6-4
新潟に出発する前の日。花梨が
「水澄 相手してくれてありがとな 疲れてるのにー」
「ううん それより 花梨 勝ってなぁー」
「ウン 出してもらえたら 全部勝つつもりでやる 水澄の分もなー」
と、言っていたけれど、花梨は団体戦の1回戦で勝ったきりで、後の出番は無かったのだ。チームの方は個人戦で燕先輩は準決勝で響先輩は決勝で、神奈川の山手丘学園の2年生秋元蓮花に負けてしまって、団体戦のほうも決勝までは快進撃を続けていたのだが、相手の秋元蓮花と1年生の見沼川七菜香にやられてしまって3-0で敗退していた。
新潟から帰る時、花梨ちゃんが私を呼び寄せて
「水澄 ウチとダブルス組んでくれへんやろーか?」
「えっ 私なんかとぉー」
「ウン 水澄は左利きやろー ベストマッチやー それに すごいスマシュ持ってるしー なぁ やろーなーぁ 嫌やろーか? ウチからコーチに頼み込むわー」
「嫌なことないでー やってみたいでー でも・・・」
「あのなー このままやったら 多分 燕先輩と組まされるんやー 多分な 今 3年生と組んでるやろー もう 卒業やんかー それで 次のペァを思案してるんやー ウチ 嫌やねん 先輩と組んだら 思いっ切りでけんよーなると思うネン 水澄とやったら 二人で思うこと話あえるやんかー 来年は トップ狙えると思うネン」
「えっ えーぇ トップ?」
「そーやー 頂点に立つネン」
と、夢を語られて帰ってきたけど、私にも夢の又夢だった。帰って来てから、9月始業式まで練習は自主練習だけで、一応 休みなのだ。
「お兄ちゃん 遊びに連れてってなー 京都にでも」お兄ちゃんも、今は練習も無いのでので毎日ブラブラしているのだ。
「はぁー まぁ 構わんけどー デートするんなら 翔琉と・・・まぁ それも 止めた方が良いかな」
「そーなの 翔琉は お母さんが ぐだぐだ言うから 面倒臭い! それに、お兄ちゃんとデートしたこと無いやんかー いこぉーなー どっちみち 彼女もおらへんねんからー したこと無いやろー」
「一言 余計やー」
「ふふっ 私ね みたらし団子とちらし寿司食べたいネン もちろん 清水寺からの道も歩いてみたいよー」
「水澄 何で そんなもん知ってるネン」
「そう 香ちゃんから聞かされたんやー おいしいって」
「ふ~ん じゃぁー 軍資金要るなぁー 水澄の役目な!」
「なんでぇー」
「そらぁー 水澄の頼みだったら お母さん ダメって言わんもん」
と、私は その夜 お母さんにお兄ちゃんと京都に行くからと、お小遣いをおねだりして 「水澄の遠征費とか あー それに、福井にも行ったでしょ! 今月は出費が大変なんですからね!」と、言いながらも、奥の部屋から封筒を出してきて、お兄ちゃんにお金を渡していた。
翌日、私は薄いブルーのポロシャツにベージュ色のボックスプリーツのスカートだったのだけど、お兄ちゃんは紺のTシャツに汚れているのかわからないカーゴパンツで・・・
「なんやのー その 汚い色のズボンはー」
「いっつも こんなもんやー 水澄と違って そんなに 持ってへんからな」
「・・・わかった」と、私は、せめて上だけでもお揃いにしようと紺のポロシャツに着替えていたのだ。
「これで 一応 お揃いやろー」と、お兄ちゃんと手を繋いでいって、京阪の清水五条に向かったのだ。
駅を出てからは、混雑していたので、清水坂をお兄ちゃんは私の手を引っ張るように繋いでいてくれた。清水寺に入ってからも、私は
「おぉー おー 高い 街並みも見えるんだねー」と、小走りになっていると
「水澄 走るなよー 初めてじゃぁないんだろう?」
「うー 初めてだと思う」
「遠足とかで来てるはずだけどー」
「へぇー 覚えないなぁー」
「寝てたんちゃうかー」
産寧坂から八坂神社に向かって歩いて、その間 私は お兄ちゃんと腕を組んだり、絡ませるように手を繋いでいた。途中、お目当てのみたらし団子のお店を見つけて、何組かが並んでいて、私達も待っていたのだけど、私達の前に並んでいた4人組のお姉さんが声を掛けてきて
「仲 良いのねぇー 恋人?」と、聞いてきたので
「はい! 恋人以上 お兄ちゃんです」
「えっ 羨ましいぃー お兄さん? はぁーぁ」 さっきから、お兄ちゃんが帽子を脱いで顔を扇いでいたので、額の汗をハンドタオルで拭いてあげていたから、そんな風に見えたのかもー
「お姉さん達は旅行ですか?」
「ええ 神奈川からー 大学の卒業旅行なのよ でも 京都は暑いわねぇー」
「ふふっ 神奈川も熱い学校 いっぱいありますよー」と、その時、私もツバの長い目の紺のキャップを脱いで顔を扇ぐ仕草をしていると、私の刈り上げた髪の毛をながめながら
「・・・」 声を失っていたみたい。私が衝撃を受けた山手丘学園 そんなことは、お姉さん達にわかる訳がないと思っていたけど・・・
ようやく、席に案内されて、お団子を・・・私がお兄ちゃんの口元についているタレを拭いていると
「よせよー みんなが 見てる」
「へっ 恰好 つけてやんの! 赤ちゃんみたいに汚してるくせにー 食べさせてあげようか」と、口元に串を持って行くと
「いいったらー 水澄 時々 兄貴を からかうようなことをやるよなぁー」
「ふふっ 本当に仲良いのねぇー こんな 可愛らしい妹さんが居ると楽しいよねー」と、さっきのお姉さんが横の席から言ってきたら
「いや うれしい苦労があるんですよー」と、お兄ちゃんが返事していたのだ。
その後、八坂神社までお店を覗きながら歩いて、途中 アクセサリーのお店でお兄ちゃんは自分のお小遣いでと、私に 周りがイェローで中心が紅くなっている七宝焼きの小さなトップで飾られたペンダントをプレゼントしてくれたのだ。
河原町沿いのお寿司やさんに着いて、お昼の時間が終わっているのにしばらく並んで待って、思っていたより高かったけど、ようやく念願のちらし寿司を食べた。
「おいしいぃー ねぇ お母さんにも買って帰ろうよー」
「いいけど 水澄には いつも お母さんが居るんだなぁー」
「だって おいしいから母さんにもってー・・・今日も 働いてくれているんだものー」
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