第27話 ざまぁの時③魔力暴走の真相

*--


「いよいよ期待の若手の魔力開通の儀式ですわね」

「はい……。王国はじまって以来の魔力量を誇るカイゼル公爵のご子息の儀式です」

会話しているのは……ずいぶんと若い頃の王宮魔術師長と、もう1人は誰かわからないが女性ね。

けれど、会話内容でどれくらい前の記録なのかはすぐに分かった。

10年ちょっと前。


間違いなくアッシュのことを話している。


「鼻高々でしょうね。国王陛下からの期待も一身に受け、娘と婚約した男のことが」

ずいぶんと妬みがこもった発言だ。

そして記憶のオーブの映像にその女性の姿が映る……。この場の貴族たちが息を飲んだのがわかる。


「いいわね。魔力発現の際に……」

「わかっております。お任せください」

「全てはこの国のため。お家騒動など起こしている場合ではないのですわ。次の王はアレクサンダーです」

「はい……」

言いたいことを言い終わったのか去って行く女性の方を見つめる王宮魔術師長。

そこで映像は終わった。

 

*--


まさか……。


王宮魔術師長はさっきよりもさらに肩を落として震えている。

王太子は何のことかわからないようだった。


「申し開きはあるか?メイレーン」


そんな中で国王陛下は女性に問いかけた。

彼の妃である女性に……。


「申し開きとはなんでしょうか?今の記録ではわたくしは雑談に供していただけですわね?」

国王陛下に尋ねられた王妃メイレーンは、全く悪びれもせず答えた。


「『魔力発現の際に……』なんと言おうとしたのだ?」

「嫌ですわ、陛下。あんなことが起こったから、陛下は誤解されているだけですわ」

問い詰められても誤魔化す王妃……。


確かに確定的なことは言っていない。

これは彼女たちの常とう手段だ。


証拠になるようなことは何も残さず、何も言わず、それでいて望むものを得ていくやり方。

今回の件も、自らの発言を勝手に勘違いして王宮魔術師長が行動したという風に持っていこうとしているのは明白だ。


「では、レゼシア公爵に問う。これに申し開きはあるか?」

「……何のことでしょうか?」

しかし王妃様の意向とは違ってレゼシア公爵も白を切る方向に舵を取ったらしい。


王妃が一瞬もの凄い視線をレゼシア公爵に向けた。


「余はこれまで記憶のオーブを見ずにいたのだ。ラフィリアは良い子だった。その死を振り返るのを避けた。許してほしい。だがもう断ち切ろう。企みはもう十分だ」

一方で国王陛下は悲痛な面持ちで呟く。


まさか魔力暴走の場も撮っていたのでしょうか?

撮っていたのでしょうね……公爵家の嫡男の儀式なら。


*--


「では儀式を始めましょう。あぁ、ラフィリア様もフィリス様もそのままで結構ですよ」

普通、魔力開通の儀式を行う際には万が一のことを考えて人は遠ざける。近くにいるのは介助する魔術師だけのはずだった。


「うん、そう。魔力を通して……」

そうして王宮魔術師長はアッシュに魔力を放出させる。

 

「なっ……なにを?」

しかし慌て始めるアッシュ。彼の腹部に触れている王宮魔術師長がなにかしたのは明らかだ。

記録映像で彼の魔力がアッシュに入るのが見えた。

私の出番ということ。

これがアッシュの言っていたことの違和感の正体だったのね。

魔力暴走は引き起こされたものだった。


*--


「王宮魔術師長は、魔力を通すアッシュ様の腹部に自らの魔力を注いでいます。映像を見返してもらえばわかると思いますが、彼がアッシュ様の腹部に手を添えた瞬間から周囲に魔力が溢れ出しています。使った魔法はパラノイズでしょう」


その魔法は、魔術師による魔法の行使を阻害する魔法だ。

これを受けると熟練の魔術師でも魔法を暴発させるか、行使に失敗する。


はじめての魔力放出の際にこんな魔法をかけられたら、魔力の放出を止めることができなくなる。


私は落ち着いて冷静に語った。




「王妃様からの命令に基づき、私がアッシュ様の魔力開通に介入して暴走を引き起こしました。敵対する側室のルフェナ様およびクリス王子にもダメージを与えるためです。クリス王子派からカイゼル公爵を離反させるための策でした」


観念したのか、王宮魔術師長は自白した。

王太子と王妃は何かを叫んでいるようだが、王宮騎士に扮したアッシュの魔法によって彼らの声は周囲に届かない。



***


全ての断罪が終わり、王太子と王宮魔術師長は"黒き魔の森"へ幽閉された。

王族殺しの実行犯だから処刑でもよかったんだと思うけど、あえてアッシュと同じ措置が取られたようね。

アッシュは抜けれたけど、彼らが抜けられることはないわ。


王妃様は神殿に入り、王妃としての身分を失った。


代わりにクリストファー王子が王太子となり、ルフェナ様が正妃となった。


カイゼル公爵はクリストファー王子の強力な支持者の1人として派閥に戻った。

 


しかし、アッシュはカイゼル公爵家には戻らなかった。


なお、記憶のオーブは実はアッシュが作っていたらしい。

王妃様や王太子、王宮魔術師長の頭を勝手に探って映像を取り出したとか、怖すぎるのよ。

身に覚えがないことは取り出せないよ?とかきょとんとして言い張るアッシュに戦慄を覚えた……。



***

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