「星の使者の涙: The Luminous Tears」

第一話「星空の祭り」

　村の広場に到着すると、星祭りの準備がほぼ整っていた。村中の人々が集まり、広場は活気に満ち溢れていた。祭りの中心には、大きな星形のオブジェが輝き、周囲には色とりどりのランタンが灯されている。子供たちの笑い声や大人たちの楽しそうな会話が、夜空に響き渡っていた。

「アレン、お兄ちゃん！ここから星がよく見えるよ！」

　エマが指差す方向に目を向けると、広場の一角に小さな丘が見えた。僕はエマの手を引いて、その丘の上に向かった。丘の頂上には、星を眺めるためのベンチがいくつか置かれていて、すでに何組かの家族や友人たちが星空を見上げていた。

「ここなら、星が降る瞬間がよく見えるね。」

　僕はエマをベンチに座らせ、自分も隣に腰を下ろした。エマの顔には期待と喜びが溢れていて、その笑顔を見ているだけで、僕の胸は温かくなった。

　広場では、村人たちが楽しそうに踊ったり、歌を歌ったりしていた。焚き火の周りには、老若男女が集まり、星にまつわる古い伝説を語り合っている。村の長老が語る星の物語に耳を傾けると、まるで星の使者が本当にこの村に降り立つような気がしてきた。

「アレン、あの話聞いたことある？星の使者が願いを叶えてくれるって。」

　エマが目を輝かせて僕に問いかけた。

「ああ、母さんもよく話してくれたよ。星の使者が降りてきて、純粋な心で願いをかけると、その願いが叶うってね。」

「私、今日こそ願いが叶うと信じてるよ。」

　祭りの中心に近づくと、様々な屋台が立ち並んでいた。焼きたてのパンや甘いお菓子、手作りのアクセサリーやおもちゃが並び、どれもこれも美味しそうで魅力的だった。子供たちは興奮して走り回り、大人たちは微笑みながら彼らを見守っていた。

「エマ、あっちで何か食べようか？」

　僕は屋台の方を指差した。

「うん、お兄ちゃん。あのクッキーが美味しそう！」エマは笑顔で答えた。

　僕たちはクッキーを買い、ベンチに戻って一緒に食べた。エマの笑顔を見ていると、病気のことを忘れてしまいそうになる。彼女が健康だった頃の思い出が蘇り、胸が締め付けられる思いだった。

　夜が更けるにつれて、空はますます澄んでいき、星が一層輝きを増していった。広場の中心に立つ星形のオブジェも、星空の一部のように美しく輝いている。村人たちは一斉に空を見上げ、星が降る瞬間を待っていた。

　突然、空に一筋の光が走った。星が降り始めたのだ。村人たちは歓声を上げ、手を合わせて願いをかけ始めた。僕もエマと一緒に手を握り締め、心の中で強く願った。

「星の使者よ、どうか僕の願いを聞いてください。妹を救うために、どんな試練でも受けます。」

　エマも目を閉じて、何かを願っている。彼女の願いが何かは聞かなかったが、きっと僕と同じように健康を取り戻したいと願っているのだろう。

　星が次々と降り注ぐ光景は、まるで夢のようだった。村人たちの歓声や祈りの声が広場に響き渡り、その一瞬一瞬が永遠に続くかのように感じられた。

　その夜、僕たちは星の下で祈りを捧げ、希望を胸に抱いて家路についた。エマの手を握りしめながら、僕は心の中で決意した。星の使者が本当にいるなら、僕はその力を信じて、エマを救うために全力を尽くす。

　Fin