訓練デス!

地下に降りるとアキが厳しい訓練をしながら悲鳴を上げてた。


「おじょーーー!!!たーすーけーてーーーー!!!!」


泣きながら助けを求めるアキだったが───

ガシッ!

またアイアンクローを受けた。


「アキ!朝から何度も言っているでしょう!シオンお嬢様です!臣下の立場を弁えなさい!」


「シオンオジョウサマ、タスケテ………」


シタバタしながらか弱い声で助けを求めるアキだった。


「アキ、がんばっ!みんなも怪我の無いように頑張ってね!」


「「はいっ!」」


アキ以外はやる気を出したようだ。

アキはシオンを殺る気を出したようだ。


あれれ?

言葉の発音は同じなのに意味が違うよ?

まっ、いっか!


シオンは、とばっちりを受ける前に地下を後にした。


「そう言えば、地下の脱出口は潰したのよね?」

「はい。逆に侵入経路にもなりますので。もし瓦礫を掘ろうとしても、音や人の出入りでわかります」


なら大丈夫ね。

さぁ!まだまだ探索はこれからだよ!


一階にはパーティーをする為のダンスホールの出来る広い部屋があった。

前世でいう体育館ぐらいの広さである。


「屋敷の約半分ぐらいはこの無駄な部屋に取られているのね。せめて庭に別館を建てて、そちらでパーティーすればいいのに」


「お嬢様のような方が珍しいのです。贅沢三昧の貴族や王族は見栄と虚勢の為に、飾らないと安心出来なかったのでしょう」


「まったく、民の血税だってこと理解しているのかしら?理解できないわ」


広い部屋をゆっくり見て周ると、興味のないとすぐに出ていった。シオンが出ていった後、側付きのメイドはボソッと呟いた。


「理解できなくて当然です。シオンお嬢様は尊い御方。命を賭けて忠誠を誓うに足る方ですもの。あんなクズゴミの奴らの事など理解しなくていいのです」


そう呟くと何事も無かったかのように後を追うのだった。


「だいたい見て廻ったかな?」

「そうですね。後は、庭にある騎士団の宿舎にも少しありますが、男ばかりの、むさ苦しい所にシオンお嬢様を行かせる訳にはまいりません」


まだあるの!?

行きたいけど残念だなぁ~~


その夜、隣の回転扉から、厳しい訓練でボロボロの状態で、疲労困憊のアキが夜遅くに入ってきて、幽霊と勘違いしたシオンが悲鳴を上げるのは、数時間後であった。


「おじょ~~ひ~ど~い~デ~ス~~~~」


!?


「うぎゃーーーー!!!!!!!!!」


そんなこんなで、シオンはしばらくは王妃宮の中で騒がしくも、楽しく過ごすのだった。




一方その頃────


「シオン令嬢がようやく王宮にやってきたな宰相」


「ええ、安心しました。シオン令嬢には感謝しかありません。我が国の腐敗を正してくれますからな~」


すでにシオンに信用を置いている宰相が満足そうに頷いた。


「それで、妃候補達は何人参加しそうだ?」


後3日で4月になる。

それまでに王宮に入ったのは4人だけであった。


「しかし意外だったな」

「だれの事です?」


ゼノン皇帝はテーブルの上に置かれた王妃候補の姿絵を指した。


「こいつだ。バーネット・メイゲン伯爵令嬢。ヴァイス侯爵と手を結んでいたヤツだ。自分は身を引いて、『他の候補』に手を貸して、借りを作らせる女狐だ」


「ふむ、自分で表舞台に立つタイプではないと?」


「ああ、コイツはヴァイス侯爵令嬢を支援していたが、それはカモフラージュに過ぎなかった」


宰相は髭を触りながら考えた。


「なるほど、表向きはヴァイス侯爵令嬢を支援していると思わせて、別の候補とも手を結んでいたと?」


「流石だな。その通りだ。だからこいつが急に王宮に来たのには驚いた」


実は手を結んでいた候補達が軒並み脱落したため、自分で立候補しなければならなくなったのだ。


第一候補のエリス・ブルーネット公爵令嬢など、残った候補達には断られ、距離を置かれてしまったのもある。


現在王宮に来て、未来の王妃になると宣言した人物は以下の通り。


【エリス・ブルーネット公爵令嬢】


【セラ・ラビット侯爵令嬢】


【バーネット・メイゲン伯爵令嬢】


【シオン・オリオン辺境伯令嬢】



「さて、ここから各王妃達がどう行動していくのか楽しみだな」


ゼノン皇帝の不敵に笑う姿を見て、宰相は深いため息を付くのだった。




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