第13話 みにくいアヒル姫と白頭鷲王は食事をする

いつもと違う様子のユリウス皇帝陛下が去ってから、私はすぐに一着のドレスを選んだ。


そのドレスはずっと着てみたかった水色のシンプルなもので、いつものような肩がゴテゴテでも襟が顔を覆ってライオンみたいになるものでもない。


ドレスを着るとその後は今まで自分では出来なかった美しい化粧やヘアセットを侍女たちがしてくれて感動してしまった。


「すごい、自分ではこんなにうまくできなかったの」


と言うとマリアが穏やかに微笑みながら、


「喜んで頂けて光栄です」


と答えてくれてなんだか嬉しくなる。王国では自室に話し相手は居なかったから、それも新鮮だと感じた。


「あの、ルーナ様」


今まであまり目立たなかったひとりの侍女がオドオドしながら話しかけてきた。


「なにかしら」


「その、眼鏡を外されませんか??」


彼女からはあの3人のような悪意は感じないが、眼鏡を外すと醜女であることは理解しているので提案の意味がわからなかった。


「でも、眼鏡を外した私はより醜いわ」


「そんなことありません!!むしろ……」


急に興奮した侍女が何かを言おうとした時、マリアが間に入った。


「ルーナ様、私達の腕を信じて頂けませんか??眼鏡を外したお姿も美しく整えさせて頂きます」


マリアの言葉の力強さに、確かにこれだけ美しいメイクができる彼女達なら醜女も普通にらなれルカも知れない。そう思ったら、お任せしてみたくなる。


「わかりました、お願いします」


***


(ユリウス皇帝視点)


「……美しい」


人は本当に美しい人を見ると感動して言葉が出なくなるらしい。


ルーナが美しいことは、知っていたがさらに化粧や美しいドレスを身につけたことにより完全にグレートアップしていた。


ダイヤの原石を磨きあげたかのようにまさに光り輝く美貌が私の眼前に広がっていた。


「ありがとうございます」


ハニカミような表情で答えたルーナが愛おしくて、この瞬間を残したくなる。


「本当にあまりに美しくて見惚れてしまった。やはり俺様のルーナは美しい」


目の前にある料理を青に金色が混ざる特別な瞳をしたルーナが見つめている。


ルーナが美しくて褒め称えたくて忘れていたが、ルーナは空腹のはずだ。


空腹は辛い。白頭鷲として育てられた時、食事が少ないことやないこともあった。


あの苦しみは耐え難い。


「すまない、冷めないうちに食べよう」


「はい」


答えたルーナは完璧な所作で料理を口に運んでいる。


愛らしいピンク色の唇が震えるのを見つめていると胸の奥から感情が沸き立つのがわかる。


「可愛い、可愛いすぎる。必ず俺様が守りたい」


「ユリウス皇帝陛下??何かおっしゃいましたか??」


テーブルが離れているものだからバレなかったが、どうやら口から本音が漏れていたらしい。


「ああ、ルーナが可愛いすぎてな……」


その言葉にルーナの顔が少し上気したのがわかった。


もっともっと褒めたい、もっともっと恥ずかしがらせたい。


そんなことを考えながら肉を口に運ぶ。


「……そういえば、ユリウス皇帝陛下。昨日のお話の続きを伺えますか??」

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