第45話 クリスタルダンジョン

「俊輔さん、聞いて良いですか?」

 背が低いので朱里ちゃんがナチュラルに上目使いになる。

 可愛い女の子の上目使いは、なかなかの威力がある。


「ん、お、おう、どうしたの?」

 ちょっと動揺してしまった。

 朱里ちゃんにバレて無いよな?


「今回の報酬、生涯賃金の平均値超えてますから、このまま辞めて悠々自適に生活するって選択しなかったの何故かな?って」


「んー、言われてみればそうだね、その選択肢は無かったから全然考えてなかった」


「え?無かったんですか?」


「やっぱり、探索者になったんだからもっと上を目指したいってのあるし、何より楽しいしね」


「え!俊輔さんって探索楽しんでるんですか!?」


「ん?どういう事?」


「あ、いえ、いつも感情が表に出ないっていうか、表情に乏しいっていうか、仕方なくやってるのかなって…」

 だんだん声が小さくなって、最後の方はよく聞こえなかった。


「そういう風に見えてたの?」


「はい…すいません」


 確かに、俺は感情表現乏しいかもな。

 日頃人と話さないから、表情筋とか動かさないもんな。


 恵ちゃんくらいやったほうが良いのかな?

 でも、あれはあれで無理してる気がするんだよなぁ


「ん?なんや?うちになんかついとる?」

 恵ちゃんが小首を傾げる。

 可愛い。


「ところで朱里ちゃん、ここのダンジョンの特徴とかの説明聞くの任せたけどちゃんと出来た?」

 本人の希望でダンジョン潜入前の雑務を朱里ちゃんがやることになった。

 それくらいしないと、罪悪感が出ると言われた。

 装備はいたく気に入ったらしい。


 良い子だよなぁ。


「はい、正式名称は水晶洞窟ダンジョン、通称はクリスタルダンジョン。

 最下層は5階ですが、5階はボスしか居ないフロアなので実質4階のEランクダンジョンです。

 モンスターはクリスタル系のゴーレムで、ドロップ品はクリスタル、アメジスト、シトリンなどの水晶系も鉱物が出ます。

 ゴーレムはタフなので倒すのに時間がかかるのと、水晶はあまり高額では無いため人気のないダンジョンです。

 魔石は同じランクよりも大きいですが、倒しづらいのでそこまで美味しい相手では無いというのが一般的な見解です。一般職の腕輪はボスのレアドロップ品です。

 ごく稀にさらにレアな2人分を軽減する腕輪も出るそうですが、一般職を2人連れて行くパーティは稀ですので、ドロップ率の割に人気がありません」


「なるほど、ためになった!

 よし!じゃあ早速ダンジョンに潜ろうか!」


「はい!」


 3階層まで来た。


「なんか、うちの子達サクサク倒してるけど、本当に倒しづらい?」


「ノバちゃん達が別格で強いんですよ、もうこのランクのモンスターじゃ太刀打ち出来ないですね」


「割とランク詐欺だもんなぁ、同じランク繰り返したり下がったりしたしなぁ」


「スキルも強いですしねぇ」


「ところで、ここまで来るまで、すれ違った探索者から凄い視線感じたんだけど」


「俊輔さん有名ですからねぇ」


「そうなんだぁ………えぇぇっ!俺有名なの!?」


「そりゃあ、ダンジョン1つが完全に協会の管理下に置かれるくらいの発見したんですから、有名になりますよ。

 それにぃ…」


「ん?なに?なんか含みあるけど」


「私のあげた動画、バズっちゃったんですよね」


「動画?なんの?」


「俊輔さんが生意気な護衛の人たちを制圧した時の」


「あぁ、あれ!バズったの?」


「ええ、それに元々ゴブゴブさんの動画でウサギだけのやつもあって、それもバズってましたし、この辺じゃかなり有名人になってると思いますよ」


「そんなこともあるんだねぇ、まぁ、すぐに忘れられるだろうけどね」


「だと良いですけどねぇ」


「そんなにそんなに話題になる物見つけられないって」


「一応ここにも話題になるかもしれないくらいには謎なものあるんですよねぇ」


「あ、そうなの?今まで未発見なものを発見できるって、やっぱり興味あるよね」


「行ってみます?クリスタルダンジョンの信号機に」


「信号機?なんかダンジョンと全然雰囲気あってないんだけど」


「あ、そういう通称なだけで、本当の信号機じゃないですよ」


「あ、そうなんだ。

 うーん、行ってみようか?面白そうだし」


「じゃあ、2階に戻りましょう。

 上の階から順番に見ていきましょう」


 軽いノリでクリスタルダンジョンの謎に挑戦することにした。

 さて、どうなるかなぁ。

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