天の川に架かる夢の架け橋  教師と生徒が紡ぐ笹の葉の誓い

曼珠沙華

第一章 七夕まつりの準備1 佐々木浩二と生徒たち

 六月の朝日が差し込む教室で、佐々木浩二は生徒たちと向き合っていた。

 今日は特別な日だ。七夕まつりの準備を始める日なのだ。


 「みんな、今年の七夕まつりは、いつもと違う特別なものにしたいと思っています。」浩二は生徒たちに語りかける。


 浩二は、教師になって十年が経つ。

 この十年間、浩二は教え子たちと共に多くの思い出を作ってきた。

 しかし、今年の七夕まつりは、これまでとは違う特別なものにしたいと考えていた。それは、ある一人の生徒のためだった。


 生徒たちの好奇心に満ちた瞳が、一斉に浩二に向けられる。


 「先生、特別って、どういうことですか?」


 花織が手を挙げて尋ねた。長い黒髪が陽光を受けて艶めいている。

 花織は、美術部に所属し、絵を描くことが大好きな明るい少女だ。


 浩二は微笑み、答える。


 「それは、みんなで力を合わせて、ある生徒の夢を叶えるということだよ。」


 教室に、期待に満ちた空気が流れる。生徒たちは、わくわくした様子で、浩二の次の言葉を待っていた。


 「その生徒って、誰なんですか?」


 剛が、興味津々な様子で質問した。剛は、野球部のエースで、仲間想いの頼れるリーダーだ。


 浩二は、一人ひとりの生徒の顔を見つめながら、語り始める。


 「七夕まつりは、織姫と彦星の物語を思い出す特別な日だけど、同時に、私たち一人ひとりの夢を見つめ直す機会でもあるんだ。」


 生徒たちは、真剣な眼差しで浩二に耳を傾けている。


 「みんなの夢は、それぞれ違うかもしれない。でも、その夢に向かって頑張ることの大切さは、みんな同じなんだ。」


 浩二の言葉は、生徒たちの心に静かに響いていく。


 「先生も、みんなの夢を全力で応援したい。そして、今年の七夕まつりでは、ある生徒の夢を、みんなの力で叶えたいと思っているんだ。」


 教室が、希望に満ちた空気に包まれる。

 生徒たちは、まだ詳しいことは知らないが、特別な七夕まつりへの期待で胸を膨らませていた。


 「先生、その生徒は、私たちのクラスの人なんですか?」


 真希が、そっと手を挙げて尋ねた。

 真希は、いつも物静かで、皆のために尽くすことが多い優しい少女だ。


 浩二は、生徒たちの瞳に宿る希望の光を見つめながら、心の中で誓う。


 「そうだよ、真希。その生徒は、私たちのクラスの大切な仲間なんだ。」


 浩二は、静かに答えた。そして、生徒たちに向かって、力強く宣言する。


 「みんなの力を合わせて、必ず、その生徒の夢を叶えてみせよう。七夕まつりを、最高の思い出にするんだ。」


 「おー!」


 生徒たちの歓声が、教室に響き渡った。


 こうして、特別な七夕まつりに向けた準備が、静かに始まったのだった。


 真清田神社は、一宮七夕まつりの主要な主催者として、長年にわたり祭りを支えてきた。

 その歴史は古く、神武天皇の時代にまで遡ると言われている。

 浩二は、そんな由緒ある神社で行われる七夕まつりに、生徒たちと共に全力で取り組もうと心に決めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る