第36話

「ハアッーー」


ズバッーードババッーー


「フンッーー!!」


ガキィンーー!!


ユウキの短剣と、《魔将十傑》ロブルスの魔剣が交わる音が、ダンジョン内に響き渡るーー。


「そもそも何でコイツを狙うーー!?お前らにとってポピィは何だ!?」


「フッーー、ユウキ。君が知る必要は無いーー!!」


ガキィン、ドガッーードゴォンッ!!


二人の激しい鍔迫つばぜり合いを、ただひたすらに傍観するしかないセシリアだった。


「ユウキさん……」


先程〝邪竜バルトロス〟との戦闘で〝上級魔法〟《闇黒消滅魔法》を使ったセシリアは、反動で体内に残留する魔気がほとんど残っておらず、息をするのがやっとの状態だったーー。


「ポピィさんーー私は、どうしたらいいのでしょうか?」


自分を信じ、一緒に行く事を決意してくれたポピィーー。


ポピィもまた先程〝邪竜バルトロス〟との戦いの際に《上限色覚》を使った反動で意識を失っていた……。


「きゅうぃ〜(大丈夫〜?)」


「スライムさん……大丈夫ですよ!私は元気です!!それより、今の私達ではユウキさんの足を引っ張ってしまいます。だからーー私は今のうちに私のパーティーメンバーの人たちを探してこようと思うのですが……ポピィさんを見ててもらってもいいですか?」


フラフラの体で立ち上がるセシリア。


それを見たスライムはーー。


「きゅいっ!!(任せて!!)」


飛び跳ねて元気良く返事をするのだったーー。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



『聞こえますか……⬛︎⬛︎⬛︎様?⬛︎⬛︎⬛︎様ーー!!』


あれーー帽子を被ったこの少年……誰だろう……?見たことがあるような気がーー。


夢でも見ているようなーー不思議な空間。


ここは……どこなんだろうか?


『オイオイやめとけってーーどうせ昨日も⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎さんと夜倒し酒でも飲んで盛り上がってたんだろう?ここ最近ずっと忙しかったんだし……無理矢理起こすと⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎にこの前みたいにボコボコにされちまうぞーー?』


ドワーフみたいな少し小さい……でも威厳のあるおじさん。まるで、お祖父様みたいーー。(ドワーフじゃないけど……)


この人たちはーー誰?


私を……呼んでいるの?


『でもさ〜、今度の〝戦争〟も⬛︎⬛︎⬛︎様の案抜きでやるわけにはいかねーじゃん?まあ俺は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎のジジイに負ける程弱かねぇけどな?』


額に傷のある少年ーー。この子もどこかで見たような気がーー。


『誰がジジィだーー!まだ900年足らずしか生きておらんわ!!』


これは……私の記憶?それともーー


『あー!主しゅ様起きたみたいだぜ!まったく……酒弱ぇんだから程々にしとけよな〜』


銀色の髪に、動きやすそうな格好の女の子ーー。やっぱりどこかで会った気がする。


『⬛︎⬛︎⬛︎様ーー。そろそろ会議を始めましょう……。華麗様が魔族と手を切ってくださった今が、絶好のチャンスです』


エレク……?違う。髪色も瞳の色も見た目もそっくりだけど、どこか雰囲気が違うーー。


『オイオイ……《ソード》の旦那〜、主様にだけはずいぶんと媚を売るような言い方じゃねぇか〜?オレらに対してはいっつも文句を言ってやがるクセに……』


『ふんっ!!下僕たるもの、主に忠誠を誓うのは当然の事ーー。どこぞの《賢者の石》に手を出す不届きな〝盗賊女〟なんぞに敬意を待ち合わせてはいないーー!!』


『ほうーー!?オメェ……オレとやり合いてぇのか……?《聖剣士》の坊ちゃんがよ〜?』


『望むところだーー!表に出てその〝薄汚れた心〟を叩き直してやる!!』


この人たちは何を言っているの……?


主様って……誰?


『全く……ここはいつも騒がしいね〜、⬛︎⬛︎⬛︎様ーーお早うございます。お見苦しいお目覚めで申し訳ありません……』


『げっーー!!⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎の姐さん!!』


『あなた達……程々にしておかないと、また〝お仕置き〟するわよーー!!』


紫色の髪に、紫色のフード……。セシリア……?違う。セシリアよりも少し年上な感じーー。…………色々と。


『ご主人様ーー、ここ連日皆さんの武器を手入れしたり、御自ら下の子達を指導してくださったり、他のお偉方との会談続きで疲れておいででしょう?ほら、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎特性ーーご主人様の大好きな〝アップルミルクティー〟ですよ〜♪』


髪と瞳が金色の、小さい女の子ーー。まるで絵本に出てきそうな……お人形さんみたいな女の子。


ご主人様ってーー誰?私?


そもそもここは……どこなんだろう?


騒がしく談笑しているこの光景ーーまるで……懐かしい〝前世の記憶〟のようなーー。


私が見ているこの景色は……一体何なのだろうか?

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