悪女と言われた令嬢は隣国の王妃の座をお金で買う!☆

シオンは周りを見渡してから続けた。


「砂糖の生産とメープルシロップの量産をして、海外に輸出したいと思っています。特に砂糖は北の国々でも需要があり、高値で取引できると思います。ただし、不当に高く売るのではなく、常識の範囲で売り、その他の政治的駆け引きの融通など考えております。メープルシロップも木を傷つけ過ぎれば枯れますので、植林活動を行いながら、採取をしていきたいと思っています」


シオンの言葉にセラ令嬢が1番感動して、話を聞いていた。


『す、凄いです。他国の令嬢なのに帝国の事をきちんと考えていますわ。聞いた話だと王国では悪女と呼ばれているはずなのに………これはきちんと情報を集めなければなりませんね』


そこまで話して沈黙していたエリスが反論した。


「確かに帝国で砂糖を量産できれば、とんでもない利益を生むでしょう。でもこれだけで500億Gもの収益が見込めるかしら?多く見積もっても100億Gではないかしら?無論、ここにいるメンバーでは1番の収益ではありますが」


バーネットも追従した。


「そうよ!いくら何でも盛り過ぎよ!」


シオンはサラッと流した。


「そろそろかしら?」


そこでようやくハルが戻ってきた。


「お待たせしました」


ハルはカートに料理を載せて戻ってきた。


「これは?」

「私の説明はまだ終わっておりません。これは砂糖やメープルシロップを使った料理です。それと、新たな【国民食】になる料理です」


料理をテーブルに置いていく。


「国民食?」

「はい。帝国では小麦の栽培でパンが主食です。この穀物は平民が毎日食べれる穀物になります」


!?


「そんなに大量に栽培できるというの?」

「はい。これを見て下さい」


調理前の畑で採れた土芋と赤芋をみせた。


「ちょっと!それは毒がある作物じゃない!私達を毒殺する気なの!?」


当然の反応だった。

シオンはこれまでと同じ説明をした。


「では、緑色の芽を取り除けば、毒はないと?」


今まで空腹で、死にそうな平民が決意して食べていた土芋は地面から掘り起こして、芽が多く出ている状態で食べたに違いない。


「はい。では陛下どうぞお食べ下さい」


ハルが陛下の所に、土芋の料理じゃがバターとポテトチップ、マッシュポテト、赤芋の芋ステックを持っていった。


「うむ、どれも美味いな。個人的にはじゃがバターが好きだが、仕事の合間にポテトチップを食べるのが好きだ。赤芋は見た目だけで毒がない。砂糖なしでも甘いのでいいな」


すでに毎日の様に土芋料理を食べているゼノン皇帝だった。

皇帝が食べた事で、他のメンバーも恐る恐る口にした。


「美味しい………」


素直な感想だった。


「土芋は地面の中で育つので、天候にも強いです。貧しい平民でも、そのまま焼いて食べれますし、塩を掛けるだけでも美味しいです。しかも様々な料理に使えるので、軽く30種類以上の料理が世間に出回るでしょう。これで餓死する民が減るのと───軍事物資にも使えます。保存も長期に出来るので」


!?


「民が飢えず国が主導して栽培し、その人手に貧民の者を雇うことで、皇帝陛下の名が名君として、国中に広まるでしょう。そして飢える事の無くなった貧民が、土芋の栽培という職にありつき、収入を得る事で、さらに経済が周り、物が売れます。結果的に帝国は豊かになるでしょう!飢えなければ民は叛乱など考えませんしね?」


誰も文句の付けようが無かった。


「待って下さい。確かに素晴らしい政策だと思います。でも先ほどの質問の答えになっておりません」


そう500億Gの外貨を稼ぐという話だ。


「いいえ、すべてが繋がります」


?????


「まず、セラ令嬢が考えた税収の確認ですが、数年掛かると思いますが、専門家を連れて王宮騎士団が順番に全ての領地の確認を行います。これは国が主導して行うと印象付ける為です。各領地の小麦の収穫量と田畑の面積をしっかり測ります。小麦の栽培に向かない領地は土芋などの栽培に変更しましょう。しばらくは国が援助すると言えば、そんなに文句はでないと思います」


セラは税収をチョロまかしている領主を調べると言う意味で言っていたが、あくまで金額だけで、シオンは領地の田畑の面積まで調べると言っているのだ。


「無論、各領主の反発はあるでしょう。しかし、皇帝陛下が舐められては国の終わりです。東部の不正が酷かった為と、新たな東部の盟主ゼファー子爵が全面的に協力すると言っている以上、北、南、西も協力せざるを得ません。それに、今以上の利益がでる可能性がある以上、調査される領主にもメリットがあります」


うむ………

ここまでやれば、隠された税収が一気に50~70億Gほど上がる可能性がでてくる。


「これは私が発案してセラ令嬢は協力者という形で行いたいと思っています」


「………私の手柄を奪うつもりですか?」


セラも少しムッとして答えた。


「いいえ、セラ令嬢を守る為です。この政策は各領主に怨まれます。命を狙われる可能性が高い。なので私が帝国の貴族の悪意を受け止めます。他国の令嬢ですしね。セラ令嬢はあくまで協力者とすれば、それほど危険はないでしょう。セラ令嬢が亡くなっても、私が生きている限り、各領地の収穫高を調べられるのですから、狙うなら私になります」


そこまで考えて!?


この時点でセラはシオンには勝てないと心から思ってしまった。

そして、どうしてシオン令嬢が悪女と呼ばれるのか、悟ってしまった。


「私は王国でも悪女で通っていますし、悪名が1つ2つ増えても困りませんので」


ニコリと笑うシオンに感銘を受けていた。自分の評価より国を富ませる事を選ぶ気高さに。


いつの間にかセラはシオン信者になりつつあった。


「それとに次にエリス令嬢の政策ですが、今のままでは我が王国との貿易は成功しないでしょう。身内の恥を晒しますが、今の王族は腐っていますから、自分の利益になる事しか動きません」


エリスの目が開いた。


「そこで、私の砂糖の栽培が効いてくるのです。帝国で砂糖の栽培ができるようになれば、王国は帝国に掛けている理不尽な関税を下げざるおえません。砂糖の生産と言う武器を使って、新たな商品を売り込むのです。南の王国は帝国より暖かいです。羊の毛でできた衣類なら、薄手の衣類にするか、貴族をターゲットに、羽織れるローブなど工夫が必要です。それとは別に、帝国で作られているチーズの関税を高くして、高値で売りましょう。チーズは船での食事に重宝され、王国では殆ど作られておりません。貿易で利益を得ている王国は、他国の船に対して、保存食料を用意する義務がありますので、買わざるおえませんよ。これは辺境伯である我が実家が口添えします」



!???


エリスは驚いた顔でシオンを凝視した。


「二人とも着眼点はよかったですが、リサーチが足りません。もっと、その地域の民がどう生活しているのか、他国の文化や宗教、料理など調べて下さい。国によってはタブーな食べ物があったり、宗教上の問題で、これをしてはダメなどあります。逆に知っていれば、商機にもなります。南の国の貿易で、王国の関税が下げられ、こちらの商品が高値で取引されれば、合計で500億G以上の利益がでる事でしょう。それも毎年定期的な収入になります。今後、南の国から海外の商品が多く入ってこれば、そのまま北の国に売れる物も出てくると思います。それはバーネット令嬢にお任せ致しますわ」


シーーーン


シオンの説明に誰も反論出来なかった。


「私はここに宣言します!この政策を実現し、圧倒的な利益を帝国にもたらせて、王妃の座を買わせて頂くわ!」


手を前に出して宣戦布告をするのだった。



※タイトル回収完了!

まだまだ続くよ☆

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