第30話 小国の国王は帝国の皇太子が執心の厄災女を拘束しものにすることにしました
俺はこの国シュバイツ王国の国王様だ。
そう、この国では一番偉いのだ。
まあ、シュバイツ王国自体は小さな国だったが……
しかし、あまり知られていないが、元々俺は帝国の第十皇子様だったのだ。
前の皇帝は性欲の塊みたいな王で、公にした妾だけで10人を数えたのだとか。子供の数は認知しただけで、皇子12人、皇女8人の合計20人もいた。認知していないものの数まで入れたら40人を超えるとか真しやかに噂されていた。
俺様は国王が侍女を孕ませてできた子供だとかで母の顔は知らない。
物心ついたときには皇家の係累のこのシュバイツ王国国王の養子となっていたのだ。
シュバイツ国王は皇帝とは親戚とは思えないほどに子宝に恵まれずに、晩年に出きた子供が流行り病でなくなると、皇家から俺様を養子として取ることにしたそうだ。
国王は俺様が20の時に亡くなって、後は俺様が好きにこの国を治めてきた。
帝国にいれば上には皇帝がいるがここでは俺様が国王だ。俺様の天下なのだ。
魔物による厄災と疫病により、税金が減っていて困っていると、
「税を上げれば宜しかろう」
と教えてくれたのが、この国の教会のトップオーブリー大司教だった。
オーブリーとはそれ以来の付き合いだ。
オーブリーの言うように、それまで5割の税を6割に上げたら、逃散者も出たが、それで減った税収以上の税が増えたのだ。俺は喜んだ。
帝国の伯爵家から入れた皇后が生意気だったのでどうしたものかとオーブリーに聞いたら、
「陛下は至上の方なのです。気にいらなければ離縁なされば宜しかろう」
とあっさり言ってくれたので、離縁してやった。
慰謝料を寄越せという使者を投獄したら伯爵も大人しくなりおったわ。
好みの人妻を見つけては強引にものにして、抗議してきた亭主には幾ばくかの金を掴ませた。それで納得しない亭主は鉱山送りにしてやった。
何しろ俺様は国王陛下なのだ。叶わないことなど何もなかった。
そんな中、帝国の前皇帝の第二皇子の息子が皇太子になると聞いて、俺はふと思ったのだ。
前皇帝陛下の第十皇子の俺様にも可能性があるのではないかと。
「確かに陛下にもその可能性があります。しかし、陛下には中央につてがございません」
オーブリーが応えてくれた。
たしかにそうだ。中央のつてと言えば前皇后が伯爵家の出であった。あれを離縁したのは早まったか……俺は後悔した。
「まあ、それはおいおいと考えるとして、前の皇太子は瑕疵があったから廃嫡されたのであろう。新しい皇太子にも何か瑕疵はないのか」
俺は話を変えた。
「左様でございますな。今の皇太子殿下はなかなかの人物と聞いております。瑕疵と申せば厄災女に執心されているとか」
オーブリーが考えて応えてくれた。
「厄災女というと、『傭兵バスターズ』の頭か」
「左様にございます。報酬は手持ちの財産の半分を寄越せとかいうふざけた傭兵団でございます。その厄災女がオールドリッチ公爵の娘なのです」
「ほおおおお、それは面白いな。皇太子が執着を持つなど、余程きれいなのか」
「まあ、左様でございますな。美しいとは聞いたことがあります。皇太子殿下は学園で同じクラスだったとか。昔から厄災女に言い寄っていると女どもが噂しておりました」
「それで皇太子妃が未だにいないのか」
俺はとても興味を持った。
「そんな女をぜひとも俺のものにしたいものだ」
俺が言うと
「陛下。また、悪い癖でございますよ。傭兵など何かと厄介なものです」
「その方、良く言う。坊主のくせに修道女に入れあげていると言うではないか」
「入れあげてはおりませんよ。慈善事業なのです。あやつら共もたまには抱いてやりませんと」
「よく言うわ」
俺はオーブリーと笑いあったのだ。
そんな時だ。厄災級の古代竜がこちらに向かっているとの報があったのは。
「どういう事だ! 帝国が討伐に失敗するとは」
流石に俺は帝国からの使者を怒鳴りつけた。
「申し訳ありません。帝都の防衛は成功したのですが、取り逃がしまして。古代竜は今オールドリッチ公爵領を我が物顔で進み、一路この国を目指しております」
使者が淡々と教えてくれた。
「どうしろというのじゃ? 帝国では1個師団が殲滅されたと言うではないか」
「宰相閣下が申されるには『傭兵バスターズ』を雇われたらどうかと」
「はああああ! 『傭兵バスターズ』などを雇ったとなれば、報酬でこの国が滅んでしまうではないか」
俺は使者を睨みつけたのだ。財宝の半額をやるなど許せるものではなかった。
「宰相がおっしゃるには、今回の件は帝国にも多少の責がある。そこでかかった費用の半額を帝国が負担するとのことです」
「全額ではないのか」
「基本は各国の防衛は各国の責で行うのが基本でしょう。半額を我が帝国が出すのです。それでご納得いただけませんかな」
帝国の使者が俺の言葉に反論してきた。
うーむ。あまり帝国に強くも言えまい。
「陛下。これは帝国に貸しを作るチャンスではありませんかな」
オーブリー大司教が言ってきた。
「まあ、そうじゃな。やむを得まい。宰相閣下には今回の件は貸しですぞと強調くだされ」
俺はそう言って使者を下がらせたのだ。
「オーブリー、半額も我が国で負担するのか? 分けのわからん傭兵団に!」
俺は使者が帰った後にオーブリーに詰め寄った。
「陛下。何を仰っていらっしゃるのです。『傭兵バスターズ』などたかだか傭兵団ではありませんか。ことが終わった後に拘束すればよいのです」
「拘束するのか」
「左様でございます。そのうえで厄災女を陛下の妾にされれば、それに執着している皇太子殿下に一矢報えるのではありませんか」
「なるほどの。相手はたかだか傭兵団か。帝国からの費用も我らが徴用し、我らの分は踏み倒す。その上、その女が余のものになれば言うことはないの」
俺は笑いが止まらなくなったのだ。
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