イジメられっ子の僕が転校生のイケメンヤンキーに見初められて...
片仮名 裕福
第1話 人の痛みが理解できない子供
おやつを与えられて屈託のない笑顔で頬張る子供がいるのに対して、尚輝は何食わぬ顔でとっぱがすようにしておやつをポケットに突っ込み、その辺でずっこけて砕けたおやつを手に泣きじゃくっている、そんな子供だった。
あまのじゃくで捻くれ者。内心ではおやつが欲しくて欲しくてたまらなかったというのは想像に難くないが、一つだけこの例に当て嵌まらないのは、尚輝は一度も泣いた事がないという点である。
尚輝は、メキシコとアメリカのちょうど国境に位置するサユラという片田舎で生まれ、生後まもなく日本に越してきたと同時に両親を事故によって失い、以来児童養護施設での生活を余儀なくされた。
施設の職員からは、両親は不慮の事故で亡くなったのだと聞かされていた。
小さい子供は痛みに泣くのではない。親から愛撫されてきた大事な大事な体に傷が付く事に対して泣くものだ。親の愛情を知らずに育ってきた尚輝は、その部分が上手く機能しなかった。ありがちなシチュエーションだが、喧嘩に負けた子供が母親に泣きつくあの感覚が尚輝には理解出来なかった。
人に愛された事がないから自分を大事に出来ない、自分を大事に出来ないから人の痛みも分からない、人の痛みが分からないから加減も出来ない、加減が出来ないからつい突飛な振る舞いをしては他人から敬遠されてしまう、まさに負の連鎖だ。
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