第二十六話 軍の治療施設での治療

 マリアさん、アーサーちゃん、エドガーちゃんの準備ができたところで、僕たちは護衛の近衛騎士とお世話係の侍従とともに王城内を歩いて行きます。

 流石にエドガーちゃんはまだ赤ちゃんなので、お母さんのマリアさんに抱っこされています。


「マリアさん、軍の病院はどこにあるんですか?」

「軍の施設が王城に隣接していて、そこに病院もあるのよ。だから、慰問に行く際はいつも歩いて向かっているの」


 王城だから、何かあった時のために軍の施設があるんだ。

 王城の警備も厳重だし、それだけの兵がいるんだね。

 僕はアーサーちゃんと手を繋ぎながら、そんな事を思っていました。

 ちなみに、いつの間にかアーサーちゃんがスラちゃんを腕に抱いていました。

 スラちゃんは強いから、護衛の代わりにもなるもんね。

 ちなみに、近衛騎士の中には昨日一昨日の依頼で一緒だった人も含まれていました。

 そして、軍の施設に着くとちょっとビックリする事が。


 ザッ。


「マリア王太子妃殿下、並びにアーサー殿下、エドガー殿下に敬礼!」

「皆さま、お仕事お疲れ様です」


 多くの軍人が施設入り口で待っていて、一斉に敬礼をしていました。

 そんな軍人に対して、にこやかに挨拶を返すマリアさんの姿がありました。

 やっぱり王族は特別な存在なんだと、改めて感じました。

 ちなみに、アーサーちゃんとエドガーちゃんも可愛らしく敬礼のポーズをしていました。

 更に軍人の案内がついて、僕たちが軍の病院の中に入って行きました。

 僕がマリアさんたちと一緒にいていいのかなとちょっと不安になりつつ、病室に向かいます。

 すると、病室には沢山の人がベッドに寝込んでいました。


「最近動物や魔物が急に暴れる事案が増えておりまして、兵の怪我が絶えない状況です」

「ヘンリーが色々と調査をしておりますが、こうして目の前に沢山の怪我人がいる状況を見ると申し訳ない気持ちでいっぱいです」


 説明する兵が少し悔しそうにしているけど、きっと昨日子爵領の森で浄化したような謎のものが悪さをしているんだ。

 僕も勇者パーティの一員なのだから、頑張って皆さんを治療しないと。

 すると、スラちゃんを抱いたアーサーちゃんもエドガーちゃんと一緒に僕の後をついてきました。

 怪我人は外傷が殆どで、骨折をしている人も多いよ。

 僕は、治癒師のお母さんに習った治療方法で治療を開始します。

 まずは、目の前の怪我人に軽く魔力を流してっと。


「腕の骨折だけじゃなくて、足も怪我していますね」

「えっ? そこまで分かるのか?」


 僕がピタリと怪我をしたところを言い当てたので、怪我人はとってもビックリしちゃいました。

 治療する前に軽く魔力を流すことで、悪いところが分かります。

 そうすることで、治療の際に魔力消費を抑える事ができるそうです。

 お母さんからも、余裕があるのなら必ずやりなさいと言われています。

 怪我の場所が分かったので、僕は良くなって欲しいと思いながら治療を行います。


 シュイン、ぴかー。


「す、凄い。骨折が治ったぞ!」

「上手く治療できて良かったです」

「ああ、君は凄腕の治癒師だな」


 元気になったので、治療した人もニコニコしています。

 こんな感じで、僕は次々と治療していきます。

 そして、この場にいて治療できるのは僕だけではありません。


 シュイン、ぴかー!


「どうかな? 痛いの良くなった?」

「殿下、良くなりましたよ。本当に凄いスライムだ」

「えへへ!」

「あうー」


 スラちゃんも回復魔法が使えるので、アーサーちゃんとエドガーちゃんと一緒に治療していきます。

 もちろん安全の為に、近衛騎士が二人の護衛についています。

 そんな僕たちの事を、マリア様がにこやかに眺めていました。


「マリア殿下、お子様もとても元気よく兵に話しかけておりますな」

「ええ、ナオ君の存在がとても大きいように思えます。いつも元気いっぱいですけど、今日はいつも以上に張り切っておりますわ」

「ヘンリー殿下のパーティに加わったという、あの男の子のことですな。私から見ても、かなり優秀な治癒師だと感じております」


 僕たち見ている人が、そんな事を言っていたそうな。

 こうして、三十分かけて一つ目の大部屋が終わりました。

 大部屋は全部で四つあるそうなので、慰問中に十分終わりますね。

 僕とスラちゃんの魔力も、まだまだたっぷりあります。


「よーし、次のお部屋に行くぞー!」

「あー!」


 そして、何よりもアーサーちゃんとエドガーちゃんがやる気満々でいて、スラちゃんもアーサーちゃんに抱えられながら触手をあげていました。

 こうして、午前中の間に四つの大部屋に入院していた全ての怪我人を治療する事ができました。


「皆さまのお陰をもちまして、沢山の兵が現場復帰することができます。感謝申し上げます」

「日々国のために働いている皆さまの苦労に比べたら、私たちがしたことはささやかなものです。それでも、皆さまのお役に立てれば幸いです」


 軍の施設で見送りに来た兵に、マリアさんが威厳たっぷりで話をしていました。

 僕もスラちゃんも、みんなの役に立ててホッと一安心です。

 アーサーちゃんとマリア様に抱っこされているエドガーちゃんも、とっても良い笑顔をしていますね。

 こうして僕たちは、王城に戻って行きました。


「いっぱい頑張ったから、昼食にデザートをつけて貰いましょうね」

「やったー!」

「あー!」


 マリアさんからのご褒美の提案に、アーサーちゃんとエドガーちゃんは大喜びです。

 でも、僕からみても二人はとっても頑張ったと思うよ。

 こうして、みんなニコニコしながら朝の部屋まで戻って行きました。

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