0209:特異点
ミアリアさんが……ばひゅーって行って、しゅぱってやって、びしゅーって九大悪魔の一人、アルバカイト伯爵、通称
その間、オベニス領周辺の都市や領地の監視を強化して、その他に黒ジジイの陰湿な策が無いかを徹底的に調べてもらっていた。
さらにアルバカイトが復活したり、死霊化したり、何か別のヤツが連鎖して現れたりということもない様だった。
その上、超絶強化されたミアリアにも異変や変化が見られなかったため、彼女に伝令第二弾+援軍として戦場になっている南西へ向かってもらおうとしていた……ら。
その準備の最中に、イリス様たちが帰還した。
実は未だに帰還していなかったロザリアとオベニス騎士団も後から来るという。ロザリアたちは異常発生した魔物、そして盗賊団をいくつか相手にして退くも進むも出来なくなっていたそうだ。
ここでやっと……様々な状況が伝わり、オベニス周辺、いや、今回のメールミア王国首脳部の謀の全体像、詳細が判明した。ヤツラは……これまでよりも、さらに……やってはいけないことをしたのである。
魔力喪失の陣、魔導具はまあ、有りというか、作戦として面倒なだけで仕方ないのかもしれない。優秀な魔術士が大量に使い物にならないくらい酷使されたり、死んだりとかしているとの事だが、そんなの知ったこっちゃ無い。
が。大氾濫を人工的に引き起こす、魔物をおびき寄せる魔道具。お前はダメだ。許されない。
さらに魔物だけでなく、多くの傭兵団や盗賊団に情報を流して自国の民を大いに苦しませ、その上、周辺各国に多大な報酬や領地割譲を約束した上での参戦勧誘など……そんな売国行為、たわけた事……許されるわけがない。
最悪なのはそれを戦争という形でパッケージングしたということだ。確かにそれは功を奏した。我々は疑いながらも結果的に完全に罠にはまったのだから。
だが。だがだが。それだけ恥も外聞も無く仕掛けて来たにも関わらず……見事大失敗! ってヤツだ。向こうの戦果はシラビス一人。客観的に対比すればこちらの圧倒的勝利なのは間違いない。
だからって許さないけどね。当然の様に証拠などは残っていないだろう。他国へ参戦勧誘していた者なんかはとっくに殺されているハズだ。
まあ、うん。
ぶっちゃけ……証拠なんていらねぇだろ。これ。
状況的に王家とその周辺しか出来ない事が多すぎるのだ。連帯責任ってことで……中枢部全部入れ替えよう。うん。
これはもう、関係者全員命は諦めてもらうとして。宝物庫の財宝……魔道具関係は全部回収させてもらうか。黒ジジイなんかもかなりお宝を蒐集しているらしいし。
「……で。モリヤよ……メールミア王国の愚者共の話はわかった。ノルド隊に犠牲が出た以上、その報復は絶対だろう。が。それに並んで問題は……そこのノルド族ではないのか? ミアリア……だったか? 此奴はなんだ?」
オーベさんの帰還、最初の言葉がこれだった。
「えと。ええ、そうなんです……」
やばい、一発でバレた。
そこで初めて、敵魔術士の詠唱失敗、異世界への召喚術作動失敗による門の接続、大物の出現。ミアリア急襲。勝利……の流れを追加説明した。
「なんと……伯爵級の悪魔じゃと……」
「マッサージ……以上がある……ということで良いのか?」
え? イリス様、そこじゃない。
「さすが、お館様」
どこに褒める要素があった?
「まあ詳細は……後で詳しく聞こうか」
オーベさんも、悪魔を後回しにした? ……みんな、ファランさんと同じ様な反応をしている……気がする。目が、目が怖い。スゴイ怖いってば。
続けて、この場所、ここ、地下居住区に付いての問題も説明する。
「……これが「普通」なのか? モリヤの世界では」
「そうですというか……避難用の簡易住宅なので、仮住まいです。これ、耐火性とか地震対策とか簡易でイロイロと適当ですし」
「みんながここにずーっと住みたいと思うのも仕方ないんじゃ……」
「便利ですしね」
「おかしいというよりも……これが迷宮の……機能だと言うのか? どういう発見なのだ? というか、ダンジョンマスターというのは討伐されるべき存在であって、迷宮を創作する能力者じゃないハズ……」
「オーベ師。正直、行きすぎていてどうにもならないかと。ここはモリヤも迷宮も勇者の遺産も「界渡り」という言葉でまとめられているだけで、我々とは一切接点が見つからないのです」
「ああ、そうじゃな……なぜじゃ? いや、どうしてこうなった?」
「判りませぬ。モリヤが特殊なのは確実ですが」
「我々は特異点の側にいる者として……それを忘れないようにせねばな……」
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