あなたが落としたのは、綺麗なジャイアンですか? 劇場版ジャイアンですか?

あめはしつつじ

木こりの湖

 ユリが変わった。

 今までは、キュウリのような、へちま顔。

 それが、急に、ユリの花。

 立てば芍薬、座れば牡丹。

 歩く姿は百合の花。

 ああ、妬ましい。


 不細工がどんな小細工をしたのか、聞いてみた。

「木こりの湖ってお話、知っているかしら?」

 話し方も、いちいち鼻につく。

 それくらい、普通に知っている。

「木こりが湖に、鉄の斧を落としたら、女神様が、出てきて、『あなたが、落としたのは、この銀の斧ですか? 金の斧ですか?』と聞く。木こりは答えた、『私が落としたのは、ただの鉄の斧です』女神は言う、『正直者のあなたには、この、銀の斧と金の斧、両方の斧を差し上げましょう』っていう、正直美徳、洗脳刷り込み話でしょ。知ってるけど?」

「可哀想なお方。あのお話、本当なのよ?」


 私は湖畔にいた。

 別にユリの話を信じたわけじゃない。

 ただ、鼻につく話し方に、鼻が曲がって。

 綺麗な空気が吸いたい。そう、思っただけ。

 思いっ切り、綺麗な空気をいっぱいに吸って、

 私は、まあ、まあまあの、細工である顔を、ちゃぽんと頭ごと、湖の中に浸けた。


 女神が出てきた。

「あなたが、落としたのは、この銀の顔ですか? 金の顔ですか? あら? あらあら?」

 女神の目の前には、首を刎ねられた、女の体が、横たわっていた。


 女神は、木こりの落とした、鉄の斧を持っていた。

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