第30話 みにくいアヒル姫は自身と向き合う

ベテランの風格がある侍女たちに磨かれていき、ついに化粧をするために眼鏡を外してほしいと言われてしまった。


「その……私は眼鏡を外すとものすごく醜女なのでこれだけは取りたくないのですが」


「……ルーナ王女殿下は、なぜご自身を醜いと思われているのですか??」


落ち着いた雰囲気の侍女にそう問われて、今までの過去の記憶がよみがえった。王国では私はいつも眼鏡をかけて時代遅れの服を着ているみにくいアヒル姫だった。


顔立ちが整った賢君との呼び声が高い父にも、美しく華やかな母にも、両親に似て誰からもみにくいと言われたことのない兄たちにも私は少しも似ていないと言われ続けてきた。


ただ、侍女にそう問われてはじめて気づいたのだが、具体的に何が原因で自身がみにくいのかを考えたことは今までなかった。


時代遅れのドレスが原因なら、今は美しいドレスを着ているから改善されているし、へたくそなお化粧や、磨かれていない肌つやや髪型がだめならそれも今は改善されている。


そこまで考えて、顔の造形について私はいつも眼鏡をかけていて、眼鏡を外した造形は醜いと決めつけていたためあまりしっかり見たことがないことに気づいた。


ただ、眼鏡をかけている状態で目が小さいのできっと外しても小さいとは思っており、他の顔のパーツとのバランスを考えると美しいとは思えなかった。


「……眼鏡の下の顔が醜いのよ。どう醜いかはわからないけれど……」


「なら、一度ご自身で確認してみませんか??コンプレックスがおありでしたらそれをカバーするメイクを我々はすることができます」


長年の経験に裏打ちされた自信に満ちた言葉に、まるで雷に打たれたような衝撃が走った。


今まで、メイクを自分で自己流で行っていたこともあり、それだけで顔が大きく変わるということがなかったが、確かにお母様がよく呼んでいたベテランの侍女はとてもメイクがうまいと国中で評判がよかったことを思い出した。


「……たとえ醜女でも変われますか??」


「もちろん。どのような方でも美しくすることができます、なのでまず眼鏡を外してみませんか??」


(……ずっとあきらめていたけどもしも美しくなれるなら、みにくいアヒルから変われるなら……)


震える指先で眼鏡の蔓を持ち、その眼鏡を外した。


この間、侍女たちの前で外した時は明らかに様子がおかしくなったが今回はそうはならなかった。


眼鏡を外してから自身の顔を見るのが怖くて目を固く瞑る私に、侍女の穏やかな声が聞こえた。


「ルーナ王女殿下、眼鏡を外して頂きありがとうございます。ではそのままゆっくり鏡をごらんください」


「……はい」


ずっと目をそらしていたかったけれど、私は自身の顔と向き合おうと決意して瞳を開いた。

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