雪だるま事件の犯人

 片岡くんが犯人? 僕は人違いではないかと思ったが、手にしたニンジンが犯人であることを物語っている。



 僕は片岡くんの手に握られたニンジンを見つめながら、頭の中で疑問が渦巻いていた。東雲さんが一歩前に出て、片岡くんに優しく声をかける。



「片岡くん、どうしてこんなことをしたの?」



 片岡くんは目を伏せ、沈黙を守ったままだった。しかし、東雲さんは諦めずに続けた。



「私は真実を知りたいの。あなたが雪だるまの頭だけを壊してニンジンを取った理由を」



 片岡くんは少しずつ顔を上げ、東雲さんの真摯な眼差しに答えるように、重い口を開いた。



「僕は、ウサギが好きなんだ。だけど、飼育係の海野さんと仲が悪くて、直接お願いするのが怖かったんだ。それで、こっそりニンジンを取ってウサギにあげていたんだ。ニンジンが狙いだとバレないように雪だるまの頭を壊して」



 東雲さんは優しく頷きながら、片岡くんの肩に手を置いた。



「片岡くん、ウサギを思う気持ちは分かるわ。でも、こんな方法はだめ。これからはちゃんと海野さんと話そうよ。私も一緒に話をするから、怖がらなくて大丈夫」



 片岡くんは驚いた表情を見せたが、やがて少しずつ頷いた。



「ありがとう、東雲さん。僕、ちゃんと謝るよ」





「それにしても、片岡くんが犯人だったなんて、意外だな。あれ、ちょっと待てよ。そうだ、体育の授業の時、片岡くんはバスケでゴールを決めた後、左手でゴールにぶら下がってた! 普通利き手でするから左利きなのは分かりきっていたのに。僕が気づいていれば、もっと早く事件が解決したかもしれないのに」



「それを気にしちゃダメよ。それよりも、私たちにはもう一つ解くべき謎があるわ」



「謎? だって、雪だるま事件は今解決したよ? 他に何かあったかなぁ」



「ええ。6年C組の双子の謎よ」



「美咲さんと絵理さんのこと? 謎はないと思うけど。確かに絵理さんが長い間お休みなのは気になるけれども」



「じゃあ、真くんは気にならないの? 私たちが二回目に美咲さんに目撃証言を聞きにいった時のこと」



「ああ、あの時は確かに変だったなぁ。だって、証言の内容が変わるどころか、見たこと自体を否定していたから」



「じゃあ、明日の行動は決まりね。土曜日だし、双子のお家に行こうよ。妹の絵理さんのお見舞いに」



 そう言う東雲さんの顔はどこかいたずらっ子のようだった。

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