エピローグ 四 海とか愛とか
ただ青かった。
広がる景色はあまりに広くて、それ以上に浮かんでくる感想なんてないんだけれど。それでも、その一言で全て事足りてしまうほどに、心が言葉にならない震え方をしていた。
ただ広がる青空に、それを反射してどこまでも広がる海に、絶え間なく響く波の音に。ただ、魅入られたように意識を呑まれていた。
教会に行動を制限されてても知識では知っていたとか、テレビや写真でなら見たことがあるとか、そんなことを事前に考えていたのが馬鹿らしくなってしまうような。
ただ水と空気が、視野角の全てを覆い尽くしているだけの、それだけの光景に言葉をなくす。
波が揺蕩っている、視界に映る全てで。
空と雲が棚引いている、眼に入る全てで。
ただ広がっている、空と海。
そんな光景に、私はただ吞まれていた。
そうやってしばらく呆けていたら、先に進んでいたあやかが不思議そうにこちらを振り返っていた。そうして、すっと私の顔を覗き込んでくる。
「どしたの? みやび」
「……海、見たの初めてだったから」
そんな私の言葉に君はとことこと私の隣まで戻ってくると、何を想ったか揃って隣で海を眺め始めた。
「そか、海初めてかあ。いいじゃん、激エモじゃん」
「そうかな……そうかも」
エモってどういう感情なんだろう、というのは正直よくわかってないけれど、その感覚を尊んでくれてることはよくわかる。そして、それだけで十分なことも、解っていた。
だから、二人揃ってそうやってしばらく景色を眺めていた。
風と波の音だけが、尽きることなく、辺りを満たしている。
しばらくそうしていると、行き先の方から、かすかに私たちを呼ぶ声が響いてくる、るいの声かな。
「二人ともー、更衣室あっちだってさー」
そんな声にあやかと少し目を合わせてから、小さく頷いて、るいとえるのところまで、二人で小走りで駆けていく。
まだじんわりとなにか、不思議な感覚に胸の内を震わせたまま。
今日、私たちは海に来た。
私にとっては生まれて初めての。
そんな海にやってきた。
みんなと一緒に。
※
「そういえば、海って何したらいいんだろ……」
「めいっぱい、楽しんだらいいじゃん」
あやかたちと更衣室でやいのやいのいいながら、着替えて海の家の前で集合した。
みんながみんな、それぞれの水着に着替えて。
結局、るいも水着を新調したみたいで、みんなして新品の水着に袖を通して、どことなくそわそわしながら、砂浜に繰り出した。
「………………~~……」
「るいちゃん、えるちゃん、みやびが離れなくなっちゃったんだけど、どうしよ?!」
「ねえ、どういう感情の顔なん、あれ」
「……あやかの水着が見れるのは嬉しいけど、他人に見せるのは嫌で可能限りひっついて隠してる顔……かな」
海の家で、ゴーグルとか、浮き輪とかいっぱい借りて。
「…………~~……」
「私、この子にする。このシャチが今日の相棒だぜ、きみに決めた。いいよね、みやび?」
「もうみやびくっついてんの受け入れてんじゃんあやか。相変わらず適応力高くない?」
「…………このボールとこの浮き輪、そう、最大サイズをレンタルしたい。それがロマン……」
パラソル立てて、日焼け止めを塗って。
「私、知ってる!! これ日焼け止め塗り合いするやつだ!」
「あ、みやびが正気に戻った。塗りっこする?」
「実際は背中とか塗ってもらうくらいだよねえ。その背中も大概手伸ばせば届くし、水着の下まではやらんしねえ」
「…………るい、そんなロマンのないこと言わないで。私だってやりたい、ほら寝て、今すぐここで、オイルならたっぷり用意してあるから」
海に入って、泳ぎ回って。
「しょっぱ、しょっぱーい。ほんとにしょっぱーい……」
「あはは、みやび、ちょっと変な顔。ほらちーんしな」
「ちょっと、える、そのクソでかい水鉄砲どっから出したの。こっち向けんな、ちょ、ま、っぶぶぶ!!」
「…………ふふ、ふぁいえる」
「「私もやりたい! それ!」」
砂浜で砂遊びとかしてみたり。
「……………………」
「ここを、こうして、ふふ、開通ぅー。いやあ小学生の頃に培ったスキルはまだまだ衰えていなかったぜ」
「…………砂の城も紛れもない建設の一つ。時間とマンパワーの掛け算で建築物の、成果は決まる、つまり……私が何がいいたいかわかる? るい」
「自分の分は自分で作りなー。私は私のやつ作るので忙しいから」
「…………労働契約不成立」
「ね、あやか……」
「ん? どしたのみやび」
「砂の城って崩れたらどうするの……?」
「んー、そりゃあ、また創り直せばいいんじゃない?」
「そっか……そうだよね。創り直せば……いいんだよね」
「そうそう、ってあ、みやびのもいい感じじゃーん、にひひ」
お腹が空いたらご飯も食べて。
「……今まで資産運用で私財を蓄えてきたのは、全て、この時のため。みやび、あやか、今から店のメニューを全部制覇する。私の財布を信じて」
「ふつーに食べきれないから、やめなさい。二人ともえるが奢ってくれるみたいだけど、食べれる分ね」
「えー、奢ってもらわなくても大丈夫だよ、えるちゃん。今日はいっぱいお小遣い持ってきたし」
「私もお金は大丈夫。ていうか、勝手に奢ったら嫌だから、ちゃんと出させて」
「………………ねえ、るい、これが子の巣立ちを知る親の寂しさ?」
「いや、える大げさすぎ……って、泣いてんの?! この程度で?!」
「「初めて見た……」」
一杯食べて。
「そんでさー、かき氷のシロップは全部同じ味で香料だけが違ってて」
「るいちゃん……、その情報は海初心者のみやびに教えるにはあまりに夢がなさすぎない?」
「…………るいは、そういうところある。それで、みやびは結局何で悩んでるの?」
「え……このかき氷、ふわふわバージョンっていうのがあるらしいんだけど、それだとちょっと高いかなって。お金あるって言っても、寄付で貰ってるお金だから無駄遣いはしたくないし。で、でもいちご乗せとかパイン乗せも気になって……」
「すいませーん、かき氷全部乗せのふわふわバージョンお願いします」
「ちょっと、るい!?」
「るいちゃん、それ私も! だから二つお願いします!」
「……私も入れて三つ」
「え? え!?」
「くふふー、だってさ、みやび。これが同調圧力というやつだよ、ほらほら無駄遣いしちゃいな~?」
「で、みやびは?! みやびはどれにするの?! やっぱりふわふわ!? 全部乗せ?!」
「……教会に寄付した人たちも、みやびが喜ぶならきっと払った甲斐がある」
「そ、そうかなあ、うーん……じゃ、じゃあ私もそれで」
「「「…………」」」
「なんで、無言で親指立て合ってんのあんたら……もう、仕方ないなあ」
ちょっとハプニングがあったりもして。
「ねえ、そこの君かわいいっすね、隣の彼女さんもかわいいし美人さんカップルじゃん、どうすっかこれから俺たちと」
「あはは、いや、私達ちょっと……」
「そうだ、あっちのほうでアトラクションとかあるんすけどいきませんか――――て、え?」
「困ったな……みやび、先にるいちゃんたちのとこ戻ってて? 私もすぐに追いかけるから―――むゅっ!!??」
「な、なんだとぉ!!?? い、一才の躊躇いのない、ロマンティックキスだと!!??」
「いや、違う!!?? あの一瞬で舌まで挿れてやがる!? しかも相手を瞬時に昇天させるテクニック付き! このクール姉さん、かなりの手練れだ??!!」
「私達、こういう関係。だからあなたたち、邪魔。消えなさい」
「すいませんしったあ!! お邪魔しましたぁ!!」
「失礼しました! あと、ごちそうさまでしたぁ!!」
「にゃ…………にゃ……にゃふ…………」
ほんとに、色々あったな……………………。
「反省した。私は、あやかの可愛さを舐めてた」
「た、多分……あの人たち、私はついでで、本命はみやび狙いだったと想うけど…………」
「んーん、あやか自覚ないだけで可愛いんだから、もっと危機感持って。でないと、すぐに食べられちゃうよ。もっと警戒しないと」
「ま、まさかあ…………あの……目が怖いよ、みやび?」
「マーキングしとくべき……? 首筋か、肩に……いやもっと直接的に胸とかお腹に…………」
「おーい、なんか騒いでたけど、大丈夫かー…………? いや、なんでみやびがそんな怖い顔してあやかに迫ってんの」
「…………向こうでアトラクションやってるみたい、行ってみる?」
「う、うん、さっきの人たちがいないタイミングみていこっか……ね、みやび……?」
「キスマークは……弱いか。噛み跡くらい、でも、あんまりつけ過ぎるとダメかな、いやいっそ誰にでもわかるくらい…………」
騒いだり、はしゃいだり。
「あやか、なにこれ」
「バナナボートってやつだね」
「すんごい勢いでボートに引っ張られて、放り出されないように頑張る遊びかなー」
「え…………、その遊び何が楽しいの?」
「スリル系の遊びは、好みわかれるよねえ……。私は好きだけど」
「じゃあ、行く。あやかが行くなら、私も行く」
「決断が早いな、おい。…………える、いける?」
「…………準備運動は万全、今日は負けない」
「どしたん、えるちゃん? そんな気合入れて」
「えるはフィジカルがクソ雑魚だから、バナナボート完走できたことがないんだわ……」
「ああ…………」
「…………今日は万全。それに、るいとみやびの間に挟まれば、理論上、私が飛ばされる確率は0%。今日こそ私はこの戦いを生き残る。故郷に帰ったら結婚する予定もあるし、ダメだったら桜の木の下に埋めてもらっても構わない」
「ん…………? 桜なんてこの辺なくない? それに、結婚ってるいはどうすんの?」
「みやび……その返しが一番きついよ」
「……ネタが解ってもらえず素で返されることが、オタクは一番心に重くくる……」
ちなみにえるは、開始二分程で、海面の藻屑になった。
「やっぱり今回もダメだったよ……」
「みやび、とりあえず、こういう時はババ―ンって言っとけばいいから」
「…………ババ―ン? どういう意味?」
「…………わが生涯に一片の悔いなし……ビーチバレーをやり損ねたこと以外は」
「あるじゃねーか、思いっきり、悔い」
「私、ボール膨らませてくるぜ!!」
「私もいくー、あやか待ってー」
「…………あと、焼きトウモロコシを食べ損ねたことと、グライダーに乗ってみたかったことと、堤防釣りをしてみたかったこと以外に……悔いはない」
「山ほど悔いあるじゃん、いい加減成仏しな。元天使に成仏とかどうなんとは想うが」
ビーチバレーとかしてみたり。
「…………10—2。……無惨なボロ負け」
「く、くそう……!! 素直にリーチが違いすぎる!! みやびもるいちゃんもスタイル良いからよぉ!?」
「まあ、私とみやびのチーム分けになった時点で、なんとなく察してたけどね」
「ちょっとパワー差ありすぎたね。次は、ペア交換してやる?」
「まあ、そだねえ……。もっかいやって、おんなじ結果ってのも面白くないしね」
「…………提案、私とみやび、るいとあやかのペアでやるのはどう? 普段とは違うチームの面白さがあると思う」
「だって、どうする?」
「んー、まあいいんじゃない? あやかと一緒にもやりたかったけど……」
「まあ、それは後でも出来るし、いいんじゃない? よろしくるいちゃん!」
「おー、まあ、ぶっちゃけあやかとえるなら、あやかとの方が勝てそうだよねえ」
「…………るい、そう言ってられるのも今のうちだから」
「える……? なんでそんな悪い顔(当社比)してんの……?」
なんかとんでもないことになったりもして。
「…………主催者権限で、ルールを追加する。『この試合に勝った方は対戦相手のチームにそれぞれ好きな命令を一つできる』。つまりは王様ゲームでもある」
「は、はあ? ちょっとえる、急でしょそれ。まあ、負けなきゃいいんだけどさ。私とあやかのチームなら、なんとか……」
「……『 』を」
「どぅわぁぁぁ??!!!」
「あやか、大丈夫!? なに今の弾丸サーブ!? ビーチバレーってそんな速度でるっけ?!」
「…………ふふふ、この展開を待っていた」
「って、ちょっと待て!! みやび、あんた『奇跡』使って……いや、でももう『治癒』しか使えないはずじゃなかったっけ!!??」
「なんのコト? ワタシ、何にもヘンなことしてない」
「くっそ、こいつ、カタコトになってやがる。しかも『嘘』になんら躊躇いがないぞ!?」
「る、るいちゃん……あと、お願い……がくっ」
「あやかぁ?! いや無理あるわぁ!! ちくしょう!!」
意外と白熱したりもして。
「でも実際、みやびって奇跡はもうほとんど使えないんじゃなかったっけ?」
「…………『治癒』の応用で肉体を『活性』させてるんだと思う。できることは一つでも工夫次第で色々できる。みやびは特にたくさん奇跡と向き合ってきたから」
「なるほどー」
「ってあんたらは、なんですっかり観戦モードになってんの!!??」
「がんばれー、るいちゃんー、さすがに私はあれ無理だわー」
「…………ふぁいと、今夜の主導権はみやびの手にかかってる」
「勝つ、勝つ、勝つ…………命令、なんでも、あやかになんでも……」
「くっそ、舐めんな! 私だって残りかす振り絞ればなあ!!」
「すごっ、なんだかんだ、るいちゃん喰らいついてない?」
「……身体を動かしながらの奇跡はるいの方が私より圧倒的に上手いから。ほら、奇跡で加速した自転車も操縦役はるいだったでしょ? 翼を出した時も、私よりるいの方が上手に飛んでた」
「あー、なるほど、たしかにー」
「『 』を―――」
「当たり前のように浮遊すんじゃねーー!! どう考えても『治癒』の範囲じゃないでしょそれーーー!!」
「えるちゃん、あれは……?」
「…………『愛』が引き起こした、制約を超越した奇跡……?」
「愛すご―……」
「…………焚きつけ過ぎたかも、少し反省」
「『 』を―――」
「あぎゃーーーー!!!」
そんな風に。
笑い声と騒ぎ声が、海岸の少し陽も陰ってきた景色の中を木霊する。
姦しい少女が四人、思い思いに騒いで、笑って、ただそれだけ。
世界を変えるような意義はそこにはなくて。
誰かを救う大義もそこにはなくて。
意味があるのかすらわからない。
ただそれぞれがしたいことをして、言いたいこと言って、ただそれを笑い合ってるだけ。
ただ飾らずに、気負わずに、ありのままの姿でしたいことをしてるだけ。
そうしていると、時々、ちょっと不安になる。
だって、この行いにどんな意味があるんだろって考えちゃうから。
それくらい、今までの生き方とはあまりにも違いすぎるから。
誰かに敷かれたレールの上を歩くのは窮屈だったけれど、無為に迷うことなく安心できていたのも事実だった。
意味は誰かが伝えてくれる。
価値は誰かが測ってくれる。
私の幸せさえ、誰かが決めた定規の上で目盛りを辿って決められる。
その生き方は辛いけど、今想えば、考えなくていいという意味では、とっても楽だったんだろう。
自分で何も決めず、幸せを誰かの手に委ねることができたから。
だから今、なんの定規にも載ってないこの時間は、少しだけ不安になる時がある。
こんな、誰の役にも立たないような、私だけが楽しんでいるような。
こんなにわがままなことしてて、いいのかなって。
そんなことを夕暮れの中で、少しぼやいたら。
君はいつも通り笑ってた。
だって、十年だよ、みやびって、そういって。
十年間みやびは、そういう生き方をしてきたんだから、そう簡単に変わんないし、そう簡単に不安はなくならないし、そう簡単に幸せって何かなんてわかんないよって。わがままだって、まだまだ全然慣れてない。だから、それでいいんだよって。
そうなのかな。
だからね、みやびはこれから十年かけて、自分の幸せが何かなって考えるの。これしたら安心できて、あれしたら楽しくて、それをすることに価値があって、どれをしたら納得して歩けるか。
そういうことをね、十年かけて考えていくんだよって、君は言った。
そしたら、それはとても不安なことじゃないのって、思わず口が動いてた。
だって、導がないのは不安なこと。
だって、誰にも価値を決めてもらえないのは怖いこと。
だって、私はずっとそう教えられてきた。
民のためにあるのが私の幸せ、主のために捧げるのが私の幸せ。
その基準がなくなったとき、人は無秩序に迷うんだって。
そしたら君は少しだけ首をゆっくり捻ってから、ころころ気楽に笑ってた。
そうなったら、どうしたらいいか迷ったら、みんなで考えればいいんじゃない?
そう言って、いつもどおり何でもないふうに。
不安になったら誰かに話せばいいんだよ。
迷ったらみんなと考えればいいんだよ。
どこに進みたいのか、何を選べばいいのかわからなくなったら。
―――答えが出るまで一緒に居るよ。
そう言って。
膝を抱えて、砂浜で夕日を眺めて。
こてんと私の肩に頭を乗せて。
いつも通り、なんてこともないように。
そう言ってくれていた。
それだけで、私の不安は波にさらわれる砂の城みたいに溶けていく。
ああ、やっぱり。
私は—――、そんな君だから。
『 』の私じゃなくて、ただの『私』を見てくれた君だから。
特別でもなんにもなくて、ただ当たり前に私のことを想ってくれた君だから。
他の誰でもない君だから。
その隣にいたいと想えたんだ。
幸せは独りじゃ上手く決められない。
誰かに決めてもらうのは、たとえ安心はできても、窮屈でとても苦しくて。
その誰かが、私の幸せを祈ってくれるとも限らなくって。
だから誰の隣にいるのかは、自分で決めないといけないんだ。
ちゃんと、当たり前に私の幸せを願ってくれる誰かの隣を。
だから私は君の隣を選んだんだよ。
私の幸せを祈ってくれる君の隣を。
私の心をちゃんと聞いてくれる君の隣を。
私のしたいことを一緒にやろうって言ってくれる君の隣を。
今こうやって、選んでるんだよ。
だって君の隣ならきっと大丈夫。
先すら見えなくて、決まった行き先もない真っ暗な旅路でも。
笑って歩いていける気がしたから。
真っ暗な夜の海を、月明かりだけを頼りにして進むような旅路でも。
君と一緒なら、きっとどこまでだっていけるから。
導のないこの道を、行き先すら他の誰でもない私が決めるこの道を。
たとえそこにどれほどの不安があって、たとえそこにどれほどの迷いがあっても。
それでも、私の価値を私自身が決めていいこの道を。
君とだから、歩いていける気がしてる。
だから、私は、君のことを愛しているんだけど。
そこのとこ、ちゃんとわかってくれてるのかな、ちゃんと伝わっているのかな。
それも、どうしようもなく不安だから。
確かめるように、ゆっくりと君の顔を覗き込む。
君は少し不思議そうに首を傾げてから、じっと私の瞳を見つめ返した。
それから、二人で少し視線を交わして頷きあってから。
ゆっくりと唇を重ねた。
波の音だけがあたりに響いてる。
いつまでも、いつまでも、きっとこの星が終わる時まで絶え間なく、ずっと鳴り続けるその音を聴きながら。
眼を閉じて、触れる柔らかさを感じてた。
君の隣でいつまでも。
※
9/27・28・29の更新分で完結予定です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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