第三百八十話 変わった状況と変わらない思い

 これからの予定を通信用魔導具で連絡すると、王城から二人に会いたいという人物がたくさん現れました。

 流石に一度には来れないみたいなので、今日はシャーロットさんが二人に会いに来るそうです。

 冒険者ギルドから僕の屋敷に戻ったら、何と既にシャーロットさんが着いていました。


「元々、昼食を食べ終えたらアーサーとエドガーを連れて帰る予定だったのよ。公務は午後からだから、それまでに王城に戻ればいいわ」


 実は、妊娠中のマリアさんの負担軽減のためにシャーロットさんも一部公務を肩代わりしているそうです。

 そのうち、アーサーちゃんとエドガーちゃんの公務初参加もあるみたいです。

 アーサーちゃんもエドガーちゃんも、お兄ちゃんとして頑張るぞと張り切っているそうです。

 因みに、ゴードンさんとユーリさんの部屋は別々の予定です。

 年頃の男女だから分けた方がいいでしょうという話になりました。


「「「「「ワクワク!」」」」」


 そのアーサーちゃんたちは勉強を終えていて、新しいお友達が増えることにとってもワクワクしていました。

 気のせいか更に貴族の子どもが増えている気がするけど、仲がいい友達が増えるのはいい子ですね。

 間違いなく、将来王様になるアーサーちゃんを支えるメンバーになるでしょう。

 みんなでお話ししていると、宿に行っていた面々が屋敷にやってきました。

 アーサーちゃんたちは、更にドキドキワクワクしていますね。


「「ほわー」」


 あっ、とってもびっくりした声が聞こえたけど、間違いなくゴードンさんとユーリさんが屋敷の大きさにびっくりしているんだね。

 僕も初めてオラクル公爵家に入った時も、二人と同じくらいびっくりしたよなあ。

 そんなことを思っていたら、みんなが応接室に入ってきました。


「「し、失礼します…」」

「「「「「いらっしゃーい!」」」」」


 ちょっとおっかなびっくりな感じで入室してきたゴードンさんとユーリさんに、アーサーちゃんたちは元気な声で歓迎をしていました。

 ちびっ子のほっこりとする光景に、ゴードンさんとユーリさんもちょっとホッとしたみたいですね。

 席に座ってもらい、宿の状況を教えてもらいました。


「二人の荷物は無事だった。ナオ君の時のように、勝手にチェックアウトされて荷物を持ち去られることもない。その点においては良かったと言えよう。二人がいた部屋にあったものは全く問題ないと確認した」


 ヘンリーさんが状況を教えてくれたけど、二人の荷物が何事もなくて本当に良かった。

 それに二人は魔法使い用の魔法袋を持っていて、基本的に荷物は魔法袋に入れて常に持ち歩いていたそうです。

 僕の時は、アイテムボックスに殆ど入れてなかったから大失敗したんだよね。

 すると、ちびっ子たちはちょっと不満そうな表情をしていました。


「「「「「ねー、まーだー?」」」」」


 どうやら、お話したくて待っているみたいですね。

 逆にいつも悪意に聡いちびっ子たちがこれだけ大歓迎なのだから、ゴードンさんとユーリさんはとても良い人だということですね。

 でも、最初の自己紹介はこの人からです。


「シャーロットよ。ヘンリーとエミリーのお祖母ちゃんで、アーサーとエドガーのひいおばあちゃんね」

「「おばーちゃんだよ」」


 いきなりの超大物の自己紹介に、ゴードンさんとユーリさんはびっくりした表情のまま固まっちゃいました。

 直ぐに、シャーロットさんは王太后様だと理解したからです。

 とはいえ、シャーロットさんはとても良い人だし、警戒する必要はないですよ。


「私はレガリア、元々ナオ君がいたオラクル公爵家夫人よ。宜しくね」

「イザベルよ、次期オラクル公爵家夫人になるのかしら。宜しくお願いしますわ」

「「よ、宜しくお願いします……」」


 レガリアさんとイザベルさんも、ニコリとしながら自己紹介をしてくれました。

 大貴族夫人と次期夫人に、またまた二人は固まっちゃいました。

 でも、僕もとってもお世話になったし、間違いなく恩人ですよ。


「次、次は僕が挨拶をするよ!」

「つぎはぼくー!」


 ここで、待ちきれなかったかのようにアーサーちゃんが元気よく手を上げました。

 エドガーちゃんは、両手を上げてアピールしていますね。

 順番に挨拶して、周りの人が補足します。

 特に未来の国王陛下候補のアーサーちゃんには、二人は最大級にびっくりしていました。

 こうして何とか自己紹介を終えたところで、ゴードンさんが僕に質問をしてきました。


「あの、なんでナオ君の周りには色々な人が集まっているのですか?」


 どうも、王族や貴族、はたまた冒険者もたくさんの知り合いがいるから気になったそうです。

 うーん、そういえばなんでだろうか。

 僕も、思わず考え込んじゃいました。

 因みに、様をつけて呼んでもらうのはちょっと恥ずかしいので、君で呼んでもらうことになりました。

 すると、エミリーさんが苦笑しながら僕の代わりに返事をしてくれました。


「ナオは、裏表もなく素直で一生懸命なのよ。私たち王族や貴族は、常に下心を持った人に接するわ。ナオにはそういうところがないのも大きいのよ」

「後は、一生懸命なところが冒険者にも評価されている。仕事も丁寧で正確だし、そこは冒険者である君たちも参考にすべきところだ」


 ヘンリーさんも補足してくれたけど、何だかとってもこそばゆいです。

 褒められるのって、中々慣れないですね。

 そして、ゴードンさんとユーリさんもエミリーさんとヘンリーさんの話に納得してくれました。

 更に、ユーリさんは僕に別の質問をしてきました。


「その、私たちを保護した状況がナオ君の保護された状況に似ていると教えてもらいました。その、ナオ君はどういう気持ちで私たちを保護したのかを聞きたくて……」


 ユーリさんは、自身が保護されたのは何か下心があるのではと思ったみたいです。

 そうでなければ、凄いメンバーに保護されないと感じたのでしょう。

 その気持ちは、僕もよく分かります。


「その、僕は元パーティメンバーに酷い扱いを受けてパーティから追放されました。そんな絶望的な状況から僕を救ってくれたのが、他ならぬ当時勇者様って言われていたヘンリーさんです。その後、僕はヘンリーさんたちと一緒に活動して多くの人にお世話になりました。色々あって僕が次の勇者様になった時に、今度は僕が色々な人に手を差し伸べないとって思ったんです」

「ナオ君……」


 ちょっと恥ずかしかったけど、それでも何とか自分の気持ちを話すことができました。

 救われた立場から救う立場に変わっただなんて偉そうなことは言えないけど、それでも困っている人がいたら出来る限りのことをしようと思いました。

 そんな僕の話を聞いて、ユーリさんだけでなくゴードンさんや他の人たちも感心した表情で僕のことを見ていました。


「もちろん、二人の評価を事前に聞いていたのもある。優秀な人材を失うのは、国家的損失だ。ナオ君の時にも言ったが、二人にも同じことが言えよう」

「「あっ、ありがとうございます!」」


 二人は、有望な人材だと評価したヘンリーさんに深くお礼を言っていました。

 僕から見ても、二人は鍛えればいい人材になると思います。


 コンコン。


「失礼いたします。昼食のご用意ができました」

「「「「「はーい!」」」」」


 ここで、ジェシカさんが応接室に入ってきて昼食ができたと教えてくれました。

 元気よく返事をするちびっ子たちに、みんなも思わずニコリと微笑んでいました。


「ふふ、アーサーとエドガーは、いっぱい昼食を食べて頑張って公務をしないとね」

「「頑張るー!」」


 シャーロットさんに元気よく返事をする王子様二人に、またまたみんなが和やかな感じになります。

 ゴードンさんとユーリさん、それに新しい子どもたちがいても、悪い雰囲気にならず賑やかなのはとてもいいですね。


 ギュ。


「僕が、食堂に案内するよ!」

「お姉ちゃんは、僕が案内するね!」

「「わわっ」」


 そして、アーサーちゃんとセードルフちゃんがゴードンさんとユーリさんの手を引っ張って案内を始めました。

 二人とも、僕が初めてあった時よりも心も体も大きく成長したね。

 暫くは、二人がちびっ子軍団のリーダーとして頑張るはずです。


 ギュ。


「ナオ、私たちも行きましょう」


 エミリーさんも、僕の手を握ってニコリと微笑んでいました。

 こう考えると、エミリーさんとも長い付き合いになったね。

 きっとこの先も今日みたいな僕の周りに変化があるかもしれないけど、エミリーさんとなら問題なく行けるはずだと思いました。

 そんな僕たちのことを、お母さんとシャーロットさんがニンマリしながら見つめていました。

 この先何年経っても、僕の周りは賑やかな人たちでいっぱいなのは間違いなさそうですね。

 そう思いながら、僕はエミリーさんと一緒に手を繋ぎながら食堂に向かったのでした。

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