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 それから、練習が終わった後に私と花梨のダブルスの練習に香ちゃんと若葉ちゃんが相手になってくれていた。2年生達は近畿大会が近いのもあるけど、なんとなく1年生同士のペァを煙たがっているようなのだ。コーチは遠くから眺めているだけでアドバイスも何にも無い。


「意外と二人は息がおぉてきてるみたいやねー」


「香 なんやねん その 意外とってぇー」


「だって 二人とも 突き進むタイプやんかーぁ 食い違ったら大変やって 心配し

てタン」


「ほんまはな! コーチからも 釘刺されてるねん ウチはダブルスを組むようなタイプ違うしー 水澄と衝突するようなことがあったら 響先輩に相談しなさいよって」


「そーやったん・・・でも 二人が組むと最強かもね 内緒やけど2年生のペァより上行くわー」


「そやろー? だから 頑張るネン 来年は大阪でトップ獲るネン」


 そんな調子で練習を続けていたのだけど、いつも守衛さんから「もう 少し 早く切り上げるようね」と、注意されて門をくぐっていたのだ。


 9月も終わりに近づいて、練習を終えて駅を降りると辺りは暗くなっていたのだが、お兄ちゃんの姿があって、その横に日焼け顔の智子が居た。


「智子 どうしてぇー」


「どうしてってね 先輩に帰って来る時間を聞いて・・・」


「そう どうしたの? なんかあった?」


「あのなぁー 翔琉と逢ってないんやってぇー? 何かあったんか? 先輩に聞いてもはっきりとしたこと ゆわへんしぃー」


「・・・別に 何も無いよー なんで そんなん 智子が心配するねん?」


「なんでって ・・・ ウチ等 仲間やんかぁー 付き合ってるって思ってた二人がそんなんて 心配するやんかー 彼と彼女のはずやろぅ?」


「智子 私はなぁ 今 クラブのことで精いっぱいなんやー 中間考査も近いし、頑張らなトップから落ちるし、学園祭のこともあるしー 必死やねん だから、翔琉のことに構っている間が無いねん 彼のことは忘れているんちゃうでー 今でも好きやー でも・・・逢うたりすると 気を張り詰めているんが切れてしまうんちゃうかー と」


「そんでも 逢うたら やすらぐんちゃう?」


「あかん 今は・・・ 自分で切り開いて行く そんなんやから・・・ 翔琉が・・・もし 他の女の子と・・・それでも かまへん しょーがない 今の私には、あっちもこっちもって 余裕ないネン」


「水澄 それっ! 本心かぁ? 翔琉とは結ばれる運命にあったんちゃうんかぁー?」


「そーやぁー でも こんな私のことは 忘れてくれてもええと・・・思ってる」私は、また、何ていうことを言ってしまったのだろうと思ったけど


「ふ~ん わかったぁー 翔琉に伝えとく あいつ 最近 練習でも元気ないからー 水澄のことがあるんやと思っていたけど それっ 伝えたら ふっ切れるやろー 水澄は翔琉と別れも仕方ないと思ってるんやな!」


「あぁー そんなんちゃうけどー・・・今の私には 無理やねん・・・ 智子 私は、智子のことは・・・」


「わかってるって ウチも水澄とは親友のままやでー 卓球も頑張りやー オリンピックやでー また 時々は逢おうなー」


 自分で乗ってきた自転車を押しながら、私と並んで歩いていたお兄ちゃんが


「水澄 泣いているんちゃうかー? 人前では強がり言うのにー すぐ 泣くのぉー」


「お兄ちゃん 私 大変なこと ゆうてしもぉーたんやろか?」


「翔琉とのことか?」


「・・・今でも 好きなんは変わらへんねんけど・・・」


「そらぁー 水澄の 今の状況考えると仕方ないんちゃうかー」


「私 今でも 翔琉の胸で甘えて、支えて欲しいって思うこともあるんよ でも そんなことしても・・・何にも 生まれへんやんかー 結局 自分で向かって行かなきゃーって・・・だから 翔琉のことは考えへんよーに言い聞かせてるんやー」


「水澄 お前は 本当に男が惚れて追いかけるような 好い女になりかけてるよなー お母さんが仕掛けたまんまのな 翔琉のことはしばらく忘れろ」


「何? お母さんが仕掛けたって? お兄ちゃんだって 翔琉とのことは応援してくれてたやんかぁー なんやのん?」


「いゃっ ただ お母さんは 水澄に太子女学園のスターになって欲しいってことさ」


「そんなん なれるわけなんヤン お兄ちゃんの妹やでぇー」


「だけど お母さんの娘なんだろう・・・」


「そう お母さんの・・・」




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