5-4

 金曜日の朝。駅に行くと、翔琉が待っててくれた。


「おはよう 日曜な 試合も無いねん 逢われへんかぁー?」


「日曜・・・」


「なんや あかんのか?」


「・・・お洗濯、掃除・・・草むしり 言われてんねん」


「なんやねん それっ! 家政婦か?」


「う~ん・・・ お母さん 働いているからー」


「ほんでも 水澄も学校に行ってるし、クラブも・・・」


「お母さんは、私の為に働いてくれてるし・・・いつも、私の為に・・・お母さんの言いつけには逆らえへん」


「じゃあー こんな風にしか 逢われへんってことか?」


「あのなー 本当は・・・お母さん 翔琉の家にも行ったらあかん 翔琉とも 会うなってー」


「なんやねん それ!」


「あんなぁー 太子女学園に行ってるんやから 男女交際は考えなさいって 特に この辺りの子とは 付き合うなってっ ちゃうねんでー 私は、皆とは仲間やから ず~っと大切にしたいねんでー」


「へっ ここらの奴等はガラ悪いからってかー お嬢様学校やからなー 水澄は」


「そんなんちゃうと思うけどー お母さん 変わってしもーたんよ でも 私 お母さんには 逆らえないんやー 理由を聞いても はっきり答えてくれへんねん きっと 訳があるんやー そんでも 私は 翔琉のことが好きなんは変わらへんでー いつでも逢おーて居たいモン 皆とも・・・」と、涙が出そうになって


「わかった 泣くなよー まぁ しばらくは こうやって 逢いにくるよー しょーがないよ 俺も水澄に惚れてるからな」


「ありがとう 翔琉 逢える時 なんとか 時間作るようにするから」


 別れて、電車が来て乗り込むと、香ちゃんが


「水澄 どーしたん? 眼が赤いよー 彼と喧嘩した?」


「うぅん ちゃうけどなー 私は 悲劇のヒロインやねー」


「何ゆうてんのん そこそこ可愛いし、卓球部の次期エースやって言われてるし・・・素敵な彼氏もおるんやろー ウチからしたら 贅沢やー」


「あのなー 今 香がゆうたん 全部 中途半端なんやー それとぉー そこそこ可愛いってなんやねん!」


「まぁまぁー 可愛いよっ! あとは これからの水澄の努力次第やー なぁ 竹通一真さんって知ってる?」


「えっ ええ まぁ」


「ウチとお母さんが行ってる歯医者さんの息子なんやってな お母さん同士が仲良かってな 彼のお誕生日祝いに、集まってくれないかって 水澄も・・・ どうも、彼は友達居なくって、勿論 彼女も・・・ だから 女の子を集めたいんだって! だから 水澄の話出たらしい 一度 デートしたことあったんだって? じゃぁ 水澄だけでいいんじゃあないって思うんだけどー 我儘な話よねー しょうもない男?」


「あぁー でも 塾が忙しいとかで・・・ あれから 会っていない でも、背が高くて、感じ良い人よ」


「へぇー じゃぁー 何で 途切れちゃったの?」


「だからぁー 塾が忙しいとかで・・・」


「ふ~ん でも 息抜きも必要よねー ねぇ 水澄の好みじゃぁなかったの? だって陽光学院で医学部志望よー 条件はバッチリじゃぁない 顔が悪いとかー 意外とスケベーやったとか」


「そんなことないよ スッキリとした端麗な顔立ちで 優しいのー きっと 香も気に入ると思うわ」


「へぇー じゃぁー ウチがアタックしてもええん?」


「どうぞー お好きなのならー」私には、やっぱり 翔琉が居る。


「そんな突き放したような言い方せんとー 一緒に行ってよー」


「そんなー 私は 誘われもしてへんのに・・・」


 と、言っていたのだけど、一真さんからラインが入って来て(今度の日曜日 僕の誕生日祝い 来てもらえませんか? ぜひとも 久々にお会いしたいです)


 私 少しウキウキしていた。自分でも いい加減な女の子なのだと思った。お母さんに言うと、勿論、行きなさいと賛成だった。その時、私は、可愛らしい女の子のお洋服に期待もしていたのだ。


 お母さんは、紺色一色で襟が白いレースでえんじ色の細いリボンのワンピースを買ってくれた。だけど、当日、待ち合わせた香ちゃんも似たようなワンピースで白地に紺のラインが入ったものだった。


 だけど、ふたりとも可愛い女子のワンピース姿なのだけど、頭は男の子みたいに刈り上げていて、我ながら私は変なのって思ってしまっていた。それでも、こんなに可愛いのん着たの翔琉に見せたいと、チラっと考えていた。


 

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