第101話 新たな絆の形成 -4-
次の日は、昨日話していたように
玄関を出たところでふと蒼月さんが立ち止まり、振り返って私を見て言う。
「毎日見送られるのが日課になりつつあるから、共に出かけるのは不思議な感じだな。」
そう言われると、確かに、行ってらっしゃいを言わないのもなんとなく落ち着かない。
「確かにそうですね。じゃあ・・・」
軽くコホンと咳払いをすると、
「行ってらっしゃい!お気をつけて。」
と、いつものように挨拶をする。
すると、そう言われた蒼月さんは、一瞬目を丸くした後で、柔らかく目を細めてハハハと笑った。
なんだろう。
昨日からよく笑う。
一体どんな心境の変化なのか・・・
そういえば、昨日小鞠さんが「打ち解けたようでなにより」って言っていたけど、打ち解けるきっかけがあった記憶はないんだよなあ・・・
でも、確かに少し話しやすくなっているのは確かだ。
そう考えると、日々の鍛錬を通じて私という人間に慣れてくれたということなのかもしれない。それはそれで嬉しい限りだ。
そんなことを考えていたら、蒼月さんに、
「今日は・・・行ってくる、ではなく、参ろうか、だな。」
と声をかけられ、私はそれに元気よく「はい!」と答え、番所へと歩き出した。
番所までの道のりはそれほどないので、夕方の鍛錬でどうしてもあの剣法の技が上手く避けられない、といった相談事のような話をしていたら、あっという間に番所に到着してしまった。
番所に到着してから一時間くらいを蒼月さんが朝の自己鍛錬に充てているのは知っている。
なので、私は久々の番所で前に子どもたちと習ったことを復習でもしながら待っていようと思っていたのだけれど、
「鍛錬に付き合うか?上手く避けられないと言っていた先ほどの件、見てやるぞ。」
と言われ、二つ返事でお願いすることにした。
苦手な技の避け方を教わりつつ、他の技との合わせ技を避ける練習を続けていると、なんだかんだ一時間かけて私の鍛錬に付き合ってもらったような感じとなってしまった。
そこで、蒼月さんからは
私がこちらの世界に迷い込んだのが「
そして、今が「
さらにその後にやってくるのは「
こうして見てみると、こちらの世界の暦はロマンティックで美しい名前が付いている。
覚えるのは大変だけど、こうして知っていくのはとても楽しいものだな、と、久々の学びに少しワクワクしながら教材を見ていると、
「うわ!!琴音ちゃんだ!!」
背後から大きな声がして、その懐かしい声に振り向くと、まるで尻尾を振ったわんこのように私に駆け寄ってくる翔夜くんがいた。
そういえば、翔夜くんに最後に会ったのは、
翔夜くんは満面の笑みで私のそばにやってくると、
「うわーーーーー!すっげえ久しぶりな気がする!!どう?元気だった?」
と私の両手を握ってブンブンと振る。
「久々に会ってもかわいいね〜〜〜〜!あれ?ちょっと痩せた?ひょっとして蒼月さんにいじめられてる?」
次々と弾丸のように言葉を浴びせながら、翔夜くんは話し続ける。
「今日はどうしたの?っていうか、全然番所に顔出してくれなくなっちゃったからめちゃくちゃ寂しかったよ〜!」
こうなると、どこまで話し続けるのか、黙って聞いていようという気になる。
「蒼月さんに琴音ちゃん元気ですか?って聞いても、元気だな、って答えるだけで、それ以上何にも教えてくれないからさ〜。」
さっきまでブンブンと振られていた両手は、相変わらず握られたまま、まだまだ話すのをやめる気配はない。
「そんなに気になるなら屋敷に顔出せばいいだろ、って言われても、邪魔はしたくないしさ〜〜。」
あ、そうなんだ。一応気を使ってくれているところが、翔夜くんらしいといえばらしい。
「も〜〜〜、俺ばっか喋ってるじゃん!琴音ちゃんもなんか言ってよ〜!」
やっと私に発言の権利が・・・笑
「いや・・・ちょっと圧倒されちゃって・・・」
そう言って笑った私に、
「あ〜〜〜!琴音ちゃんの笑顔久しぶり〜〜〜。かわいいな〜〜〜〜。ねえ、そういえば、いつになったら嫁に来てくれるの?」
すっかり忘れていた話を持ち出され、笑うしかない。というか、本気だったのか?いやいやいや、そんなはずはない。
そんなことを考えていると、私の手を握る力にギュッと力が入ったのを感じて、翔夜くんを見上げる。
すると、
「あー・・・・本当に会えて嬉しい・・・」
と、さっきまでとは違う顔で言われ、これと同じ顔をどこかで見た記憶があるけどどこだっけ?・・・と考えていたら、
「あ、琴音ちゃんだ。久しぶり!」
そう言われて声のした方に視線を向けると、月影さんが鍛錬を終えた蒼月さんと並んで広間に入ってくるところだった。
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