第103話 新たな絆の形成 -6-

番所の門を出て市ノ街の大通りを二人で歩く。

大通りには朝市で賑わう露店が並び、早朝から活気に満ちた声が響いていた。

露店の一つ一つが色とりどりの食材や雑貨で溢れ、町の人々はそれを見て選び、時には楽しそうに笑いながら交渉している。


「普段の見回りってどういうことをしているんですか?」


ずっと聞きたくて聞けなかった疑問をここぞとばかりに口にすると、蒼月さんはうーんという素振りで空中を見上げた後で、


「一言で言うと、街の中を散歩しながら、危険な空気を感じたらそこに足を運ぶ、という感じだろうか・・・」


蒼月さんはそう説明した後、しばらく沈黙し、遠くの空を見つめながら続けた。


「平和一辺倒で今日のように天気が良い日は、有事には察知し駆けつけられる範囲の山に行って寝転んでいたりもする。」


そのあまりにも予想外の答えに、思わず拍子抜けしてしまう。


「え?みなさんそんな感じなんですか?」


私の声には驚きと少しの疑問が混じっていた。

私が想像していた「見回り」の概念が塗り替えられていく感覚に、私の知っている世界とこちらの世界との違いを改めて感じる。


「まあ、そうだな。あの二人は山にはかぬだろうが、それぞれ落ち着ける場所でのんびりしてることも多いのではないか?早々に番所に戻ってきてのんびりしていることも多いぞ。」


人間界でのおまわりさんの巡回パトロールを予想していたから、そのあまりのゆるさに驚いてしまった。


「街の中の市を見て回っている時もあるな。まあ、市は大抵混雑しているから、街の中でも問題が起こる確率は他に比べて高い。とはいえ口論や窃盗未遂がほとんどで、その場にいるものたちで解決できることが多いため、我々の出番はほとんどない。」


なるほど・・・


「我々が介入するのは、主に無差別な暴力行為や脅威の方だな。ただの喧嘩の場合、第三者に被害が及ばない限りは介入しない。それ以外は場合によるな。」


確かに、市ノ街は比較的治安が良いと聞いていて、月影さんも、この前のだるま事件や妖狐関連の事件のようなことが起こるのは稀だと言っていた。

しかも、この世界には「仕事」という概念がないということは、この見回りも仕事ではなくあくまでも善意なのだ。

平和な街がゆるい見回りで成り立っていることに、驚きと羨望を感じる。


「じゃあ、本当に、基本的にはお散歩なんですね。」


思わずクスリと笑ってしまった私に、蒼月さんも同じようにクスリと笑うと、


「そうだな。平和なもんだ。ただ・・・」


ただ、という言葉が気になって横を歩く蒼月さんを見上げると、


「私は番所の見回りとは別件で調べ物をしていることも多いな。」


と言った後、


「だから、他の街に行くこともままある。」


そう言って、遠くを見つめた。


他の街というのは、この前月影さんが行っていた「ほのおさと」を始めとする、市ノ街の周りにある6つの街のことだろう。

番所での授業の時に、子どもたちがあれこれ街について話していたことを思い出して、思わず笑顔になる。

すると、蒼月さんがそんな私の笑顔を興味と取ったようで、


「なんだ?他の街に興味があるのか?」


と聞いてきたので、


「あ、はい。興味はありますね。子どもたちが色々と教えてくれたので。」


そう答えると、蒼月さんは、


「そうか。では、今度連れて行ってやろう。」


と言うと、


「逢引きではなく、調査だがな。」


と笑った。

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