魔力ゼロの僕が名門魔法学園に通います
秋月睡蓮
第1話 試験
「ここがアルスタリア学園か」
グリーディア帝国の首都、魔法都市ポラリスにある世界最高峰の魔法学園。それがアルスタリア学園。魔法を生まれながらに使えるこの世界で魔法を極めようと全世界から集まる超名門校。倍率の高さから入学するだけでも泊が付くとされている。そんな凄い所に僕はこれから受験する。校門から見えるその大きく神秘的な校舎の造形に圧倒される。手のひらに汗が滲む。
大丈夫。そう心に呟き鼓舞し、校門をくぐる。
周りには同年代の受験者が集まっており人の波に流されるように受付けまで進む。やっとの思いでたどり着いた受付けで受験番号を貰い一息つく。2037と記されていた受験番号には試験会場とその場所の地図が裏面に記されていた。
試験会場に着くと机が並べられていた。最初は筆記の試験のようだ。受験番号が魔法で刻印された机に座る。周りを見渡す。緊張している顔や自信に満ちている人、参考書をギリギリまで読んでいる人など様々だ。試験官が入室してくる。試験官は銀髪の短髪にサングラスをかけている男の人だった。
「これより筆記試験を始める。試験の時間は三時間だ」
ぱちんと試験官が指を鳴らすと同時にぶ厚い紙の束がドサリと机に落とされた。いよいよ始まる。
筆記試験の終わりを告げる声と共に身体が机に雪崩落ちた。頭がパンクしそうで指にも重さが残っている。
少し休みたいそう思っていても試験は待ってくれず、すぐに次の試験が始まる。次の試験は水晶に手をかざし魔力量を測定するというものだった。これは非常にマズい。というのも僕は魔力が生まれながらにないのだ。全世界の人口の1%以下の割合いらしい。そうは言っても試験。やるしかない。僕は恐る恐る水晶に手をかざした。試験官がかなり驚いた顔をしたがそんなのはどうしようもない。やるだけやらなくては。試験官の案内で次の試験会場へと向かう。
次の試験会場には僕以外の誰もいなかった。アリーナ場の試験会場はただ広く虚しかった。しばらくすると試験官がきた。試験官は長い槍を持っており険しい表情をしていた。
「君が受験番号2037か。本当に魔力がないんだな」
その言葉に哀れみはなかった。ただあったのは怒りに近い感情だった。魔力がないとここにいてはいけない。そう言われたような気がして僕も怒りが湧いてきた。
「試験の内容を説明する。私と一対一の決闘で合否を決める。なお勝敗ではなく内容で決めるものとする」
試験官がアリーナの中央に歩いていくのを見て僕もそこへと向かった。
「言っておくが手加減はするなと上からの通達だ悪く思うな」
「必要ありません。僕も全力でいきます」
「それでは試験を始める。かかってこい!」
僕は腰に携えている刀、宵闇を抜き試験官へ斬りかかる。
試験が終わり一週間が過ぎた頃引っ越し先の新居に手紙が送られてきた。差し出し主はアルスタリア学園からだった。
『試験番号2037シオン様。この度はアルスタリア学園の試験合格おめでとうございます。つきましては入学の手続きの為の書類にサインをした後アルスタリア学園に送付してください』
合格の知らせに思わず舞い上がってしまった。まずは師匠に手紙を書いて、そう思ったら一気に肩の力が抜けた。そういえば試験に落ちたら二度と弟子を名乗るなと言われてたっけ。厳しすぎるよ僕の師匠は。
☓ ☓ ☓ ☓
「はっはっは!まさか君が負けるとはねシシリス君」
アルスタリア学園の理事長リーリアは高らかに笑っていた。それとは対照的に肩を落としているシシリスの表情は暗い。
「新任でいきなり鼻っ柱をおられた気分を聞きたい所だが気に病むことはないよ」
「しかし…」
リーリアはシシリスの肩に手を置き口を開く。その表情は先程までの陽気な物ではなく真剣なものだった。
「彼は最強の剣士にして四英雄の弟子だったわけだからね。まったく手紙が来てたからよかったものの何も言われなかったら魔力検査で落としてたとこだよ」
リーリアの手には一枚の手紙があった。
『俺の弟子は魔力がねぇからふるい落とす前にとびきりキツイ試験をしてやってくれ。それで判断してくれればいい』
リーリアは手紙を粉々にする。
「これから見せてもらうよクロ。君が育てたその力を」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます