第28話 背後霊
時は遡って昨日の放課後、俺は美月たちと一緒に教室で居残りしていた。朝のSHRで進路志望調査票が配付されたのを受けて、進路のことを話していたのだ。
「じゃあ、美月と天乃っちは同じ所にするんだ」
「うん、陽翔が一緒に行くって言ってくれて…、ね?」
「付き合って1年もしないうちに別々の高校って言うのもね。どうせなら専願にしようと思ってる」
(ツンツン♡)
「おー、やるねー彼氏。でも、あそこは難関だよー?」
「この間の模試で合格ラインは越えてたから、気を抜かなければ大丈夫じゃないかな」
(ムニムニ♡)
「すごい、天乃くんって、そんなに成績良かったんだ」
「まあそれなりには、もちろん美月には敵わないけど」
「美月は模試、1位だもんね。天乃くんは何位だったの?」
「俺は15位」
「うわっ、訊かなきゃ良かった」
(フ〜ッ♡)
「ところでさー天乃っち、その子、いつまで放っておくの?」
美月と仲の良い三人組の一人、
「これは背後霊みたいなものだから、気にしなくていいよ」
「いえーい、背後霊でーす♪」
「「「渾身のダブルピース?!」」」
賢明な読者の方は既にお分かりだと思うが、この時、俺の背中に貼り付いて悪戯していた背後霊の正体は森宗香澄であった。彼女は俺たちが話し始めてすぐに音もなく俺の背後に忍び寄り、ガバッと覆い被さってきたのだ。
こんな時、普通なら振り払ったり、場合によっては力ずくで教室から追い出してしまうところだが、それをすると後々面倒なことになるのは目に見えているので、取り敢えず皆に頼んでシカトして貰っていた。しかし、そろそろそれも限界のようだ。
「香澄、俺に用が有るんだよね。ひょっとして進路のこと?」
「そ、陽翔がどこに行くのか訊こうと思って」
「言っとくけど、俺は本気だよ?」
「うーん、だから困ってるんだよねー」
香澄は俺の背中に体を預けたまま、陽気な雰囲気から一転、ため息を吐いて項垂れてしまう。俺の頬をくすぐる髪の毛から、彼女がいつも使っているシャンプーの香りがふわりと広がった。
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