセリフを口にした。
「お前がいないと、俺は……ダメなんだ!」
「おおー、いいねえ。狂歌君って、普段はお調子者なのにいざという時には決める友人タイプの声してるから、ちゃんとやろうとしたらいい声なんだよね」
「あー、なんかわかるな。主人公といつもわちゃわちゃしてるのに、背中押す時とか重要な決断する時にはこんなにいい声してたかってなる奴だ」
「え、俺ってそういう系の声なのか?」
狂我弥が首を傾げていると、コメント欄がまた賑わい始めた。
『たしかに(/)(;,,;)(/)』
『言いたいことわかりすぎてヘドバン状態になったわ』
『りっくんが王道冒険漫画の主人公なら狂歌先生はギャルゲの友人キャラだよな』
『普段はいじられたりなんか雑な扱いされたりするのに人気投票では上位をキープするタイプだな』
『わかルンバ』
「そうか、あのタイプか……あのポジションのキャラは嫌いじゃないから、そう言ってもらえるのはなんだか嬉しいな」
狂我弥が嬉しそうに言うと、奏空はまたうんうんと頷いた。
「ラブコメとかもそうだけど、どんな作品にもいる重要な役割だよね。いいなー、私もそういう悪友キャラやりたーい」
「高校時代のソラはそういう悪友キャラみたいな感じだっただろ。いやでも、お前の場合はいじられるよりも周囲をいじるタイプだったか」
「そだねー。友達の恋路に顔出しに行ったりソラジオも使って色々やったりしたなあ」
「ほんとにな。それでいてまったく悪びれないし」
「悪いとは思ってないからね。それじゃあラストは私だね」
奏空は大きく息を吸うと、楽しそうな笑みを浮かべながらお題のセリフを口にした。
「君がいないとっ……僕は、ダメなんだっ!」
「いないとの辺りでちょっとアレンジ加えてきたな。なんならダメなんだのとこもだし」
「やっぱりやるからにはしっかりやらないとね」
「ソラさんは見た目もそうだけど、声も中性的な感じだから少年ボイスもいけそうだよな」
「あははっ、いいねえ。前に闇落ちした某少年探偵みたいな声って言われてたからそういうのもいいかも」
奏空が楽しそうに笑う中、コメント欄がまた動き始めた。
『あの少年探偵かな? (σ○-○)✧†』
『真実はいつも一つなのかな?』
『アイツの闇落ちとか考えたくねぇな……』
『アイツが事件起こす側になるのかな……うわ、想像したくねぇ』
「前に読んだ本で探偵側が犯人になったら脅威なのは間違いないって言われてたしねぇ。さてさて、今回はどうなるかな? みんな、投票お願いねー」
奏空の言葉でコメント欄に次々に俺達の名前が出始める。
「どのくらいで投票終わりにするんだ?」
「んー、一分くらいかな?」
「まあそのくらいが妥当だよな。でもまあ、一位は俺じゃないからあまり期待しないでおくかな」
「さて、それはどうかな?」
「え?」
狂我弥が不思議そうな顔をする中、奏空はニコニコしながら話し始めた。
「はい、投票終わり! さてさて、結果は~?」
奏空は楽しそうにしながら画面を見ると、その後に狂我弥を見た。
「一位は狂歌君! おっめでとー!」
「……え? お、俺!?」
「そだよ? 票数的にはみんな僅差なんだけど、ギリギリで狂歌君が一位だったね」
「そ、そうなのか……」
未だに信じられない顔で狂歌が言う中、コメント欄には狂我弥の勝利を祝うコメントが流れ始めた。
『狂歌せんせー、おめでとー!ヽ(*´∀`)ノオメデト─ッ♪』
『おめでとう』
『めでたいなあ』
『おめでとう!』
「あ、あはは……なんか照れるな。でも、こうやって誰かに褒めてもらえるのってやっぱり嬉しいな。たとえ、小説関係じゃなくてもさ」
「そういうもんだよね。さて、これで今回のアフレコロシアムはおっしまい! このコーナーでは私達に読んでほしいセリフを募集してるから、どんどん送ってきてねー。それじゃあ曲紹介をリクにお願いしようかな?」
「わかった。作山文花で『ラブリード』」
可愛らしい曲調のメロディーが流れ、弾んだ声の歌が聞こえ始める中、俺達はエンディングの準備を始めた。
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