第34話 12月22日日曜日【はるか】

 交換日記に挟まれたメモ


 なかなか渡すことができなかったから、書いている内容が随分古いし、なんだか私の個人日記みたいな感じになっていますが、ディアファンさんには全部伝えたいなって思ったので、このままお渡しします。


 長旅お疲れさまでした。

 習慣のように日記を持ち歩き、もしくまさんが無くなっていたらすぐに百葉箱に入れるつもりでした。


 でも空振りの日が続いて、北風が余計に身に沁みるなって思ってた朝、遂にくまさんの代わりの月桂樹の葉をみつけました。

 その場で小躍りしそうになるのを必死で耐え、小枝をもって学校に向かいました。


 そしてこのメモを書いています。

 本当に無地で良かったです。


 お帰りなさい ディアファンさん。



::::::::::


 10月18日金曜日


 もうきっと機上の人になっているのでしょうね。

 無事に世界大会が終わることを祈りつつ、お帰りになるまでの間のことをぽつぽつと書こうと思います。 


 石田亜子ちゃんですが、やっと登校してくるようになりました。

 職員の間では、このまま引き籠ってしまうのですはと心配の声も聞こえていたのですが、井上先生が随分頑張られたようです。


 もう学校には行けないと言って泣く彼女に寄り添い、一緒にアランシオンくんへの謝罪の手紙を書いたそうです。

 学校はアランシオンくんへの連絡手段がありますので(当然ですが開示はしていません)そのルートを使ってお手紙を送ったのですって。


 お手紙が届いた翌日には、お姉さんのラランシオンさんと、お父様とお母様の4人で石田さんが入院していた病院へ来てくれたのです。

 泣きながら謝る石田さんの肩に手を置いたアランシオンくんが「自分が知らないものを怖がるのは当たり前の気持ちだから、気にすることはない」と言ってくれたのだと、井上先生が感激しながら教えてくれました。


 次は井上先生が謝ったそうです。

 そうするとラランシオンさんが「井上先生の行動は人としては理解できます。しかし教職者としては如何なものかと思いました。平等に接するのは大切なことです。しかし、あの日の先生の行動は、平等なものだったでしょうか」


 かなりのパンチを喰らった気になったようです。

 すると彼女は「是非今回のことを教訓として、なぜこれをやるのかという目的意識を持ってお仕事に向き合われることを期待しています。目的があるからこそ、それを達成するためにクリアしなくてはいけない目標ができるのです。それをさらに細分化していくことで、まず何からやるべきかという課題が見えてくるのだと教わりました」


 いやぁ……仰る通りです。

 ついつい年齢でその人の成長度合いとか能力とかを画一化して考えてしまうのは、本当に悪い癖だなと思いました。


 思い出せば、これらの考え方は習っていたのです。

 習っていたのに身についていないということに愕然としました。

 井上先生も私も。


 そして2人で話し合ったのです。

「なぜ不透明な人間と透明な人間を同じ学校に通わせる必要があるのか」

 ここから話し合うべきだったのですね、透明な方々も交えて。


 とてもお勉強になりました。

 透明な方々には多大なご迷惑をおかけしてしまいましたが、きっとこうなるって分かっておられたんじゃないかなって思ったりしています。

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