社畜ぼっちが会社を辞めたら3人の美女たちからモテ始めた件。そしてVTuber活動を始めたら3人の推しからコラボを求められて、同時に美女3人の様子もおかしくなったんだが……!?

綾咲 響真

プロローグ

「やっと終わった……自由だ!」


 会社を出て、人のいない通路で安達あだち れんは夜空に向かって叫んだ。


 新卒で入社してから5年、毎日やりがいもなく鬱々と満員電車に揺られる日々。しかし今日、会社を辞めて蓮は苦しい日々から解放されたのだ。


 ぼっちの蓮には、退職後祝いの飲み会に誘ってくる人間もいない。形だけの挨拶を済ませてさっさと会社を出た。


(黒瀬先輩は急遽出張に出てて挨拶出来なかったけど……まぁこれでよかったのかもな、あの人絶対俺のこと嫌いだし)


 蓮には入社してすぐの教育係になった上司がいた。


 最初こそ、こんな美人な女性が上司なのかと心を躍らせたものだが……彼女の俺に対するあからさまな塩対応と辛辣な言葉を受けているうちに、1ヶ月もたたず蓮は思った。


 ――この人、俺のこと絶対嫌いなんだろうな……と。


 そして、無駄な淡い期待を抱くこともやめた。


(まぁ、こんなこともう考えなくていい。今日はなんか美味いものでも買って、久々に酒も飲むぞ。で、明日からは自由な日々を送って……憧れだったVTuber活動も始めるんだ!)


 これからの生活に胸を躍らせながら、蓮は駅へと入って行った。


 #


 最寄り駅で降りると、蓮は住んでいるアパートの近くにあるコンビニへと向かった。


 弁当につまみ、そして缶チューハイもカゴに入れていく。


 普段は自炊をしていて、お酒もあまり飲まないようにしている蓮だが、今日は特別に自分を甘やかそうと決めていた。


「あい~、いらっしゃいませー」


 金髪で、いかにもギャルって感じのダルそうにしている女性店員にお会計をしてもらう。ネームプレートには星宮と書かれている。


(この美人な店員さん、まだここで働いてたんだ……確か、1人暮らしを始めたばっかりの頃ここで――おっと)


 考え事をしているうちに会計が終わる。蓮は思考を中断して、自動レジにお金を投入していく。


 ギャルの店員さんから商品が入った袋を受け取り、コンビニを出た。


 #


 蓮の住んでいる部屋は2階にある。アパートの階段を登ると、ちょうどお隣の女子大生、小夏 美緒も部屋に入るとこのようだった。


「こんばんは」


「あっ、安達さん! こんばんわ~」


 彼女は蓮に気が付くと微笑みかけて、ひらひらと手を振ってくる。軽く会話を交してから、それぞれ自室へと入って行く。


(ほんと愛想がいいし、可愛い人だよな。俺も大学でこんな美女と出会ってたら、なにか変わってたのかな……)


 蓮は大学でもぼっちで、基本ひとりで講義を受けていた。


「って、そんなこともうどうでもいいや。まずはお風呂に入って晩酌だ!」


 蓮は入浴を済ませると、弁当と缶チューハイをテーブルに広げて晩酌を始めた。パソコンでは推しVTuberの配信を映し出している。


「やっと、俺の新しい人生が幕を開けるんだ……!」


 #


 このときの蓮は考えもしなかった。


 まさか自分が3人の美女から好かれていて、推しの女性VTuber3人とコラボをすることになるなどと――

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