第1章

広島県立実力行使専門学校

《広島県立実力行使専門学校》

ここは力について学べる日本最大の高等専門学校である。力について学ぶ専門学校は全国で何ヶ所かあるが、ここはその中でも力についてより深く学べる学校だ。

ここには全国の少なくとも腕以上の実力者達が集い、力についての理解と共にその力を最大限まで成長させるという目的の高専である。

4月7日。賢は、思ったよりも長たらしい校長の話を聞いたあとこの学校の1年生のクラスにいた。


(ほ、本当に来てしまった...実行高専に...!!!)

何故こうなったのか。時は遡る。


​───────​───────​───────

「賢~高校、どうする?」

矢羽根は賢へと人生のターニングポイントである高校について聞く。


「どこでもいいっす。それよりも今はエンパイアについての情報がもっと欲しい。」

エンパイアとは、例の着物姿の男が所属している世界規模の組織である。あの事件の後から俺は、血眼になって奴を探し、復讐しようと試みてる。


だが、この約1ヶ月ほどであの男について得た情報は、奴の1部の力と奴との関わりのある機関だ。

今分かっている情報の中での奴の力は、あらゆる事象、自然現象の創造である。地震を起こしたり電撃を発生させたり、火災を起こしたり。

ちなみに、俺の炎が一息で消えたのはまだ分かっていない。


そして奴と関連している機関は、広島県立実行高専の上層部だ。今のところはそれぐらいしか情報がない。


力を開花させたばかりで何故か力を使えない俺では、実行高専なんか入れっこないので、実行高専に入る以外の手段で奴を追い詰めることとした。


「じゃ、実行高専入れば?推薦状出しとくからさ」

つまり奴を追い詰めるのはかなり難しく...ん?今なんて?


「え?」


「だから、実行高専入れば?って」

矢羽根さんが軽い口調でそう行ってくる。


「俺が、ですか?まだ力も使えない俺が」


「君には才能を感じてるからね。特別だよ」

才能...俺に...?


「とてつもない激情で発現した力。そのポテンシャルを俺は認めた。どう?」


「....なるほど。その高専に入れば奴を追えるんですね?」


「うん。多分絶対!」

やっぱりこの人お気楽主義だな。俺はそう思いながらこんなチャンスは二度とないと覚悟を決める。


「多分絶対って。分かりました。入ります」

というかあの人推薦状なんて出せんのか。すごいな後頭。


「おっけー!そんじゃあ手続きとかで忙しくなるよ~!」


​───────​───────​───────

そんなこんなで俺は今実行高専にいる。


クラス内の雰囲気はと言うと、ビックリするほど普通の高校と変わらない。陽キャ達が既にグループ作って話したり、読書をしている子もいれば俺のようにボーッとしてるだけの人もいる。


(高専ってんだからもっとピリピリしてるものかと...)

俺は呆気に取られてしばらく教室の雰囲気を眺めていた。



「はーい席に着けー」

教室に来てしばらくすると、担任がクラスの扉を必要以上に音を大きくしながら開け、教卓に手をついてからそう言った。


「まずはみんな、この学校に入ってきてくれて本当にありがとう。我々はこれから君たちの指導及び教育にえー、励もうと思う。まあこの言葉は本校の受け売りなんだがね、『若芽を大人の芽にするまで育てるのでは無く、あくまで若芽の成長のサポートする』という形でこれからやってくからよろしく」

担任の先生が大きい声でそう言い、顎をしゃくる。返事をしろという合図のようだ。


「「「よろしくおねがいしまーす」」」


「いい返事だ。それじゃあ手始めに」


「自己紹介をしてもらおうか」

出たな。高校生活最初の難関、自己紹介。

とりあえず目立たないように、とりあえず敵視されないように。


クラスメイト達が次々と自己紹介をしていき、とうとう俺の番が来た。


「淡生 賢と言います。俺はまだ力についてあまりよく知らず、使い勝手もよく分かってません。それでも俺は、1歩ずつ前進して行きたいです。よろしくお願いします」

名前を言った瞬間、クラス中の視線が俺に向いた気がした。


「は~い質問~!」


「どうした、【朝日 成宮あさひ なるみや】」


クラスメイトの朝日成宮が俺に質問をする。朝日成宮の第一印象は苦手なタイプ、だ。というのも彼は見た目からして陽の気をまとっている生物であり、俺が彼に近づくと浄化されてしまいそうだ。髪は茶髪、センター分けをしており刈り上げもしているようだ。

彼は俺がクラスに入ってきた時から大きい声でクラスメイトと世間話をしていたり騒いでいたりしたので苦手なタイプだと避けようと心に決めた。


「賢は~矢羽根先生に推薦されたって聞いたけど、僕から見た君は正直ふつーの人間に見えるけど?そこはどうなのさ」

かなり答えづらい質問だ。俺は5秒ほど黙ったあと、口を開く。


「え、えーと。分かりません。」


「あぁ。つまんないなっ」

朝日は少し不機嫌そうに席に座り、机に頬杖を着く。


「そこまでにしとけ。次」

そう先生が言い、俺も席に着く。入れ替わるように席を静かに立ったのは可愛らしい女子だった。

翔庭さんは黒いサラサラな髪を下ろしていて、水色の瞳は光が入っていて綺麗だ。加えて赤い花型のヘアピンもかなり似合っている。


「【翔庭 真名かけにわ まな】です。趣味は、友達と遊ぶことです。力は、その、秘密で。なきゃ...仲良くしちぇ!て!ください!!」

噛んでしまって思ったより声をでかくしてしまい、恥ずかしがってる翔庭さんは頬を赤らめながら席にストンと座った。....可愛いな。俺はそんなキモイ感想を抱く。


「次、朝日成宮」

俺は朗らかな顔から一転、明らかに顔をしかめる。


「どうも~~!僕は朝日成宮!力は説明ムズいんだけど空間認識っていうのなんだけど、うーん...」

朝日は手を顎に当てて少し考える。空間認識という名前の時点でかなり難しそうだ。


「まぁ例としてはみんながどこにいるかが分かったり、敵の攻撃を空間ごとカットしたりってとこかな」

一見かなりゴリ押し系の力かと思ったが意外にもサポート系なのか?


「次──」


無事自己紹介も終了し、今日は下校となった。

俺は皆から視線を浴びているような気がして少し居づらくなったので早く支度をして速攻帰った。


『卵買ってきて~』

と矢羽根さんからメッセージが来たので、面倒だな。と思いながらスーパーで卵を買って家へ帰った。


​───────​───────​───────

翌朝、教室にて。

「えー昨日の自己紹介やら校長の長たらしい話やら教育うんたらについて、えーご苦労だった。まぁ早速で悪いが今日はクラスについて話そうと思う。」


先生は教室に入るなり気だるげに話を始めた。

「えー将来に関わるから心してよく聞くように」


「まず、このクラスはまあなんだ。ホームのようなゲームで言うタイトル画面みたいなものだと思ってくれ。」


...何の話が始まったんだ?

俺はそう思って目線を先生の顔に合わせる。他のクラスメイト達数人も同じく先生の顔をまじまじと見つめている。だがそうしているのは数人だけで他の人は何の話か理解しているようだ。


「この学校にはクラスの種類がいくつかあってだな?まだ調べてないやつに話しておくと、《普通クラス》《医療担当クラス》《総合クラス》そして試験を合格し、前頭以上の者から推薦を貰うことで入ることが出来る《特進クラス》がある。」


つまりこのクラスはあくまで仮、もう少ししたら別クラスで活動するわけか。

特進クラス...確か矢羽根さんが言ってたな。


『特進クラスに入るのは前提だね~。特進クラスに入ってからが本番みたいなもんだから。』

だが試験やら推薦やら入るのは難しそうだ。


「《普通クラス》は、一般3教科を勉強しながら力について理解を深めていくクラスだ。《医療担当クラス》は、前線にこそ出ないが将来この国のため共にエンパイアと戦ってくれるもの達が集う場所だ。《総合クラス》は、主戦力になりうる力、前線に行けるサポート系の力を持つ者達がその力について最大限理解を深めながら実践を積んでいくってクラスだ。」

先生は一呼吸して区切りをつけてからまた口を開く。


「《特進クラス》は、まぁ馬鹿げた力に馬鹿げた頭脳に馬鹿げた才能のヤツらが集まる、言わばエリートの集いってやつだ。このクラスは他のクラスとはまったく別物で、胸から指先ぐらいの難易度の任務が頻繁に送られてくる。毎年1クラス1、2人は必ずこんな馬鹿げた奴がいる。このクラスからも出るかもな。」


何が面白かったのか先生は急にクックックと笑いだした。


「期限は1週間後の朝までだ。なるべく早く決めて紙に書いて保護者に印鑑を押してもらって提出するように。」


特進クラス.....か。その特進クラスに入ればエンパイアとも繋がりが持てるらしい。

なんとしても入らないとだな。死ななければいいけど...


​───────​───────​───────

昼休みにて

「あ、あのー」


「ん?はい?」

翔庭さんがなんと俺に話しかけてきた。近くで見るとかわいさがより際立つ。


「あ、翔庭です!」


「あ、はい覚えてます」


「あれ。あ、まぁいいや。えっと、賢くんも特進クラスに行くと聞いたので...」

翔庭さんは覚えられていると予想してなかったのか少し驚く。


「あぁ、うん。」


「その、一緒に特進クラスに行く仲間がいなくて、ですね。仲良くして頂こうかなと!!!」


「え、あ、それはありがたいっすね」

目が見れない...俺は目を逸らしながら話す。


「ホントですか!ありがとうございます!」


ということで友達(?)が出来た。というか翔庭さんも特進クラスに行くのか。

今日の昼休みは1人でご飯を食べていると翔庭さんが寄ってきて俺の周りをグルグルと回っていたので俺は翔庭さんをご飯に誘い、一緒にご飯を食べた。

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