第百四十七話 ボンバー伯爵がボンバーしました
無事に森の浄化と害獣駆除が終わったので、今度は住宅街のよどみのある家の浄化を行います。
でもちょうど昼食の時間なので、オラクル公爵家に戻って昼食を食べることにしました。
すると、またまた僕の話題で盛り上がっちゃいました。
「その、お義姉様は昨晩どこで寝たのですか?」
「もちろん、ナオと一緒に寝たわよ。久しぶりにナオのことを抱きしめて寝ちゃったわ」
「う、羨ましい。ナオと一緒どころか抱きしめながら寝るなんて……」
エミリーさんが拳を握りしめるほど悔しがっていたけど、個人的にはサマンサお姉ちゃんは別の部屋がいいななんて思っています。
でも、サマンサお姉ちゃんはゴーイングマイウェイだから、きっと実家に帰るまでずっと僕の部屋に泊まりそうな気がします。
こればっかりはしょうがないと思いつつ、僕も昼食を食べます。
「もぐもぐもぐ」
「お兄ちゃんも妹に負けずに食べましょうね」
「はーい」
「もぐもぐもぐ」
相変わらず、ルルちゃんは離乳食を美味しそうに食べています。
セードルフちゃんもイザベルさんとリーフちゃんに促されて、一生懸命ご飯を食べています。
ちびっ子がもぐもぐと食べている様子に、みんな癒されていますね。
十分に休んだところで、住宅街に移動します。
「やはり、王都には色々なお店がありますね。とても賑わっていて活気があります」
サマンサお姉ちゃんは馬車から周囲をキョロキョロと見回していたけど、地元と比べるレベルじゃないくらいお店も人も沢山いました。
僕はたまに住宅街の浄化をしているけど、色々なところにお店があるんだよね。
ではでは、早速一軒目のお店に向かいます。
「ここが、最初のお店ですね。うーん、何だかボロボロです」
「よどみが発生して封印してから暫く経っているのよ。だから、建物が風化してしまったのね」
貴族の屋敷は石造りだけど、住宅街には木造の建物が沢山あります。
なので、こうなってしまうと立て直すしか方法がありません。
そのためには浄化をしないといけないので、手付かずで残ってしまうそうです。
では、早速浄化を行いましょう。
シュイン、ぴかー。
「そんなに酷いよどみじゃなかったです。魔力も全然使っていないですよ」
「ナオも、随分と魔力制御が上がったわね。このまま訓練を続けることね」
サマンサお姉ちゃんにも合格点を貰えたし、浄化も成功しました。
こうして、無事に十軒のお店を浄化し終えました。
魔力はまだまだ大丈夫だったんだけど、夕方になったので今日はこれで終わりです。
手続きも兼ねて冒険者ギルドに行ったら、またまたあの人がいました。
「ふふふ、待っておったぞ」
「「「げっ……」」」
そうです、ボンバー伯爵がなぜか冒険者ギルドで僕たちを待っていました。
エミリーさんとナンシーさんはもちろんのこと、この間の屋敷の浄化の件も知っているサマンサお姉ちゃんまで心底嫌な表情をしていました。
今日は、いったい何をしたいのでしょうか。
すると、とんでもないことを言ってきました。
「ふふ、ナンシー嬢よ今すぐブレア殿下との婚約を解消するのだ。さもないと、ナオのきょうだいの双子に危害を加える……」
ブチッ。
グイッ!
ボンバー伯爵が馬鹿なことを言ったので、女性陣全員がブチギレちゃいました。
ボンバー伯爵の襟首を掴んで、巨体を持ち上げちゃったのです。
「うがが、首が、首が絞まる、しまりゅ……」
「私の婚約を解消するために、ナオ君の小さなきょうだいに危害を加えるつもり?」
「あんたの娘が義姉になるなんて、まっぴらごめんだわ!」
「わたしの可愛いきょうだいに危害を加えるつもり? 命はいらないみたいね……」
「わあ! ナンシーさん、エミリーさん、サマンサお姉ちゃん、このままだと本当に絞め殺しちゃうよ!」
僕たちだけではどうすることもできず、近衛騎士も間に入って何とかボンバー伯爵の襟首を掴んでいる三人を引き剥がしました。
しかし、これには僕も怒っています。
取り敢えず、さっきの話が本当かどうかも含めて確認の必要が出ました。
というか、ボンバー伯爵はやらかしてしまったみたいです。
直ぐに近衛騎士によって拘束されました。
「ゲホゲホ、ぐ、ぐぞ。はっ?」
「王家、オラクル公爵家、並びにナオ騎士爵への脅迫の現行犯で捕縛する」
「応援を呼んでこい!」
「はっ? はあ!」
ボンバー伯爵が何か言っているけど、この際だからボンバー伯爵には大人しくして欲しいです。
すると、このタイミングでエミリーさんの通信用魔導具に連絡が入りました。
「えーっと、なになに。えっ、本当にナオの実家に不審者が侵入しようとしたらしいわ。全て、お義母様によって叩き潰されたらしいけど」
「「えっ!」」
「ぐっ……」
エミリーさんが教えてくれた内容に、僕もサマンサお姉ちゃんもびっくりどころじゃありませんでした。
しかし、ボンバー伯爵が顔を横に反らしたことを考えると、間違いないっぽいです。
「もう一件のこともあるので、ナオの地元にバルガス伯爵家の兵が向かったそうよ。ふふふ、ここまでクズだとは思わなかったわ……」
エミリーさんも、ドス黒いオーラを醸し出しています。
もう、僕も含めてこの場にいる人たちは全員ボンバー伯爵にブチギレています。
お母さんはとっても強いけど、もしカエラとキースが二人だけで外にいたら大変なことになったかもしれません。
でも、このタイミングである意味救世主が現れました。
「全員落ち着け。ここでボンバー伯爵を害したら、全てが水の泡になる」
「強制捜査令状が出たわ。これから、ボンバー伯爵家に向かうわよ」
ヘンリーさんとシンシアさんが冒険者ギルドに現れて、僕たちは冷静さを取り戻していました。
でも、救世主のお二人もとても怒っているみたいです。
「一度ならず二度もナオ君の家族に危害を加えようとするなんて、覚悟はできているな……」
「ボンバー伯爵を軍の施設に連行するわ。厳しい聴取があると覚悟した方がいいわね」
「くそっ!」
ボンバー伯爵は、全ての企みが失敗して憤っていました。
でも、全てが自分勝手な理由だし、僕の家族も危険に晒されました。
同情する気には全くなれません。
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