第八十四話 午後と明日の予定
屋敷に着くと、食堂で話をするそうなのでみんなで移動します。
そして、昼食を食べながら今後のことをヘンリーさんが話してくれました。
「ベストリア伯爵が、邪神教に手を染めたのを認めた。証拠もあるのも大きいけど、細かい事情を聞くのはこれからだ。なので、統治に影響が出ないように明日嫡男とともに王都に行って代理当主の手続きをする。私たちは明後日の朝に王都に帰ることになるが、正式な裁定が下ったら再びベストリア伯爵領に迎えに行く予定だ」
「ヘンリー殿下、過分なご対応をして頂き本当にありがとうございます」
「私ではなく、ドラちゃんの飛行能力があるからこそできる芸当なんだけどね」
「キュー」
ヘンリーさんもお肉を美味しそうに食べているドラちゃんの頭を撫でているけど、ドラちゃんにとっても長距離飛行は良い訓練になっているので全然大丈夫みたいです。
長距離飛行をする都度、お腹が空いちゃうのは仕方ないですね。
「他のものは、明日も引き続き捜索と奉仕活動を続けてくれ。聞くところによると、とても良い影響があるみたいだね」
「やはり、無料治療は大きな効果を出しているわ。その分、エミリーとナオ君に負担をかけちゃっているけど」
僕はまだまだ魔力はあるけど、エミリーさんの魔力が残り少なくなってきているんだよね。
でも、午後からドラちゃんが治療に参加してくれるので、エミリーさんと交代しながらできますね。
ちなみに、スラちゃんは引き続きヘンリーさんとともに色々な会議に出るそうです。
流石は僕のお兄ちゃん、すっかりヘンリーさんの信頼を得ています。
こうしてやることも決まったので、昼食を食べ終えたらさっそくそれぞれ動きます。
「わあ、ドラゴンが治療してくれるよ!」
「キュー」
午後の炊き出しと無料治療を始めたけど、エミリーさんは炊き出しの手伝いをして代わりにドラちゃんが治療を行います。
というのも、お昼時なので炊き出しに沢山の人が並んでいました。
小さいけどドラゴンが治療するとあって、特に小さい子どもに大人気です。
僕も、ドラちゃんに負けないように一生懸命に治療します。
お昼時の炊き出しが忙しいタイミングを過ぎたら、エミリーさんも治療に戻りました。
「すげーな、ドラゴン使いのあんちゃんは凄腕の治癒師なのか」
「僕は、まだまだ下手っぴだと思いますよ。あと、ドラちゃんは僕のお友達です」
「ははは、そうかそうか。友達は大事にしないとな」
夕方前になると、依頼を終えた冒険者も沢山やってきました。
目の前にドラゴンがいるのが珍しいみたいだけど、それでも冒険者らしい判断の良さで直ぐに納得してくれました。
ちなみに、ドラちゃんはいつの間にか小さい子と追いかけっこをしていました。
とっても元気いっぱいで、小さい子もドラちゃんを怖がっていないですね。
こうして、今日の奉仕活動も無事に終了しました。
「皆さま、今日は本当にありがとうございました。お陰で、沢山の人を救うことができました。私は明日も参加しますので、引き続き宜しくお願いします」
「キュー」
片付けをする教会前で、妹さんが改めてお礼を言っていました。
僕たちも、町の人に色々出来てホッとしています。
そして、一度屋敷に行ってヘンリーさんたちと合流してから軍の施設に向かいました。
「今日一日治療をしていたんですけど、ベストリア伯爵の子どもを悪く言う人は全くいませんでした。むしろ、ベストリア伯爵よりも良いって言っていました」
「恐らく、ベストリア伯爵が邪神教に手を出した理由にも繋がるだろう。ベストリア伯爵は幼い頃から次期領主になるための教育を受けていたのだけど、成果はいまいちだったみたいだ。そして、息子の方が頭が良くて未成年者の頃からでも十分に統治できるだけの能力があったのだ」
「自分に足りない力を欲するだけの理由にはなるけど、だからといって邪神教に手を出していい訳ではないわ。その辺の判断を見誤ったのが、今回の大きな失敗ね」
夕食を食べながら今回の件を話したけど、どうも御用商会とかも当主のベストリア伯爵ではなく嫡男とメインに対応していたという。
住民の関心は息子に向いているので、余計に邪神教にのめり込んじゃっちゃのかも。
でも、シンシアさんのいう通り、邪神教に手を出していい訳がないよね。
やっぱり、邪神教って人の欲につけ込むからとっても怖いです。
「かなりの証拠を押さえたので、もしかしたら明日爵位の降格と正式な当主就任があるかもしれない。むしろ、住民にとってはそちらの方が良いかもな」
安定的な統治を考えたら、優秀な息子に実権を渡した方が良いですね。
でも、貴族ってこういう大変なところがあるんですね。
僕も、これ以上出世はしたくないなあと思っちゃいました。
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