番外編① 今日は、なにの日?(アレックス視点)
⭐︎アレックス視点⭐︎
結婚後、3/3の日の出来事
◇
王宮魔術師の仕事をさっさと片付けて愛しいかわいい癒される新妻ソフィアの待つ公爵邸にまっすぐ帰る。
「おかえりなさい」
「ソフィー、おいで」
いつものように両手を広げると小柄なソフィアが腕の中に飛び込んでくる。嬉しくてふるふる震えるたれ耳にキスを落とすと、今度は恥ずかしくてぷるぷる震えるたれ耳が愛おしくてたまらない。
ミルクティーみたいなやわらかなたれ耳を撫でながら頬まですべらせる。
「ソフィー、ただいま」
あごを優しく掬いながらたれ耳と同じミルクティー色の瞳をのぞき込む。
じっと見つめて心の中でゆっくり数を数えていくと色白の肌がほんのり薔薇色に染まり、大きな瞳がとろりと甘くうるんでいく様子に唇が弧を描く。
仲のいい夫婦は、5秒見つめあうとキスをすると教えてから恥じらいながら瞼をとじるソフィアに愛おしさが降りつもる。
「ソフィーは素直でかわいいね」
果実のようなかわいくて甘い唇にキスをすると真っ赤に頬も色づいた。
僕の唯一無二の
ティーグレ公爵家は、干支とよばれる暦の寅年に先祖返りする者が多く生まれている。先祖返りした者は、本能が他の人より強いから
ソフィアをひと目見た瞬間に僕の運命の
「今日はなにかいいことがあったのかな?」
「えっ、なんでわかったの?」
小首をこてんと傾けて、大きな瞳をぱちぱちと瞬きさせるソフィアはすごく可愛くて、指の腹でやわらかな頬をなぞる。花が咲いたみたいに笑って頬を手のひらにすり寄せるソフィアが食べたいくらいに愛おしい。
昔から僕になにか嬉しいことを話したい時のソフィアは、たれ耳の先が僅かにぱたぱたと持ち上がる。
「ソフィーのことが大好きだからだよ」
「っ……!」
みるみる顔が朱色に染め上がってぷるぷるたれ耳が震えだす。
「ああ、もう、本当にソフィーはかわいいね……」
たまらずたれ耳に顔をうずめてふわふわな感触と甘くて清楚な匂いを吸いながら、尻尾をソフィアの腰に巻きつけて匂いをこすり付ける。腕の中でふるふる震えるたれ耳が動いて愛しい僕の
「く、くすぐったい……もう、……めっ」
とろんとうるんだ瞳、上気した頬、甘く立ちのぼる匂いを纏わせながら最近知ったという
「あのね、見てほしいものがあるから、うさぎ吸いは、めっ、だよ」
「うん。ごめんね、ソフィー」
2回目の「めっ」は小首を傾げていてさらに癒される。見終わったらうさぎ吸いをさせてくれる癒しのたれ耳にキスを落とす。
「それじゃあ、いいよって言うまで目をとじてね」
「うん。わかったよ」
目をとじると、ぱた、ぱたとたれ耳が持ち上がるかすかな音が耳に届く。すごく嬉しそうなソフィアの表情が見たくて、うっすら目をひらくとソフィアと目があった。
「もう、めっ、だよ!」
「ごめんね、ソフィー。ちょっと暗くて不安になったから……手を繋いでもらってもいいかな?」
「あっ、気づかなくてごめんなさい……」
しゅん、とたれ耳をさげるソフィアがかわいい。困った顔もとびきり可愛いけど、好きな子はどこまでも甘やかしてとろとろに蕩けさせたい。
目をつむって手を差し出すとソフィアの指先が触れたのを絡めるように繋ぐとゆっくり誘導される。
「もういいよ」
愛らしいソフィアの声にまぶたをひらくと陶器でできた虎とうさぎの人形が段飾りに並べられている。
一番上のうさぎはソフィアにそっくりなミルクティー色のたれ耳うさぎで思わず「かわいい」とつぶやくと隣にいたソフィアにぎゅっと抱きつかれて、きらきらした瞳で見上げるソフィアと視線が絡む。
たれ耳がぱたぱた動く様子がかわいすぎて目を細めてしまう。
「あ、あのね、3月3日はね、
ソフィアが選んだ段飾りのひな人形は、虎とうさぎになっていて異国の衣装を纏う華やかさがあった。
たれ耳をゆっくり労わるように撫でると、気持ちよさそうに瞳を細めて手のひらの感触を味わうようにうっとりするソフィアに癒される。
「そうなんだね。うん、すごくかわいいよ」
「ほ、本当に……?」
「うん、本当にすごくかわいいよ」
ソフィアの瞳をじっと見つめてソフィアの可愛さを堪能していると飾られた桃の花よりも艶やかに桃色に染まって瞳をゆっくりとじた。
「もう、本当にソフィーはかわいいね……」
甘い唇にキスをひとつ落とす。
部屋には咲きはじめた桃の花が生けられ、雛あられやひし餅などひな祭りに楽しむ料理も並べられている。このすべてをソフィアが一生懸命考えて、僕を驚かせようと思ってしたのだと思うと愛おしくてたまらない。
「ねえソフィー、ひな祭りは誰のお祝いをするのか知ってる?」
「えっ、ううん……」
「ひな祭りは、女の子の健やかな成長を願うお祝いなんだよ」
大きな瞳がぱちぱちとまたたくのを見ながら愛しいたれ耳をめくって顔を近づける。
「僕はソフィーによく似た女の子がほしいかな」
「…………っ!」
結婚してからあまい夜を重ねているソフィアが真っ赤に染まって脱兎のごとく逃げようとしたのを尻尾で引きよせる。
唇にとんっと指を当てて、
「ソフィー、逃げたら、めっ、でしょう?」
パチンと片目をつむるウインクをするとソフィアは惚けた顔になった。
膝裏に手を回してお姫様抱っこをするとたれ耳がふわりとゆれた。
「きゃ……、あ、アレクさ、ま……、ま、まだひな祭りをして、ない……っ」
「結婚したらアレクと呼ぶ約束だよ――嘘つきなうさぎさんは、キス1000回のお仕置きかな」
「えっ、あっ、ちょっと待って――…」
たれ耳にキスの雨を降らせながら夫婦の寝室に寝かせて、愛しいソフィアにキスをする。
あまくてやわらかな唇の中に割って入れば、おずおずとこたえようとする愛らしいソフィアの舌をつかまえる。
「んっ……はあ……」
ソフィアの好きなところを狙って、僕に縋るように溺れるようになぞって擦り合わせればソフィアから漏れるのは甘い吐息だけになっていく。
水音があまく響いて、艶やかな息をもらすソフィアのたれ耳を撫でると甘くとろんとうるんだ瞳と見つめあう。
「アレク……」
「ソフィー、ひな祭りは残りのキスが終わったらゆっくりしようね」
身体の力が抜けきったソフィアがこくんとうなずく。
いつかソフィアに似た女の子が生まれたら盛大にひな祭りを祝おうと思うけど、今は、ただ目の前にある愛おしくて癒されて可愛らしい新妻のたれ耳をひたすら愛でたくて――…
僕はかわいいソフィアにキスの続きをはじめた。
おしまい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます