第83話 蒼月邸での鍛錬 -23-
ちゃんとできているのだろうか。不安と期待に胸が高鳴る。
小鞠さんと
「あ・・・」
ぼんやりとした視界からクリアな視界に変わると、さっきと同じようにキャビネットのような映像が見えてきて、さっきは白か黄色っぽく光っていた引き出しが、今度は水色っぽく光っている。
キャビネットのラベルに意識を集中すると、そこには星のマークとともに、こう書いてあった。
「
こちらの暦は人間界のものとは少し違う。こちらの世界は1ヶ月が28日、13ヶ月で一巡りというカレンダーになっているらしい。前に番所の授業で習ったのだけれど、覚えきれていないので書き留めたノートがないと詳しいことは思い出せない。
ただ、暦のことを習った時に「今は
さらに引き出しをじっと見てみると、端の方にいくつかのボタンがある。
そこに意識を合わせると、それらが一時停止、再生、停止、削除・・・最後はなんだろう?映写機のようなマークが書いてある。
ただし、一時停止〜削除のマークは押せそうな状態なのに対し、映写機のようなマークは押せなさそうな雰囲気に見える。
「なんか・・・ボタンのようなものがいくつもあります。」
見えているものをそのまま伝えたのだけれど、
「ぼたん・・・?植物のかえ?」
と小鞠さんに聞かれ、この世界にはボタンというのはないのか、と気づく。おそらく今見えている映像は、私の概念に従って作られたものなのだろう。そこで、言い方を変えて、
「押したら何かが動きそうな仕掛けっぽいものが4つ、もう一つはそもそも選べなさそうな状態です。」
と説明し直す。
すると、状況を理解した感じの小鞠さんに、
「何か動かしてみい。」
と言われ、心の中で「再生」を指示する。
すると、頭の中で先ほどのシーンが再生されたではないか。
「うわ〜〜〜。おもしろーーーーーい!」
夢や想像とはまた違う、その初めての感覚に気分が高揚する。まるでおでこの裏のあたりに映像が映写されているような感覚だ。
念の為と録音した音声も、耳から聞こえてくるのではなく頭の中で響いているといった感覚に近い。
今度は試しに「一時停止」を指示する。すると映像がぴたりと止まる。先ほどまでラベルに記されていた星のマークが消えている。
ということは、星のマークは多分、未読や未視聴を表しているということなのだろう。
ゆっくりと目を開けて、二人を見る。
「これは・・・楽しいですね!」
本当にとても面白い。
スマホでの録音、録画、撮影に慣れている身としては、やっていることはそれと変わらないけれど、この表現のされ方が新鮮で色々と試してみたくなる。
ちなみに、今と同じことを守り水晶なしでやってみたらどうなるのかも試してみると、結果はやはり想像通りで、記録すらされなかった。
「つまり、琴音殿の場合、その守り水晶を身につけている間だけ、琴音殿に妖力が生じるというわけじゃな。」
この検証を目の前で見ていた小鞠さんが、私の代わりに検証結果を口にする。
「そうなりますね。どういう仕組みなのかは理解できていないのですが・・・」
とにかく外に出る時は身につけているようにと言われてからは必ずそうしている。けれど、いまだになぜこんな現象が起きるのかは自分でもわからない。
「となると・・・あとは、先ほどの現象はどうやったら再現できるのかを知りたいのお。」
小鞠さんが少しワクワクした顔でそう言ったとき、また、どこからか「ボーン」という鐘の音が聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます