第10話 魔導師への願い ★カミル SIDE
コンコンと、とある部屋の扉を叩く。中から出て来たのは短髪赤毛で長身の男で、この執務室の主だ。僕のいきなりの訪問に驚いた様子を見せた。
「カミル殿下、どの様な御用件でしょうか?お急ぎですか」
「いや、そこまで急いではいないのだが……防音は大丈夫だよね?」
魔道師団団長であるデュークの執務室は、国の重要機密事項もあるので強固な物理攻撃と魔法攻撃に耐えうる結界、そして防音結界が最初からの張ってあるのだ。
「えぇ、防音も問題ありません。それで、何かありましたか」
「いや、僕の婚約者であるリオの事で頼みがあるんだ」
デュークは眉を寄せ、聞きたくないと顔に書いてあるのは直ぐに気づいたが、気づかないふりをしてどんどん話を進める。
「我が婚約者は魔力量が少なくてね。それでも国や僕のために努力しようとしてくれているんだ。大気中の魔力を集める練習をしたいらしいから、時間がある時に手伝ってあげてもらいたいんだ」
「殿下……大気魔力を扱うには、並大抵の努力では……ご存知でしょう?」
「あぁ、勿論理解している。だが、本人もやる気だし、現時点では魔力量を少しでも増やさないと……後々、貴族達に何を言われるか分からないしね。それに彼女のスキルは見えてる物が2つ、隠れスキルが少なく見積もって3つあるようなんだ」
デュークが驚愕の表情でズイッと一歩前に出た。
「隠れスキルが3つもですか!?もしかしたら加護をお持ちで?」
「デューク、近い!……そうだ。彼女の世界の母国語で、我々には分からないようにしてあったのだが、どうやら精霊と女神の加護を持ってるようなんだ」
「なるほど……しかし、それらのスキルが使えるようになる前に、スタンピードは起こるのではないでしょうか?私や殿下ですら、大気魔力を扱えるまでに数年掛かりましたよね?」
僕もデュークも魔力量は多い方だったからそこまで最初から真剣にやらなかったのもあるけど、難しい事には変わりないか。中級辺りで
「それは分からない。間に合うかも知れないし、間に合わなかったとしても、魔法をある程度使えるなら彼女は役に立ってくれるよ。全属性持ちだからね」
「!!!!!」
目を大きく見開いて、デュークが固まる。夕食まであまり時間が無いから早く話を進めたいのだが。
「デューク、頼まれてくれるかい?」
「そうですね……明日から3日間、1日3時間なら。その様子を見させて貰ってから、再度考えてもよろしいでしょうか?」
「それで構わない。リオは魔法理論と初級魔法の本を熱心に読んでいたから、その程度の知識はあると思って構わない」
「分かりました。では、明日の昼食後に殿下の執務室にお迎えに上がります」
「あぁ、頼んだよ。それとリオの実力は隠したいから、練習内容や進捗具合なども含めて全て、内密にね」
「御意」
何となく納得していない表情であったが、リオの性格や根性を知らないから仕方ない。それにデュークは信頼出来る人間の1人だ。
リオの味方を少しずつ増やすためにも、デュークの協力は必要不可欠だからね。明日になれば、リオの能力もある程度分かるだろう。明日のデュークの反応が楽しみだな。
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