16万回目の選択肢
夢実
ープロローグー
綺麗な白髪の女性がこう言った。
「これがあなたの人生の決断です。この中で10の選択肢をもう一度だけ決断することができるといったら何を変えますか?」
――――――――――――――――――
土曜日AM7時。ピロンッという音で目が覚める、LINEがきた。
「なんだ?」
寝ぼけ眼を擦り、必死に暖かい布団から腕を伸ばす。
外気に触れている鼻は、寒さで凍ったようで、すぐに暖を取るように伝えてくる。
「さむっ……」
鼻を啜る音と共に思わず声が出てしまった……まずい。
「なにっ……うるさいなぁ」
やってしまった。土曜の朝に開戦の合図をしてしまった。
「ごめんね……起こしちゃったよね……」
終戦に向けて早速先手を打つ。
「朝から静かにしてよね、ほんと……」
スゥーという寝息と共に終戦したのがわかった。わずか5秒である。
なんだと心でつぶやきながら携帯をしたから上に撫でると、LINEが来ていた。
「話したい事があるんです。」
(うんっ?なんだこの連絡、誰だ)
焦点の合わない目で画面を見つめる。
(美桜?うん?あっ、美桜さんか、)
会社の後輩である「みお」さんは、僕と共に二人三脚で仕事をしている笑顔が素敵な後輩である。
何かあったのかな?と思いながら、ぼーっとした頭で短文の返信をした。
「どした?」
すぐにピロンっとまた音が鳴り、携帯の音を消していないことに気づく。
「うんっ?」
思わず声が出てしまった……やらかしたか。
隣のスゥーという寝息で、安堵しながら画面を見るとそこにはただ一言。
「私との過去はないですか?」
随分よくわからないことを言うな、とおもいながら目を瞑ってしまった……寝てしまっていたのだ。
思えばこれが、自称神の『ミコト』との出会いだろう。
あの夢は鮮明に覚えている真っ白な世界に大きな椅子。
そして石板のようなものが浮いている世界そこには大量の文字が書いてあった。
そして椅子には綺麗な白髪の女性が。彼女は言った。
「これがあなたの人生の決断です。この中で10の選択肢をもう一度だけ決断することができるといったら何を変えますか?」
なんのことやらよくわからんが、とにかくこの綺麗な人とここはどこだ?
「もう一度問います。あなたには10の選択をもう一度だけやり直す機会を得ました。もちろん変えなくても結構です。いかがいたしますか?」
「はぁ、まあやり直したいことはいっぱいありますが。」
咄嗟に何も聞かずに質問を答えてしまった。
「ではこちらに書いてある決断の板から変えたい選択肢を選んでください。」
よくわからないまま、巨大な石板に目をやると、そこに苦い選択が。
「仮想通貨に投資100万円。 → YES」
あの時の気持ちが蘇る。スギウラめ。
同僚のスギウラにそそのかされて投資し、莫大な損をした選択肢だ。
「うーん、なんだかよくわかんないけど、まずはその仮想通貨投資をNOにしてくれよ」
「わかりました。また明日の明け方にお会いしましょう」
そう言われると目が覚めて、布団の外はまだ寒いが、コーヒーを淹れにリビングへ向かう。
お湯を沸かしながら、綺麗な人だったな、と回想している自分に驚いた。
夢の内容が鮮明に覚えている。人生でこんなこと今まであっただろうか。
「また会いたいなー」
つい声に出してしまったが、嫁はベットで寝ている。
コーヒーを片手に、テーブルに置いた携帯を手にする。
そうだ、確か仮想通貨投資してないことになってるんだっけ?
まあ夢だしそんなことはないと思うけど。
とか言いながらも期待してしまった。
銀行口座アプリを開く。
「うわっ!」
口座に100万円が増えていた。
手が震える。まだカーテンも開けていない部屋が、まだ夢の延長だと思わせる。
しかしそれもほんの一瞬の出来事。
次の瞬間足が熱くなった。
コーヒーがこぼれてしまった。
「あっちぃ――――」
その瞬間、嫁の足音が近づいてきた。
足の熱さと、その足音が現実である事をしっかり伝えてきた。
(災難だ……。コーヒー淹れなきゃよかった、)
これが1月11日(土)の朝。ぼくの選択である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます