トランプ・ゲーム

こうして、3人は、ケヴィンの部屋で、と言うより、1階の共用部分の、空いたサブ・ダイニング・テーブルに降りていき、誰もいないテーブルで、トランプゲームを始めた。

「大富豪でもします?」と、クラリス。

「私、それぐらいなら知ってるから」と、クラリス。

「いいですよ」と、ケヴィン。

 やがて、3人がトランプをいろいろとしていると、暖炉のある居間から、一人、また一人、と消えていった。みな、二階の自室へと戻っていったのだ。

 その日は、暖炉の薪がつきるまで、3人はいろいろな雑談をしながら、トランプゲームに興じた。

「もう寝ましょうか」と、シャトルが言った。天窓からは外が見えるが、もう真っ暗で、雪がしんしんと降っている。

「明日は、僕とも散歩を」と、ケヴィンが言って、にこりと笑い、3人は2階で別れた。

 一人寝室に入り、クラリスは、亡き夫のことと、死んだであろう自分の子供を想い、そっと涙を流した。そして、そのままベッドの布団に入り、ろうそくの灯りを吹き消した。

 次の日、クラリスはコンコン、と言うノックの音で目が覚めた。

「クラリス、そろそろ起きてちょうだい」と、クリスティーナの声がした。

 着替えて下の階に降りると、もうみんな、朝食の席についていた。

「遅いわね」と、フロゼラと仲のいい、ローディアというユニコ―ンがぽつりとつぶやいた。

「まあいいじゃない、ローディア」と、クリスティーナ。

「今日はユニコーンの仕事について説明がある、クラリスさん」と、カーディフ。

「シャトルとケヴィンと仲がいいようだから、二人に任せる」と、カーディフ。

「仕事は来週、1週間後から、君にも加わってもらいます。僕も最初は手伝うよ」と、カーディフが言った。

「・・ありがとうございます」と、クラリスが朝食のパンを食べ終わって言った。

「じゃあ、早速行きましょう、クラリス!」と、シャトル。

「俺も」と、ケヴィン。

「ええ、シャトル、ケヴィン」3人は、昨晩のトランプで、すっかり意気投合していた。

 3人は暖炉の薪拾いと言う名目で、深雪の中、コロニーの周辺の森林の中を歩いた。

 しっかり着込んであるし、吹雪もやんでいるから、そこまで寒くない。

 薪を拾いつつ、3人は、15分ほど歩き、湖のそばに着いた。

「綺麗な湖でしょう、クラリス」と、シャトル。

「ええ、とても」と言って、クラリスは、昔、フラウと、天体観測で湖のそばまで行って、夜星を眺めながら話をしていたのを思い出した。

「・・・」

「どうしたんです、クラリスさん??」と、ケヴィンが気遣う。

「いえ・・・ただ、・・・・亡くなった主人のことを思い出して」と言って、クラリスが泣き出すので、ケヴィンはぎょっとした。

「俺、何か余計なコト言いました?だったら、ごめんなさい」と、ケヴィン。

 クラリスは手で顔を隠して泣き止まない。

 ケヴィンとシャトルが目をあわせて、困った風な顔をする。

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