第87話 新しいウサギ 4
「嘘やおまへんで、なんや最近偽物もおるみたいやけど、わてが本物どす」
本物どすって、恵ちゃんがそんな言い方してるの聞いた事ないぞ。
問答無用で戦闘が始まる。
まずは取り巻きを排除をパルとピノに、時間稼ぎをノバにお願いする。
ドンは俺の守り、コロは装備状態のままだ。
「まだまだでんなぁ」
こちらの体制が整いきってない隙を突かれて一瞬で背後を取られた。
恵ちゃんほどじゃ無いけど、コイツも素早い。
だが、恵ちゃんと違って、何かスキルを使った気配がした。
恵ちゃんは、ナチュラルに目で追えないけど、偽物は途中まで目で追えてた。
俺の首に鎌の刃が届く。
首筋に鋭利なものが食い込む感触がした。
『時の巻き戻し』
キッチリ30秒前まで戻ってもらう。
危なかったぁぁぁぁ。
コロ装備してて良かったー。
そして、その場所にあらかじめ向かっていたノバが体当たりを喰らわす。
「ゴファ!巻き戻し使わしたでぇ」
ノバに一撃喰らいながら不敵に笑う。
タフだなぁ、しかもこっちの情報しっかり持ってるな。
偽物とはいえ、恵比寿って名乗ってるだけある。
取り巻きは即死対策してなかったのか、あっさり倒せた。
ピノとパルも偽恵比寿の攻撃に回す。
パルの攻撃にあまり過敏な反応してない所を見ると、自分だけ即死対策してきたな。
せこ!
最初から取り巻きは時間稼ぎ程度にしか使うつもり無かったなコイツ。
てことは、あれか、さっきの一撃は割と渾身の一撃だったんだな。
でも、まだあるはず。
俺に事調べてきてるなら、絶対もう一つはあるはずだ。
偽恵比寿に細心注意を払う。
まだピノは怒髪モードにしない。
魔法を放って牽制して欲しいからだ。
接近戦をノバにさせて、中距離からパルに援護、遠距離でピノ攻撃が基本で、パルとピノが急に接近戦を仕掛けて牽制したりしてる。
1対3なのに器用に受け流したり回避してるのを見ると、偽とはいえ恵比寿って名乗れるくらいには強いんだな。
割とおっさんだけど。
「ここや!」
ボーッと眺めてたら、また何かスキルで加速して俺に向かってきた。
俺を倒せば終わりってわかって居るんだろうな。
でも、流石に俺だって本当にボーッと眺めてた訳じゃ無いし。
『時の停止』
俺は二つ目の切り札を使う。
動かなくなった偽恵比寿を一斉攻撃だ!
ドンは念の為俺を守ったままな。
もちろん、俺が参加しても誤差程度のダメージだろうから、参加するのはノバ、パル、ピノだ。
でも、俺の情報集めてきているなら、これも何か対策してるよな。
時の停止が解除された瞬間一斉攻撃のダメージが偽恵比寿に降りかかるが。
「グファァァァァ!」
攻撃されてた場所に残像のようなものが残って、偽恵比寿は後ろに弾き飛ばされた。
「わてのとっておきや!これで停止も弾切れでんなぁ!」
転がって這いつくばったような状態だが、勝ちを確信した顔で笑う。
ノーダメってわけでは無いようだけど、ほとんどのダメージが防がれたようだ。
多分、身代わりみたいな能力?
「あんさんの切り札はコレで終いでんなぁ!
ほならここからは、わての独壇場でっせ!」
そういうと幾つかスキルを使ったようだ。
いや、スキルっていうより、何かアイテム使ったのかな?
どっちでも、あんまり変わらないか。
明らかに体格が変わった。
何かのリミッターを解除したように見える。
切り札の無い俺を削り切るのに向こうも出し惜しみなく攻撃してくるつもりなんだろう。
「ほな行きまっせぇぇぇぇ!こっからはずっとわてのターンやぁぁぁ」
『始まりの刻、終わりの刻』発動。
人間の経験値って高いよね。
おかげでノバの『始まりの刻』と『終わりの刻』が未覚醒から解放された。
このスキルは二つ同時に使わないとならないスキルだ。
効果は、戦闘中の一部を切り取り再生する。
リアル世界で動画編集してる感じになる。
そして俺が選んだ部分は。
「グファァァァァ!」
攻撃されてた場所に残像のようなものが残って、偽恵比寿は後ろに弾き飛ばされた。
このシーンだ。
そして偽恵比寿が這いつくばってる場所にはノバ、パル、ピノが待ってる。
もちろんピノには神鬼降臨と怒髪を発動済みの状態だ。
転がってる偽恵比寿に一斉攻撃だ!
「グファァァァァ!まだやまだ終わらん!」
またあの残像みたいので凌がれた。
でもね。
こっちもまだなんだよね。
「グファァァァァ!」
攻撃されてた場所に残像のようなものが残って、偽恵比寿は後ろに弾き飛ばされた。
そう、このスキル複数回繰り返せるんだよね。
今の所二回だけど、多分もっとレベル上がったら、この繰り返す効果は増えると思う。
そういう確信がある。
「グェアァァァァ」
残像はもう弾切れだったんだね。
惜しかったね、もう一回凌げれば勝てる可能性あったかもしれないのにね。
このスキルもやっぱりクールタイム長いな。
そして、やっぱり。
ニンゲンケイケンチオイシイ。
【後書き】
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よろしくお願いします。
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