那珂川の月

那珂川の橋の上で僕らは空を見上げた

現実が虚しいと確認する為に


長い髪をあごひげに絡ませたまま

早々と旅立ってしまった彼のように

月は遠いところにあって魔力を振り撒いていて

届かないところに居る僕らの苛立ちをせせら笑う


虚しい時間を共有している友がいる事だけが

唯一支えであった日々

翼を手に入れられない僕らはただの臆病者なのか


切符は誰しもが持っているというのに


エレキギターをこよなく愛した彼は

電気の翼と目覚まし時計の針が

常に切り札で、心の支えだった


夏の月を罪深くしてしまった僕は

彼の背中の翼を撫でた、その手のひらで

まるい月を鷲掴みにする


壊れた時計を優しく包むように

針を逆回しに出来ないと知っていても


となりで那珂川の月を見上げる友は

いつものようにニヤリと笑う


現実は虚しいと知って居るからだ

僕はいつも、その顔をみて確認するんだ


夜はいつもやさしい

いつも傷を隠してくれる


月はいつも照らしてくれる



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