5-6

 金曜日の朝。翔琉が駅で待っていて


「おはよう 水澄」


「おはよう 何だか 久し振りなような気がする」私は、嬉しかったのだけど、そんな言葉しか出てこなかった。


「どうだ? 練習きついか?」


「きつい・・・慣れたけど・・夏の大会 出たいけど、まだ 無理みたい うまい子いるからー」


「そうかー しょうがないよー まだ 3か月だろう?」


「やねんけどー 頑張ってるんやでー 時々 私は素質ないんやって思うこともある」


「そんなことないやろー 水澄は すごいバネがあるヤン」


「バネなぁー バネだけでやれたらええねんけどなー」


「まだ ある 目標に立ち向かっていく力が水澄にはある」


「そーよなー 翔琉と話していると元気出るわー」


「そうか 良かった! あのなー 又 お盆に福井に行かへんかー 今度は、十蔵も智子も誘ってるねん」


「あっ あっ なぁー なんやサッカー部の合宿みたいやなー お兄ちゃんも硝磨君も行くんやろー?」


「まぁな でも 海水浴やー」


「私・・・聞いてみる・・・お母さんに」


「そうかぁー まぁ 考えとって! 皆は喜ぶと思うよ」


 そして、私がホームに向かう時


「水澄・・・無理して怪我するなよ!」


 私は、振り返って、キスをするしぐさをして入って来る電車に向かった。彼と居ると小さい頃から、安心できるんだものー


 その夜、私はお母さんに切り出そうとしていたのだけど・・・


「なんなの? 水澄 何か言いたいの? 何か言いたい時って わかるのよねー あなた 正直だから 態度に出るの」


「うっ うん あのねー あのー そうだ お弁当のおにぎり 1個増やしていいかなー?」


「何言ってんのよー そんなの 練習もきついから お腹減るんでしょ 当たり前じゃーない 中味はどうしょーか」


「あっ お醤油と海苔だけで良いの」


「あっ そうなの じゃーぁ 明日からでも 大丈夫よ」


 私がお風呂から出て、お兄ちゃんに声を掛けにいくと


「水澄 ちょっとー」と、呼び止められて


「お前 お母さんに言うこと 違ったんちゃうのか?」


「あっ あー 私 ダメって言われるの怖くってー」


「そうか やっぱり 三国に行くことかー?」


「そう 今日 翔琉に聞かれた」


「行きたいんだろう?」


「そらぁー 行きたいに決まってるヤン」


「どうして我慢することあるねん? 水澄の大好きなお母さんだろう お母さんだって水澄のことが可愛いんだよ その頼みだったら・・・ 反対するんだったら、それなりの理由があるはずだ はっきりと聞いたらいいんじゃぁないか このままだと水澄と翔琉の間は駄目になる気がする 俺は、翔琉も好きなんだよ だから、その翔琉がお前のことを思ってくれてるんならー」


「そーだよね お兄ちゃん 私がちゃんとお母さんと向き合えば・・・」


 と、次の日の夜。私は、お母さんに切り出そうと もじもじしてたのか


「なによー 水澄 言いたいことがあるなら言いなさい!」


「ウン あのねー お盆に福井に誘われたの 今年は、智子も行くんだってー 女の子ひとりになるヤン だから、私も 行きたいの」


「あっ 今年のお盆休みは竹通さんとこと 白浜に誘われてるのよー 水澄と仲の良い香ちゃん?とこも誘うんだってー 行くでしょ?」


「うっ まぁー・・・でも・・・皆とは 久し振りでー 仲間だからー」


「水澄! いつまで仲間とか言ってるのよー お付き合いよしなさい! もう あなたはあの人達とは生活ベースが違うのよ! あなたは太子女学園という一流の学校に行っているのよ」


「えぇー そんなぁー 皆とは励まし合ってきたの・・・」


「お母さん それは言い過ぎじゃぁないの? 翔琉とだって 水澄がお互い好きなのは、お母さんも知っているだろう? 何で 引き離そうとするんだよー」と、お兄ちゃんが口添えしてくれたけど


「何にも 離そうなんて思ってないわよ ただ もう 生活の世界が違うのよ それにね 今度福井に行くっていうメンバー みんな 同じサッカー部でしょ! 水澄だけ違うのよ! 一時でも 水澄が疎外感 感じたら可哀そうじゃぁない そーいうこと 達樹 考えたことある? そんなの 達樹でもどうしようも無いでしょ!」


「・・・そんなこと 無いよー でも 水澄達は小学校からグループで・・・翔琉も・・・」


「その 翔琉君もね 水澄には 合わないわ もう あそこのお家とは関わりませんからね」


「なんでぇー どうしてなの? お母さん?」と、私は食い下がったが


「どうしてもなの! お母さんは嫌なの! そんなことより 水澄 夏休みになったら、直ぐに合宿でしょ! 試合の代表選考もあるんでしょ 頑張んなきゃーね」


「うん なんだけどね まだ 代表は無理」


「でも 目標に向かっていくのが 水澄じゃぁない 当たって砕けろよ!」


 と、話を逸らされてしまった。部屋に帰ってお兄ちゃんと


「よっぽど 何かあったんだろうなー 正月からだ 何が気に入らなかったんだろうか 急に水澄に太子女学園に行けって言い出したり とにかく、水澄と翔琉が逢うのを避けさそうとしている」


「お兄ちゃん・・・ 私 ・・・卒業して、春休みにね 翔琉と お互い裸になって抱き合ったの それがお母さんにバレて・・・いけなかったのかしら まだ私等 早すぎたのかなー・・・それで、もう 付き合っちゃぁダメってー」


「はっ お前等・・・ したのか?」


「したってぇ? あっ 抱き合っただけだよ 私達 まだ・・・ 私はあそこの毛 揃ってなかったから、それで その前に 翔琉に私の全部を覚えていて欲しかったからー」


「そうかー ちくしょう 翔琉の奴 俺の可愛い妹を・・・裸の水澄を抱きしめて・・・」 


「だって お兄ちゃん お風呂に誘っても、一緒に入ってくれなかったヤン」


「それはなー もう・・・お前の・・・眩しいと思うからー」


「私は 平気ってゆうてたヤン 今でも 平気やでー 今から 入ろーか?」


「あほっ 出来るかー そんなことより 翔琉とのことや お前と裸のことなんか お母さんは知る訳が無いと思う もっと 別の理由があるんだ きっと 生活の世界が・・・なんて こじつけだよ」 

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