第五十話 謎の毒の反応

 ナンシーさんが王城に行く日、僕もシャーロットさんが呼んでくれたので一緒に行くことになりました。

 普段シャーロットさんの治療は宮廷医とシンシアさんがしているけど、今日は僕も様子を見ることになっています。

 キチンとした服に着替えて、僕も準備万端です。


「じゃあ、そろそろ行くわね」

「いってらっしゃーい!」


 赤いドレス姿で髪の毛をおろしているナンシーさんとともに、ニコニコ顔のセードルフちゃんに手を振って王城に出発しました。

 シャーロットさんが元気になってくれていればいいなって思いつつ、あっという間に王城に到着しました。

 出迎えてくれた侍従とともに王城の中を移動すると、王族の居住スペースに到着しました。

 すると、元気の良い二つの声が聞こえてきました。


「ナオにーに、ナンシーねーね、おはよう!」

「あう!」

「おはよう、二人とも朝から元気ね」


 今日も元気いっぱいなアーサーちゃんとエドガーちゃんが、仲良く手を繋ぎながら僕とナンシーさんに抱きついてきました。

 頭を撫でてあげると、とっても気持ちよさそうにしていますね。


「じゃあ、私はブレアのところに行くわ。二人とも、ちゃんとナオ君をシャーロット様のところにエスコートするのよ」

「はーい」

「あい!」


 ここからは、ナンシーさんと別れて僕は両手でアーサーちゃんとエドガーちゃんを繋いで直ぐそこのシャーロットさんの部屋に向かいます。

 因みに、エミリーさんはまたもや礼儀作法の勉強だそうです。

 上機嫌な二人に連れられて、あっという間に部屋の前に到着です。


 コンコン。


「シャーロットおばあさま、ナオにーに連れてきたよー!」

「あら、そうなのね。入って頂戴」


 アーサーちゃんは、まだ四歳なのにキチンとドアをノックして部屋の中に入りました。

 部屋の中には、ソファーに座っているシャーロットさんとマリアさんの姿がありました。

 僕はまたもや満面の笑みを浮かべる二人に手を引かれて、トトトってソファーに近づきました。


「シャーロットさん、マリアさん、おはようございます。体の調子はどうですか?」

「おはよう、ナオ君。あれからとっても元気よ。だいぶ歩けるようになったわ」

「それは良かったです。でも、念の為に治療をしますね」


 僕とスラちゃんは、シャーロットさんの隣に座って軽く魔力を流しました。

 うーん、ちょっとだけ悪いところが残っているよ。

 前回は解毒魔法だけで、回復魔法は使っていないもんね。

 魔力を溜めながら、そんなことを思っていました。


 シュイーン、シュイン、シュイン、ぴかー!


「「おー!」」

「やっぱり、ナオ君の魔法は凄いわね」


 お母さんに抱っこされている仲良し兄弟が、僕とスラちゃんの魔法を見て目をまんまるにしていました。

 僕とスラちゃんはというと、良い感じに治療できている手応えを感じています。

 でも、治療はこれで終わりません。


「じゃあ、今度は僕が聖魔法の解毒魔法で、スラちゃんが回復魔法の解毒魔法ね」


 前回と同様に、属性の違う解毒魔法を使ってシャーロットさんを治療していきます。

 殆ど治療できていたけど、念には念を入れます。


 シュイーン、ぴかー!


「すごーい!」

「あうー!」

「こんな大魔法を連発で使うなんて……」


 盛り上がっている小さな兄弟とは違い、マリアさんは何だかかなり驚いています。

 治療すると手応えがあったから、ちょっとだけ毒の残りがあったんだ。

 僕とスラちゃんはまだまだだなって思いながら、治療を終えました。

 そして、僕とスラちゃんはペコリと頭を下げました。


「これで治療は終了しました。ごめんなさい、ちょっとだけ悪いのが残っていました」

「ナオ君もスラちゃんも、頭を上げて頂戴。こんな素晴らしい治療をしてくれたのだから、文句なって全くないわよ」

「僕もぎゅーするー」

「うー」


 ちょっと落ち込んでいる僕とスラちゃんを包み込むように、シャーロットさんが微笑みながら抱きしめてくれました。

 ニコニコな兄弟も抱きつく中、マリアさんだけは顎に指を当てながら怪訝そうな表情をしていました。


「おかしいわね、朝食の前にシンシアがお祖母様の治療をしているわ。なのに、体にダメージがあるなんて……」


 えっ、既にシンシアさんもシャーロットさんの治療していたんだ!

 でも、確かにちょっとだけど回復魔法も解毒魔法も治療したという手応えがあったよ。

 スラちゃんにも確認したけど、間違いないってふるふるとしていました。


「至急、お義父様もしくはお義母様に連絡を。後は、今朝からお祖母様が使用した化粧品や食べ物、飲み物に至るまで確認を。再度、毒が盛られた可能性が極めて高いです」

「大至急、連絡いたします」

「全ての食事を確認いたします」


 おお、マリアさんがキリリとした表情で近衛騎士や侍従に指示を出しています。

 でも、これってまたもや王族毒殺疑惑の大問題な気がします。

 僕もスラちゃんも、思わず背筋が伸びちゃいました。

 あっ、そうだ。

 これを提案してみよう。


「シャーロットさん、もし良かったらこの部屋をスラちゃんとともに鑑定魔法で調べます」

「ナオ君、お願いするわ。侍従も、ナオ君につくように」

「「「畏まりました」」」


 もしかしたら、どこかに何かが隠されているのかもしれない。

 シャーロットさんを助ける為にも、ここは気合を入れて鑑定しないと。

 スラちゃんも、触手をふりふりとしてやる気満々です。


「おかあさま、僕はどうする?」

「アーサーとエドガーは、お祖母様を守って上げてね」

「僕にお任せだよ!」

「あー!」


 役目を与えられた小さな兄弟は、シャーロットさんにギュッと抱きついていました。

 そんなひ孫の可愛らしい姿に、シャーロットさんも思わず笑みが溢れていました。

 それでは、僕とスラちゃんは部屋の中のものを鑑定し始めます。

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