第三十六話 治療終了と戻ってきた大切な物
治療施設に入った僕たちは、早速手分けして治療を開始します。
回復魔法が使えないナンシーさんも、スラちゃんを抱いて一緒に治療を行うそうです。
「治療施設には、大部屋が六つあります。ご無理をされない範囲でお願いします」
シスターさんは僕以外が王族や大物貴族令嬢なので、無理をして何かあったらと思っているみたいです。
とはいっても、治療するだけだから全然大丈夫な気もします。
万が一に備えて、近衛騎士も控えています。
シュイーン、ぴかー!
「これで、足の骨折も良くなりました。動き難いとかありますか?」
「凄い、まったく痛くない! 君は凄腕の治癒師だね」
僕は左足を骨折した中年男性の治療をしたけど、ビックリするくらい良くなって本当に安心しました。
やっぱり元気になるのって、本当に嬉しいよね。
怪我が治った中年男性も、思わずニコニコです。
「お元気になって何よりですわ。笑顔も違いますもの」
「これも奥方様のお陰です。ありがとうございます」
シンシアさんたちも、にこやかに入院患者と話をしながら治療していました。
ただ治療するだけよりも、お話してにこりとしてもらった方が良いよね。
シンシアさんが第二王子の奥様ってのは普通に国民に知られているそうで、それでも普通に対応してくれるのは教会にとっても患者にとってもとてもありがたいそうです。
エミリーさんも王女だけど、シンシアさんと同じく誰にでも普通に接します。
スラちゃんを抱いたナンシーさんも二人と同様ですが、治療をするスライムってのが珍しいのかよく声をかけられていました。
「あんちゃんは、可愛い顔して良い腕だな」
「僕、男の子って分かりますか?」
「そりゃ分かるさ。もう少し髪が長かったら、男か女か判別するのは怪しいけどな」
僕もよく声をかけられるけど、前と違って女の子に間違われることは少なくなりました。
やっぱり髪の毛を綺麗に揃えたのが良かったみたいですね。
こんな感じでみんなで手分けして治療を進めたので、午前中で四部屋を終える事ができました。
午後も治療をするので、大教会にある食堂に移動してシスターさんと同じ食事を食べます。
「私たちと同じ食事で、皆さまには申し訳ありません」
「気にしないで下さい。とても美味しい食事ですわよ」
「そう言って頂き、感謝申し上げます」
至って普通の料理が出てきて担当シスターが大変恐縮していたけど、別に僕は気にならないしシンシアさんたちも全く気にしていません。
王族や貴族令嬢とはいえ、常に贅沢な食事をしている訳ではないです。
更にいうと、マナーとか気にしないで済むので、こういう普通の食事も好きだそうです。
僕もスラちゃんも完食して、少し休んだら午後の治療を行います。
「シンシアさん、三時前には全部の大部屋に入院している人の治療が終わりますけど、その後はどうするんですか?」
「大教会の治療施設には個室がないから、今日は早めに終わりにしましょう。教会側も、退院する人と新たに入院する人の手続きで忙しくなるわ」
そっか、いっぱい治療してもその後の対応もあるもんね。
シスターさんも、とっても大変です。
こうして順調に治療は進み、予想通り三時には全ての大部屋に入院している人の治療を終えました。
帰る準備をして、シスターさんに挨拶をします。
「皆さまのおかげで、多くの方を救うことができました。本当に感謝申し上げます」
「私たちも、治療が上手くいきホッとしております。日時を調整しまして、また治療に訪れます」
お礼をいうシスターさんに、シンシアさんが代表して答えました。
僕とスラちゃんも、やりきったって感じで充実していました。
馬車に乗って大教会から冒険者ギルドに戻り、手続きをしてから屋敷に戻ります。
冒険者ギルドでは特に何も言われなかったので、朝の三人の件は無事に収まったみたいです。
「じゃあ、明日も宜しくね。明日は冒険者ギルドに寄らずに、直接大教会に向かうわ」
「ナオ、明日も頑張ろうね」
庭で王城に戻るシンシアさんとエミリーさんを見送って、僕とナンシーさんは屋敷の中に入りました。
すると、出迎えてくれたレガリアさんが、とっても嬉しいことを教えてくれました。
「二人とも、お帰りなさい。ナオ君、三人が売り払ったリュックサックが見つかったわよ」
「えっ、本当ですか?」
「ええ、本当よ。中古買取りのお店に三人の特徴をつたえたら、直ぐに分かったわ。ただ、窃盗の疑いもあったから、軍で確認していたのよ」
宿から三人がリュックサックと中身を持ち去って売り払ったから、慎重に対応したそうです。
部屋に持っていってくれるそうなので、僕とスラちゃんはワクワクしながら部屋に向かいました。
そして、冒険者服から普段の服に着替えた時でした。
ガチャ。
「ナオ君、入るわね。このリュックサックで間違いないかな?」
「間違いないです! ありがとうございます!」
「ふふ、このくらい全然平気よ」
レガリアさんと一緒に入ってきた侍従が手にしていたのは、間違いなく僕が使っていたリュックサックでした。
大きな破損もなく、ホッと一安心です。
そして、レガリアさんが話を続けました。
「ナオ君、このリュックサック少し傷んでいるの。補強が必要だから、御用商人に預けておくわね」
「何から何まで、本当にありがとうございます」
「良いのよ。使うんだったら、キチンとした物の方が良いわよね」
リュックサックがどんな感じになるのか、とっても楽しみです。
補強が終わったら、大事に使っていきたいなあ。
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