(22)7月5日 金曜日
着信アラート音。画面上の『応答』表示をスワイプする。
***
「おはようございます。7月5日金曜日、午前7時くらいをお知らせします」
「
「というわけで、今日からはいつも通りにあなたを起こそうと思います」
「────。はぁ、『いや、テスト期間中も毎日起こしてくれていたよね』、ですか」
「まあ、確かにそういう解釈もできなくもないでしょうけど、昨日までのわたしたちは敵同士だったわけですし、敵に塩を送るという言葉もありますし、敵の敵は味方みたいな?」
「ふふ、しかしおかげさまでテストの手応えは抜群でした。あなたごとき相手には完封勝利間違いなしでしょう」
「で、あなたは?」
「────。『数学、公式を間違って覚えていたみたい。赤点かも』、ですか?」
「なにやってるんですか……。そういえば勉強会のときに数学は苦手って言ってましたね。謎の呪文みたいに公式を暗唱していたのも無駄でしたか」
「言ってくれれば教えたのに。わたしも数学は苦手ですけど、それでも赤点を取るようなレベルじゃないですし」
「追試とかになりそうなら言ってくださいね。手伝いますよ」
「────。『俺のこと嫌いなのに、手伝ってくれるの?』、ですか」
「はぁ、まあ、それは、その。嫌いですけど、一緒にテスト勉強した仲ですし」
「人に教えることは、わたしの勉強にもなりますし」
「でも実際のところ、ぎりぎり赤点は避けていそうな予感はしますけどね。あなたってそういう人ですし、あなたのそういうところが嫌いです」
「むしろ赤点の一つでも取って悲惨な感じになってくれた方が、ちょっと好きになるかもしれません」
「では切ります。学校でお会いしましょう」
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