第330話
「……は?」
「なに?!」
ゴロンと転がった
残り七人。
「おい、あれ!」
「鈴……様?」
横たわっている鈴に注目が集まる。目を見開いたまま動かない鈴が居るだけだ。ただ、そこにあるべき右手が無い。やはり浮いているのは鈴の手首のようだ。
「生きて……おられるのか?」
「いや、でも……」
手首だけが浮いていて、片手剣はチロチロと燃えている。すると、手首は片手剣を振り上げた。
「動いた!」
「バカ避けろっ!」
「えっ?」
残り六人。
「どういうことだ」
何度見ても鈴は目を見開いたままピクリともしない。魔力も生み出していない。むしろ減っていくくらいだ。
「死してなお、我らを殺そうと、約束を果たそうというのか」
「バカな」
「ならば全力でお相手するのみ!」
五人揃って魔力の剣を創り出す。純粋に魔力を固めただけの剣だ。現状
五人が代わる代わる炎の剣に挑んでいく。とはいえ、相手は手首だけだ。あまりに的が小さい。炎の剣も厄介だ。
まさしく乱戦。
炎の剣の一撃を
「なっ」
「今度は炎の盾だと!」
「鈴様?!」
鈴は物言わぬ屍だ。それは変わらない。
「生きておられるのか?」
「なら、鈴様の身体から魔力が減り続けてる理由がつかないだろ」
「それは……」
「ちょ、おい!」
「なっ」
両手だけではなく、上半身もフワリと浮き出した。しかし両目はクワッと見開いたまま、変化がない。下半身も釣られるように浮遊する。
「おいおいおいおい!」
「ど、どうなってるんだ?」
「生きて……おられるのか?」
「まさか……そんな筈」
バラバラだった鈴の身体は集合し、元の形を取り戻した。とはいえ、切断された身体がくっ付いたわけではない。ただ、元の位置にあるだけで、ブラブラと揺れている。そこから盾を構えると、片腕が無い
「マジかっ」
「わう?!」
「なっ」
にも拘わらず、鈴の突撃は止まらない。ボロボロの身体で片腕の無い
防ぐ手立ての無い
残り七匹。
「ゼリーは絶対あの剣に触れるな!」
「「「わうっ!」」」
答えた
「どうなってるんだ」
「知るかっ」
「生きて……」
「まだ言うか!」
「なら何故私たちに罰をお与えになられるというのだ!」
「罰だと?」
「ただ約束を果たそうと囚われてるだけだろ」
「ならば、早く成仏させてあげねば」
「まだ生きようとしておられるのだぞ!」
「アレで生きてるといえるのか!」
「とにかく、剣と盾が別々に襲ってくる。下手するとバラバラな身体も別々に襲ってくるかも知れないぞ」
「警戒を怠るな!」
「ああ……鈴様……」
「なにしてるっ」
「無防備に近づくな!」
「貴方様がそれを望むのであれば、私は……私は……」
「止めろっ!」
「わうっ!」
「ああ、鈴様っ。私を受け入れて頂けるのですね。我が神よ!」
「鈴様……なんとお労しいお身体に……ああ、我々はなんと罪深き愚者なのでしょう」
そして鈴も
「うご……り、鈴様……」
炎の剣は
「おお! 私が……鈴様の身体の一部に……なんという僥……倖…………」
そして
残り五人と六匹。
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