氷川警部の大捜査シリーズ 短編 「恨まれた料理人と新品のフライパン」

氷川警部mk

第1話 山谷のディナーでの悲劇

夜の警察署内。静寂が支配する中、氷川光一警部はデスクに向かい、書類の山と格闘していた。冷静沈着な氷川の顔にはわずかな疲労の色が見え隠れしている。そんな中、部下の中原淳一警部が雑誌を片手に現れた。


「氷川さん、ちょっと休憩しませんか?この雑誌に載ってる『山谷のディナー』という高級レストラン、評判がすごく良いんですよ。」


氷川は眉をひそめながらも、興味を引かれた。


「『山谷のディナー』か…。確かに、最近話題のレストランだな。テレビでもよく見見るな。」


「ええ。特製ハンバーグが特に人気だそうです。少し気分転換に行ってみませんか?」

「ああ。そうだな息抜きも大切と言うもんな。」

氷川は頷き、田宮晶子も誘って三人でレストランへ向かうことにした。


「山谷のディナー」に到着した氷川たちは、上品で落ち着いた内装に感心しながら席に着いた。店主の山谷修吾が丁寧に迎え、メニューを説明する。


「こちらが当店の特製ハンバーグです。自慢の一品ですので、ぜひお楽しみください。」


注文を終えた後、氷川たちはハンバーグが運ばれてくるのを待ちながら雑談を始めた。田宮は目を輝かせながらメニューを見つめ、次に何を頼むか思案している。


その時、入口から一人の男性が弟子二人を従えて入店してきた。氷川は目を細め、その男に注目した。


「あいつは誰だ?」


中原が小声で答える。


「知らないんですか?一流料理人の南山宗吾ですよ。」


南山宗吾は堂々とした態度で席に着き、特製ハンバーグを注文した。周囲の視線を集めながらも、彼は全く気にする様子もなく、ただ料理を楽しみに待っていた。


しばらくして、氷川たちのテーブルにも特製ハンバーグが運ばれてきた。氷川は一口食べて感想を述べる。


「確かにこれは…絶品だ。」


中原も同意し、田宮は満面の笑みを浮かべながら食べ進める。

「田宮、そんな急いで食べなくても料理は逃げないぞ。」

「だって美味しいんですもの。」

田宮は満足げに答えた。

そんな中、南山のテーブルでもハンバーグが提供された。


南山はフォークとナイフを巧みに使い、ハンバーグを一口口に運んだ。しかし、次の瞬間、彼の表情が急に苦しみに変わり、手にしていたカトラリーがガシャンとテーブルに落ちた。


「うっ…、ぐっ…」


南山は胸を押さえ、激しく咳き込みながら床に崩れ落ちた。氷川たちは驚愕し、すぐに駆け寄ったが、南山の意識はすでになく、そのまま息を引き取った。


店内は騒然とし、警察を呼ぶ声が響き渡る。氷川は冷静に状況を把握し、すぐに捜査を開始する決意を固めた。彼の目は被害者のカバンに一瞬とらわれた。そこには、新品のフライパンが見え隠れしていた。


「これは一体…?」


氷川の中で、捜査への決意が一層強まった。これから始まる捜査は、一筋縄ではいかないことを予感させるものだった。


ここから、氷川警部たちの捜査が始まる。南山宗吾の死の真相を突き止めるため、氷川たちは「山谷のディナー」での調査を進めていく。







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