第29話例のあれ

その後はフェアに抱えられ、ガルガの鍛錬に混ざることにした。


ガルガの筋肉は恐ろしく、フェアとウィリィンが全力で同時に攻撃して、ようやく少し傷が付くレベルであり、ガルガの動きを一切阻害することは叶わなかった。




(かった、ウィリィンと力を合わせてもこれかぁ〜)




だがしかし、二人にとって搦手は得意分野であり、前にも披露した地面を陥没させる方法や、


目、鼻、口といった弱点、と言っても魔力で保護されているため、他よりは効きやすいといったレベルではあるが、そこを狙ったり、デコイをまいたり、出来うる限りの嫌がらせを行った。




(いいぞ、いい妨害だ、普段使っていない感覚が研ぎ澄まされていくのを感じるぞ。いい、もっとだ)




また、ウィリィンがガルガの攻撃を喰らいそうな人に咄嗟に声をかけたことから、俯瞰した視点からの指示がより有効打になることが分かり、2人で戦況を分析して指示出しを行った。


ウィリィンが着けている腕輪には録画機能もあり、反省会を開き、全体の構図や、戦況の動き、指示の良し悪しを振り返った。




(あとは攻撃力か...有効打は増えてきたけど、あまり怯んでくれないんだよな...)




ちなみに酸などを使って筋肉を溶かすなどもやってみたがどこも硬く、再生力も高いので、あまり意味が無かった。


ガルガの筋肉を突破する方法については宿題となった。




その他の進展についてはついに言葉を話すことができるようになってきた。


まだ、口をうまくうごかすことができず、はきはきと喋ることはできないものの、意思疎通を取ることができるレベルに向上した。




「まぁだぅ、うみゃくしゃぁべれぇなぁいぃ」




「ウィリィンかわいいねぇ」




ただ、利便性は魔力を使用した会話の方がまだまだ上であるため、戦闘中や難しい話題をするときは使用を続けていく。






そして魔力を使ってバランスを取って、安定して歩くことも可能になった。




(まあ、仰向けの状態でボールを敷き詰めて移動した方が速いんだけど・・・)




(いつまでもその方法で移動するわけにもいかないし、視線が高い方が色々見えるよ?)




戦闘中や、早く移動する必要のない時はなるべく歩くことにした。




(一歩が小さすぎる・・・)




(よたよた歩いていてかわいいわねぇ。


ほら、焦らなくていいからしっかりバランス意識して歩きなさい)






そして、食事についてついに授乳から、離乳食を食べられるようになった。




(何これ、言葉にならないぐらい美味しいだけど)




(ああ、全て私が狩ってきた食材でできているからな)




(狩る・・・?)




(ああ、ここの食べ物は全て魔物化している。倒せば倒すほど強くなり、おいしい素材になるのだよ)




システムとしては、一度倒すごとに30秒ほど魔物が硬直し、食料として持ち帰るか、再度強く、美味しくなった魔物と再戦することができるそう。




(それで、私が限界まで強くした食材をうちの一流シェフに作らせたのがこれというわけだ)




(美味しすぎる・・・)




(そうだろう?他の食事では味気なく感じてしまうほどにな?)




ウィリィンはこのタイミングでルリウィンの策略に嵌ったことに気付いた。




(これを初めての離乳食で食べさせるなんて・・・)




(また、食べたければ私と同じぐらい強くなるしかないなぁ?


素材の味はどうしても強さに依存するのでな?)




ウィリィンはぐぬぬぬぬとうねりながら、離乳食をうまいうまいと言いながら食べた。


ちなみに美味しかったのは初回だけで、次の時以降は普通の味+毒殺付きになった。




(授乳卒業したら、魂再こんさいの訓練が終了とはなるまい?


まあ、いつでも乳は出るので授乳でも一向に構わんがな?)






そして、離乳食を食べて数日たった頃、ルリウィンに一人行ったことのない場所に連れていかれた。


室内ではあるものの、先がほとんど見えないぐらい草木が生い茂っている。




(えーと、ここどこですか、これから何をすれば良いのでしょう?)




(ここはうちの食料調達場だ、お主が食べている離乳食もここから収穫しておる。)




食料調達の場にしては雰囲気が物々しい。


そしてとても嫌な予感がする。




(さて、お主にはここで3日間生活してもらう。


少し前に大浴場で言っていたかの?例のあれだ。


全て自給自足だ。当然ながら今のお主では到底かなわない魔物もたくさんおる)




(えーと、そういったものに出くわした場合はどうすれば?)




(とにかく離れよ、今回植物系の食料調達場ゆえ、テリトリーの外までは追ってこぬ。


一部の魔物は害意を加えられなければ反応しないものもおる。


それらを見極めてうまくしのげ。では、3日後回収しに来る。行ってこい)




説明が終わると、森の中へと山なりに投げられた。




(ちょっま!?端の方で安全確保しながらしのごうと思ったのにぃぃぃぃ)




(ふふふ、お見通しだ。それに内側にいた方が良いかもしれんぞ?


端の方は距離が近いゆえ、良く狩られる美味しく強い魔物が多いので、投げた地点の方が実は安全だぞ?)




森の中に消えていったウィリィンを眺めながらルリウィンは呟き、調達場を後にした。






その頃、投げ飛ばされたウィリィンの方は、上空でバリアを張り、落下の勢いを殺しながら、森へと足を下ろした。




生存重視で仰向けの状態で背中に球を設置し、いつでも動ける状態にしながら辺りを見渡す。


すると、辺り一面がブドウ畑であった。


ただブドウの果実にはデフォルメされた顔が付いており・・・こちらのことを怒った顔で睨みつけていた。

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