いらない魂、回収します

あかいかかぽ

序章 家 1

「うわー、懐かしい。古雑誌の匂いがする」

「ただいま~、でいいよね。昔、住んでたもんね」


 孫たちが帰ってきた。ポップコーンが爆ぜるような賑やかな声。わたしはいそいそと玄関に迎えに行った。


「おかえり、待っていたよ」


 幸太郎こうたろう穂乃果ほのかの兄妹。

 よく覚えているのは中学の制服姿だが、見違えるように立派な大人になった。もう十年以上も経つのだから当然か。


「やっぱ、なんも変わってねえ」


 幸太郎は左胸を手でかばうようにしながら部屋を見て回る。背は高くなったが厚みは薄くなった。乾燥してひび割れた土壁みたいな顔色が気になる。

 穂乃果は大きなかばんを運び入れるのに手間取っている。


「好きな部屋を使いなさいね、二階は全部あいているから」


 とは言ってみたものの、狭い階段を上がるのは難儀するだろう。古い家だから段差が多いし、階段の勾配こうばいもきつい。手伝ってあげたいがかえって邪魔になると思い、遠慮した。

 あの子達の好きなものはなんだったろう。羊羹と緑茶ははたして喜んでくれるだろうか。夕飯はカレーライスかハンバーグがいいだろうか。

 そうそう、ハンバーグがのったカレーライス、二人の大好物だったはず。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る