4 アクアリウム

 小さな亀が水槽の中でばしゃばしゃと音を立てて泳いでいた。遊んでいるのか、しばらくそうした後、石の上にのっそりと乗り上げる。

 その様子を水槽にくっつくようにしてみちるさんが見つめている。この家に亀が来た頃は、覗き込んでくる人間の頭が怖かったのか興味深かったのか、みちるさんと亀はよく睨み合うように見つめ合っていたのだけれど、しばらくすると慣れたのだろう、のんびりとマイペースに行動するようになった。

「みちるさん、亀好きだよね」

「おもしろいよねぇ」

 みちるさんはのんびり石の上で休んでいる亀をじっと見つめながらそう言う。亀が、というよりは、生き物が好きなんだろうなと思う。鳥はつつかれて痛いからと天敵扱いしているけれども、僕の腕の中にいるときは、やっぱり興味深そうにじっと見つめていることが多いから、やっぱり好きなんだろう。

 亀はあくびでもするように口を開けて閉じ、リラックスしたように手足をだらりと伸ばした。

「ぬふふ、寝ちゃいそうだ」

 みちるさんは変な笑い声を上げて、ぴょんぴょんと跳ねてこちらに来る。髪につけている髪飾りのガラス玉が、電気の光を反射してキラキラと輝いた。

 最初にみちるさんに髪飾りをプレゼントしたのは、僕が小学生の時だった。椿の花の飾りがついたそれは、あまり質の良いものではなかったけれど、今でもみちるさんの髪飾りを仕舞っておく箱の中に、しっかりと存在している。

 あれから何年も経つ間に数が増えた。みちるさんも髪飾りを随分気に入って、外に出るときにもつけていったりするので、時折壊してしまうこともある。悲しそうに謝るみちるさんのために、修理の腕も随分上達したと思う。

「みちるさん、お土産がたくさんあるよ」

「ほんと?ぬひひ、楽しみだ」

 僕の近くまでやって来たみちるさんを抱き上げて言うと、みちるさんは変な笑い声を上げながら嬉しそうに笑った。

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