第24話 怒りの一撃
「私の命令に『わかりました』とおっしゃい。特別に発言を許しますわ」
俯いたまま、言葉も出ないリリーシュに、ヴェロニカが更に言い放つ。
「ヴェロニカ様が特別に、直に言葉を交わす許可を下さったのです。有り難く思い、早くお答えしなさい」
「ヴェロニカ様がお優しいからと、いつまでもそれに甘んじずに、さっさとするのです!」
二人の令嬢達も両脇からリリーシュに迫る。一人がリリーシュの肩を掴んで揺さぶる。
「そうよ。私は優しいから、こうやってわざわざ出向いて、あなたに己の身の程を教えて差し上げているのです。さっさと答えなさい!」
苛立ちを顕にヴェロニカが金切り声を上げる。その声が人の少ない回廊に響いた。
「ヴェロニカ様、あまり声を荒げられますと、他に気づかれてしまいます」
これまで黙って後ろに控えていたリリーシュをここまで先導してきた侍女が、焦ってヴェロニカに言う。
「私に指図しないで! あなたは誰も来ないように見張っていればいいのです」
そんな侍女の進言も、ヴェロニカは意に介さずかえって怒りを募らせた。使えないわね、と吐き捨ててから再びリリーシュを睨む。
「さあ、さっさと……」
「……ん」
「え?」
催促しようとしたヴェロニカに被せて、リリーシュが口を覆っていた手を外し、何かを呟いた。
「ようやく理解した……」
「あなたの命令はききません」
下ろした両手をぎゅっと握り締め、リリーシュはまっすぐにヴェロニカを睨みつけた。
「これは私と殿下の問題です。今日、正式に国王陛下にも婚約を認めていただきました。たとえあなたの仰るように、身分が伴わないとしても、それ」
「私の命令が聞けないですって!!」
ヴェロニカは物凄い形相でリリーシュを睨みつけ、叫んだ。怒りで頬にさらに赤味が増す。
「ロードバルト殿下と私の婚約が取り消しされるとしたら、それは私と殿下が合意して決めることです。もしくは国王陛下が、やはり私達の婚約は承諾できないと仰ったなら、その決定に従います。ですが、関係のないあなたに言われて決めることではありません!」
「か、関係がない……ですって」
「そうです。たとえあなたの身分が私より高くとも、王族の婚姻に口出す権利はありません。あなたは部外者です」
「部外者ですって!!」
バシッっと、廊下に音が響く。ヴェロニカが、持っていた扇でリリーシュの頬を叩いたのだった。
「ひっ」
令嬢の一人が小さく悲鳴を上げる。もう一人の令嬢も、ヒュッと息を呑んだ。
廊下に赤い血が散る。
「短絡的ですね。言葉では勝てないとわかると、暴力で黙らせようとするなんて」
リリーシュの頬は、扇のせいで傷が出来、唇も切れて血が滲んでいる。それでも彼女は怯むことなく、ヴェロニカに語りかけた。
「生意気な女ね。身の程知らずだわ」
ギリギリと歯ぎしりしながら、ヴェロニカは再び扇を持った手を持ち上げた。
「ヴェ、ヴェロニカ様……」
「何をしている!!」
そこに廊下の向こうから叫ぶ声が聞こえた。
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