　リオの部屋へと辿り着き、近衛騎士に扉を開けさせ中へエスコートする。王城の貴賓室と同等の立派な部屋ではあるが、彼女にはもっと可愛らしい部屋が似合いそうだ。

　リオは目をパチクリして、部屋の豪華さに驚いてる様だった。落ち着かないのかウロウロしながら周りを見渡している。

「か、カミル。私がこの部屋を使うの？贅沢過ぎて庶民の私には落ち着かないわ……」

「リオはもう王子妃になる事が確定してるのですから、今から慣れておいて欲しいのですが……」

「そうね……分かったわ。その代わり、カミルも私に敬語を使わずに話してくれないかしら？その……カミルの婚約者になるのでしょう？」

　少し俯いて恥ずかしそうに、後半は小声になりながらも伝えて来た彼女が可愛くて仕方ない。お互い真っ赤な顔で俯いてしまった。

「そ、そうだね。リオ、これからよろしく頼むね」

「ええ、こちらこそよろしくね」

　照れる2人を温かな眼差しで見ている侍女の存在に今更気がつく。

「そ、そうだった。リオ付きの侍女が先ずは2名。後2名ぐらい増員予定だが、希望はある？」

「あのね、この国には戦闘メイドっているの？戦闘といっても、自己防衛出来るぐらいで良いの。出来るなら、相談出来て勉強もそれなりに教えてくれる賢い子が良いわ」

「ん？補佐官が欲しいのかい？」

　これから王子妃となるのであれば、仕事も増えるだろう。その前にリオ自身に勉強が必要ではあるが、補佐官として自衛出来る人間を付けるのもありだろう。女性で戦闘に特化している者でも良いね。今後を見据える事のできるリオは、やはり賢い。

「補佐官ってお仕事を手伝う人でしょう？話し相手ぐらいでも良いのだけど……」

「どちらにしろ、今後必要になるだろうからね。早くから探しておいても良いと思うよ。こちらで探しておくね」

「ありがとう、カミル。助かるわ」

　嬉しそうに微笑む彼女はとても美しく、ポーッとしてしまう。駄目だ、失態をおかす前に撤退すべきだろう。

「いや、婚約者として当然の事をするだけだよ。それで、彼女達はリオの専属侍女であるリリアンヌとマリーだよ」

　緑の髪を綺麗に結い上げているリリアンヌと、茶髪でおさげのマリーが一歩前に出て頭を下げ挨拶をする。

「リオお嬢様、私はリリアンヌと申します。何でも気軽にお申し付けください」

「リオお嬢様、私はマリーです。どうぞよろしくお願いします」

　リオは嬉しそうに微笑みながらペコリと頭を下げた。

「リリアンヌさんとマリーさんですね！分からない事ばかりですので、色々教えてくださると助かります」

「畏れ多いです、リオお嬢様！侍女に頭を下げなくても大丈夫ですし、敬語も必要ありませんよ」

「そうです！私どもはリオお嬢様に誠心誠意お仕えいたしますので、どうぞ何でもお聞きください」

　リリアンヌもマリーもリオを気に入ったようだ。リオがこの国で少しでも安心して過ごせるように、早速本を探して来なければ。きっと時間を持て余してしまうだろう。

「リオ、それでは本を持って来るから……あ、お腹は空いてないかい？軽食や飲み物が欲しい時は、侍女に頼んで持って来て貰うと良いよ」

「ありがとう、カミル。私は大丈夫よ。お仕事もあるのでしょう？また夕食時に会いましょう」

「あぁ、そうだね。夕食が待ち遠しいよ。また後で」

　笑顔で部屋を後にする。さっさと仕事を終わらせようと心に決めるのだった。

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