第2話 JACK

精密機械に関して、俺を上回るレベルの人間に出会った事が無い。

でも、自分の持っているこの能力を上手く発揮できる所が今まで見付からなかった。


そんな時にDAVIDさんと出会う___。


この人の相談所。

「女闇・相談所(お悩み相談所)★DAVID★」

というネーミングの破天荒さに度肝を抜かれた。

自分が仕事をするなら自分以上の感覚の持ち主じゃないと付いていけない。

もちろん、俺が組織のトップになって人を引っ張っていくなんて事も僕には向いてない。何故なら基本的には対人関係は非常に面倒くさい。

ストレスの大半は人によるものだと知っていたからだ。

多分、人間との接触も嫌いな方だと思う。

極力人間との関わりを持たない事で、自分の機械に関する能力が向上していった。


その上で、DAVIDさんの考えを聞いた時に「ビビッ」となって全身に電気が走り抜けた。言い訳の出来ないくらいの本物の衝撃を受けた。

人間の感情を度外視して行うDAVIDさんのアドバイスは他では体験出来ない・・・。

この人と何か面白い事をやりたい・・・。

いや、間違いなく面白いに決まっている。

人生は、ただレールの上を歩くだけじゃ僕が僕である意味が生まれてこない。

僕の人生は時には危険で、ワクワクがあり、そして想像もつかない事をやってのける。それ位刺激的な時間を僕は求めていた。

そんな出会いからDAVIDさんに頼み込み、一緒に仕事をする事になった。


僕の主な仕事はDAVIDさんに頼まれた必要な装置をその時々で作る事。それと、DAVIDさんの行う相談全般のサポート業務。さらにはそれにまつわる諸々の分析など、これと言って決まってはいないが、とにかく決まり切っていない仕事内容がさらに今の僕の心に火をつけた。

あまりにも無茶苦茶な発想で出てくる奇想天外なDAVIDさんのアドバイスが、僕の気持ちをも揺さぶってきた。

DAVIDさんと話していると全てが面白い。自分の想像を超えてくる行動が自分を成長させた。寧ろ、仕事というよりも、子供の探偵ごっこにも似ているような、そんな所も好きだった。まさしく破天荒という言葉がそのままの人。


一緒に仕事をするようになり付けてもらった名前が”JACK”。

この名前は外人ぽい名前だが、実は物凄く意味深いものだった。

DAVIDさん曰く・・・。

(世の中のあらゆる思想を”ジャック”しろ!)

という所から付けてもらった名前だ。その発想も凄すぎる。

全てが想像の上の上をいくDAVIDさんの考えが楽しくてたまらなかった。

こんな人と一緒にいたら、俺の人生は絶対に面白くなる。

そして、DAVIDさんと同じく、悩みを持った人の助けになりたいとも思った。人間の奥底に眠る吐き出せない気持ちを思う存分”ゲロ”させるやり口も僕の感情をもて遊んでくれる。それ位、やる事なす事が斬新だ。


悩みの末期症状の女性の相談相手に対する答えが、ある意味狂気じみている所も凄い。逆に言えば、末期状態でないと、その部分が引き出せない。

そこに目を付けたDAVIDさんの相談所は、まさしく現代の”女性の持つ闇”を解放してくれるだろう。

後の事を考えず、人間として保たなければならない理性を捨てさせる行為が人間の持つ感情の”怒り”、”我慢”、”欲求”全てを解放する。


それを引き出せるのは間違いなくDAVIDさんしかいない。


そしてそれを最大限に伸ばせるのは僕しかいない。


___”JACK”として人の心を”ジャックする”___


解放しろ___その心の奥底に眠る本来の”邪悪な心”を・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る